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韓国インディーズ音楽との出会いのきっかけを届ける「Bside K-Indies Series」仕掛け人の思いに迫る|INTERVIEW #16

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韓国インディーズ音楽との出会いのきっかけを届ける「Bside K-Indies Series」仕掛け人の思いに迫る|INTERVIEW #16

キーワードは「3」。
Bside K-Indies Series の戦略

ーソニさんが考える「韓国インディーズ(通称:K-Indie)」の定義とは何でしょうか。

音楽を作るアティチュード(態度)、音楽に対する姿勢だと思います。日本では、インディーズと聞くと流通先がインディとか、メジャーデビュー前のアマチュアアーティストのイメージがあると思いますが、韓国ではベテランのアーティストであっても敢えてインディペンデントな姿勢を見せるために、自らの楽曲を「インディーズ」とカテゴライズしてリリースしているケースが多いです。Radioheadのトム・ヨークがインディーズレーベル〈XL Recordings〉からリリースしているのと似ています。

ーなるほど、だから韓国インディーズを掘っていると非常に洗練された魅力的な音楽に出会う機会が多いのですね。ここで本題に入っていきますが、韓国インディーズアーティストを紹介する「Bside K-Indies Series」の立ち上げの経緯を教えてください。

先ほど話にあがったOOHYOの「PIZZA」のRemixを、せっかくなのでデジタルだけでなくアナログでも出したいと思っていた時に、ちょうどHMVさんが「7インチオリジナル」というプロジェクトをやっていました。CDよりレコードが売れつつある時代の変化を察知して、7インチ発売の企画をしていたんです。一方、頻繁にやりとりしていた音楽メディアのSpincoasterも当時はまだレーベル業務をやっておらず、Spincoasterとしてはレーベルデビューの機会を図っていた。ちょうどいいタイミングだったので、私が在籍していた〈KAKAO M〉のライセンス盤としてSpincoasterからリリースすることになりました。A面には原曲、B面にはRemixバージョンを収録しています。

ー HMV、Spincoaster、ソニさんのやりたいことが上手いこと一致して、3社共同企画が始まったんですね。

そうですね。OOHYOを皮切りに、アーティストのアイデンティティを7インチという形で見せるのがプロモーションの観点で良いという判断に至り、継続的に7インチを出すようになりました。これからアナログ版の時代が来ることは、業界人として肌で感じていた時だったので、タイミング的にもちょうど良いと考えました。

ー「Bside K-Indies Series」では毎回3組のアーティストをセットでリリースしていますが、複数アーティストを同時に紹介することにどんな意図がありますか。

1人のアーティストが1回ライブをしたり楽曲をリリースをするだけではなかなか音楽が広がらないため、3組セットで紹介していくことで “ムーブメントを作りたい” と思っています。K-POPでもどれか1組アーティストを好きになったら、他のアーティストもどんどん芋づる式に好きになっていくじゃないですか。ムーブメントの中にみんなが参加していけるような流れを作りたいんです。且つ、1組のアーティストではなくシリーズ化して連続的に紹介することで、韓国の音楽シーン全体を伝えたいという意図があります。

ー「3」という数字には何か特別な拘りがあるのでしょうか。

「3」という数字は世界の神話によく登場しますが、「安定」「完成」などアジアでも神聖で意味がある数字なんですよ。

それから、知名度が低い3組でプロモーションすると、3人とも露出ができなかった時にもったいないので、知名度があるアーティストと注目の新人をセットでリリースするのが戦略です。これは最初から意識していた訳ではないのですが、Vol.4までやってきてリスナーの反応を分析した中で生まれたマーケティングポイントです。

例えば、もともとVol.3の時に同じレーベル〈Magic Strawberry Sound〉所属のユン・ジヨン、ミンス、チェ・ジョンユンの新鋭ミューズ 3組でリリースしたかったのですが、今言った理由からそれぞれ別のタイミングでリリースすることにしました。Vol.3ではユン・ジヨン、Vol.4ではミンスをリリースしたので、残りのチェ・ジョンユンもどこかのタイミングで紹介したいです。

※ミンスのMVにチェ・ジョンユン、ユン・ジヨンが参加。もみくちゃになりながらはしゃぐ姿から仲良しっぷりが伺える。

ー改めて過去のラインナップを見てみると、〈Magic Strawberry Sound〉所属のアーティストのリリースが多めですね。

決して意図的増やしている訳ではないのですが、好きなアーティストが〈Magic Strawberry Sound〉にたくさんいることもあって、毎回シリーズに入っています(笑)。日本のリスナーはまだレーベルを気にする段階にないと思うのですが、いつか韓国インディーズムーブメントを作ることができたら、きちんとレーベルごとにフィーチャーしたいと思っています。コンピレーションアルバムなんかも作りたいですね。

ーどういう基準で楽曲をセレクトしていますか。 

アーティストの持つ世界観を伝えられるような曲を選定する、というのが一つ。それと、最近レトロブームでレコード文化に興味関心が高くなってきた10~20代の若者をリスナーとして意識しています。日本の若い世代にK-POPとはまた違う魅力を持つ韓国インディーズを知らせたいので、飽きずに聴き続けられるビート感がある楽曲を意識的に選んでいます。単に私の好みの曲をセレクトしている訳ではないです。例えば、Vol.4のソヌ・ジョンアだったら、私は「Run with me」という曲が一番好きなのですが、前述のポイントを踏まえて7インチには「Idle Idle」「Cat」の2曲を収録しています。

日本だったらどんな音楽がウケが良いか、というのもポイントです。国によって、好みは当然違うんですよね。例えば、OOHYOの「Dandelion」というスローなバラード曲は中国で人気があります。私もそういう曲が好きですが、「PIZZA」や「Paper cut」などおしゃれなサウンド感を好むのが日本の感覚だと思います。それこそ、ソヌ・ジョンアの「Run  with me」のようなエモーショナルな楽曲は韓国人には刺さるのですが、いくら頑張って歌詞を翻訳して紹介したとしても、日本人にすぐ受け入れてもらうのは難しいと思うんです。

どんなきっかけでも良いのでソヌジョンアが日本で認知されるようになったら、日本の方でも「Run with me」が良いと思う日がくると思っています。その日が来ることを信じて、日本のリスナーと韓国インディーズアーティストの最初の接点を作りたいです。7インチに収録するたった2曲でアーティストの持ち味を伝えることはなかなかハードルが高いのですが、いつか実現できる日を夢見て頑張っています。

ーVol.4のソヌ・ジョンアのB面では、メジャーアーティストのIUをフィーチャリングした「Cat」をセレクトされていますね。IUは日本のファンも多いので、それこそ接点が広がりそうな気がします。

まさに、日本でも引きが強そうな曲を意識してますね。ソヌ・ジョンアは知らないけれどIUを知っている人はたくさんいるじゃないですか。ソヌ・ジョンアがどういうきっかけでIUとコラボしたのかを伝えることで、ソヌ・ジョンアの実力を紹介したかったんです。

一方、ソヌ・ジョンアのA面「Idle Idle」はコロナ禍に生まれたヒーリング・ミュージックなのですが、昨年韓国で放映されたバラエティ番組「ヨルムバンハク(夏休み)」でパラサイトの俳優 イ・ソンギュン(金持ちのお父さん役)が「この曲すごくハマってるんだ。」と紹介していたんです。パラサイトは日本のみなさんも知っているし、とっつきやすいのでは?と思いました。音楽自体がいいのは大前提ですが、パラサイトの俳優が推しているということで、紹介する際のネタにもなります。とにかく、こうして知ってるネタを通して韓国インディーズのディスカバリーのきっかけを作るのが、7インチ企画の役割です。

ー直近の Vol.3、Vol.4 では、連続して女性シンガーソングライターをセレクトされていますが、どういう意図がありましたか。

韓国のインディーズアーティストに特化した「K-INDIEチャート」で、直近女性アーティストが多くチャートインしていることに気づきました。Vol.4でリリースしたステラ・チャンとソヌ・ジョンアに関しては、韓国では有名すぎてインディーズ枠として出すにはメジャー感が強いのでは、と思ったのですが、チャートに入っているのを見て今リリースすべきだと判断しました。2人は日本ではまだ知られていないので、日本のリスナーにとってはインディーズとして紹介しても違和感がないですしね。

ーちょうど文学界隈でも韓国女性作家の作品が日本で流行っており、タイミング的にも良いなと思いました。

今、私が別件で携わっているとある企画も、まさに日本の女性のプライドをあげたいという気持ちで関わっています。ステラ・チャンもソヌ・ジョンアも、私生活も含めて非常に独立志向ですよね。一番強いのはSE SO NEONのソユンだと思っていますが。そういうアーティストを紹介することで、日本で少しでも変化が生まれると嬉しいです。

ーかっこいい女性の存在は力になります。個人的には、ソニさんも心強い女性の一人です。

ありがとうございます。BUZZY ROOTSのAkariさん、Izumiさんも心強くエネルギーある女性だと思います(笑)。

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  • この記事を書いた人

Akari

1994年生まれの自称、韓国音楽PR大使。インディペンデントな韓国のミュージシャンや業界人を中心にインタビューやコラムを執筆。「韓国の音楽をジャンルレスに届ける」をモットーに、韓国インディーズ音楽特化型メディア「BUZZYROOTS」の運営やDJイベントへの出演、アーティストのアテンドなど、多岐に渡り活動中。一番の推しバンドは、SURL。

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