以前当サイトで紹介した、オンライン音楽ブランド・KozyPop。彼らが選曲するプレイリストは私たちのライフスタイルに馴染む心地の良い音楽と、まだ見ぬ新進気鋭のアーティストたちに出会える機会となっている。耳の早い海外のリスナーを中心にさらに注目を集めており、SNSでは様々な言語で紹介されている。
そんなKozyPopが新たなサービスとしてウェブマガジンをスタートした。YouTubeやSpotifyのアルバムやプレイリストと共に、より詳しくその魅力を伝える記事もぜひチェックしてほしい。
BUZZY ROOTSでは日本のKozyPopファンに向け、ウェブサイトに掲載されている記事の翻訳版を順次アップロードしていく。
第一弾となる今回は、pH-1が5月8日にリリースしたミックステープ『X』の魅力について、紹介する。
原文 [원문]:KozyPop Magazine "우리가 미처 알지 못했던 pH-1의 음악, 믹스테잎 [X]"
昨年初正規アルバム『HALO』に続きDingoやYerin Beakとのコラボレーションなど活動を続けてきた〈H1GHR MUSIC〉のpH-1がミックステープ『X』を発表した。pH-1によると、タイトル「X」はそのシンプルな名前とは異なり、様々な意味を内包しているという。
まず、「X」はローマ数字で10を意味し、これは10の収録曲を表す。また「X」は「以前との関係」を意味する接頭語「ex」とも呼ばれるが、これはニューヨークでラッパーを始めた頃のpH-1の尖ったスタイルを暗示している。さらに「X」は大衆がpH-1に持つソフトなイメージに対する彼の答え(間違って理解しているということ)でもあり、アルバム内の多彩なコラボレーションを意味している。
私たちは『X』がEPあるいは正規アルバムではなく「ミックステープ」であることに注目する必要がある。『X』はアーティストとしての音楽的アイデンティティと方向性を提示するものではなく、pH-1が用意した一つのイベントだ。『X』のアートワークがpH-1のシンボルとも言えるオレンジではなく、補色である青色に塗られたという事実は意味深い。
一言で『X』は既存のpH-1のイメージを反転させることを要求する。様々なアーティスト、プロデューサーとの自由な制作から生まれた曲は普段のpH-1にはなかなか見られない姿を表した。特にトラップやブーンバップから始まり、EMO、Slimeなどトレンディーさを併せたヒップホップの細かいジャンルがミックステープをより多彩に飾り立てる。
既存のpH-1の明るい音楽と距離を置くほど、『X』の全体的なイメージは暗く夢幻的だ。細かく見てみるとどうだろう。敢えて区分してみるとするなら前半5つのトラックはメッセージ志向で、後半5つのトラックはストーリーテリング、そして感情志向的であると言える。
前半部分を代表する曲はタイトル曲である「PACKITUP !」だ。BMTJがプロデュースしたこの曲は2分少しの短いトラックにも関わらず、音源の買いだめ疑惑のような敏感なイシューを取り上げることでメッセージ的に最も目立った印象を残す。
また、「サイン会(1曲目、英題:MEET N GREET)」、「OKAY」のようなGroovyRoomの充実したプロデューシングはもちろんのこと、Kid MilliとSimon Dominic、JUSTHISなどスタイリッシュなラップスキルを持つアーティストたちが参加してヒップホップ固有の味を極大化させた。さらに、H1GHR MUSICアーティストたちが総集結した「TELÉFONO」まで、『X』の前半部はヒップホップファンたちの耳を楽しませるタイトな魅力のトラックで豊かになっている。
前半部「BLAME MY CIRCLE」のプロデューシングを担当したGRAYは続いて後半部のスタートを担う。pH-1は「強がり(6曲目、英題:FRONTIN)」を筆頭にしばしブーンバップのリズムの柔らかなストーリーテリングで戻ってくる。しかしそれも束の間、「ANYMORE」の彼はASH ISLANDと共にEMOヒップホップの方式で独特なカリスマさを発揮した。『X』のイメージ反転という要求が最も魅力に映る部分だ。
正規1集アルバムのメインプロデューサーであるMokyoがプロデュースした「I CAN TELL」ではBRADYSTREET、Verbal Jintと共に退廃的なムードを届ける。そしてBlase、Coogieと呼吸を合わせ、自信に満ちあふれた「MORAGO」が続き、アーティストとしての苦悩を歌う「DRESSING ROOM」を最後にミックステープは終わりを迎える。『X』のトラックは有機的ではないが、スピード感のある起承転結により退屈する暇もない。
このように『X』は多様性と実験が共存するミックステープが本来持つその価値に忠実だ。pH-1は華やかな参加陣たちの中で自在に変化する。毒舌を吐きながら重々しい感情を表出したり、スワッグ(カッコよさ)を見せつけるかと思いきや、たちまち真面目になったりする。このような意味で「X」というタイトルは、単にpH-1のこれまでのスタイルを込めているのではなく、どんなスタイルでも代入可能な一つの変数(X)とも解釈出来る。
全てのトラックのイメージが重ならず、プロデューサーを含めそれぞれ異なる組み合わせとなっていることがこれを裏付ける。これが『X』がミックステープ以上に私たちの興味を刺激する理由だ。
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