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Silica Gel キム・チュンチュが描く、個人的な実験室。ソロプロジェクト Noridogam(遊び図鑑)ツアー直前インタビュー|INTERVIEW #67

2025年のフジロックフェスティバル。WHITE STAGEを熱狂に包み込み、名実ともに韓国インディシーンのカリスマとしての存在感を見せつけたバンド、Silica Gel(シリカゲル)。そのギター&ボーカルを務めるキム・チュンチュには、もう一つの顔がある。ソロプロジェクト「Noridogam(遊び図鑑)」だ。

バンドから離れ、より個人的な物語、実験的なサウンドを描き出すNoridogam。遊び心と緻密な構築美が同居するその音楽は、リスナーに懐かしさと同時に新鮮な違和感を与えてくれる。そんなNoridogamが、新曲「Truthbuster」を携え、12月にソウル・東京・大阪を巡るツアー『“Truthbuster” the Tour!』を開催する。来年リリース予定の2ndアルバムへの布石となる本ツアーを前に、キム・チュンチュ本人にメールインタビューを敢行した。

Silica GelとNoridogamの異なる在り方、彼の楽曲に込められた逆説的な美学、そして日本のファンへの想いまで。静かな情熱を秘めた彼の言葉をお届けする。

Interview & Text:AKARI(BUZZY ROOTS)

「個人的な物語や考えを吐き出して試す空間」NoridogamとSilica Gel、二つの顔

—— Noridogamのことを初めて知る日本のファンの皆さんに向けて、自己紹介をお願いできますか? また、「Noridogam(遊び図鑑)」というソロプロジェクト名の由来について教えてください。

Noridogam:こんにちは、日本の音楽ファンの皆さん!「Noridogam(遊び図鑑)」のチュンチュです。

「Noridogam」という名前は、僕が子どもの頃、いとこの家に遊びに行くたびに楽しく読んでいた『遊び図鑑(韓国語ではノリドガムと発音します)』という本のタイトルから取りました。日本の作家の方が書いた本で、原題もおそらく『遊び図鑑』だったと思います!

その本には、いろいろな「遊び」とその方法が図鑑のようにまとめられているのですが、Noridogamとして曲を書くときの心構えや作業のやり方が、その本に載っていたアナログな遊びの感じにどこか通じる気がしたんです。それでこのプロジェクト名をつける際、ふと「Noridogam」という名前が浮かんできました。

—— チュンチュさんはSilica Gelのギター&ボーカルとしても絶大な人気を誇っていますが、ソロプロジェクトであるNoridogamは、ご自身にとってどのような場所でしょうか? 以前「Silica Gelは本業、Noridogamは個人的な実験室」といったような趣旨の発言をされていたのをインタビューで拝見しました。バンドとしての活動と、すべてを一人で完結させるソロ活動。この二つのモードを切り替える際、ご自身の中でどのようなスイッチや意識の違いがあるのでしょうか?

Noridogam:「絶大な人気」だなんて、ありがたいですがちょっと照れますね…!(笑)Silica Gelは、どうしても4人のメンバーそれぞれの考えが混ざり合うプロジェクトなので、その中にはそれなりのシステムと体系、つまり「メンバー間の役割」がある程度存在していると思います。メンバーが歯車のように噛み合って、巨大な何かを動かしていくような感覚だとしたら、Noridogamは、もう少し個人的な物語や、自分自身の考えを吐き出して試してみるための空間だと思っています。

僕は周りの仲間に比べると、こうしたモードの切り替えは比較的うまくできる方だと思いますが、それでも2つのモードを維持するのは本当に難しいことです。ですが、この二つの創作はどちらも、僕自身の能力や音楽的な活動にとって欠かせず重要で、さらに毎回学びの機会にもなる取り組みなので、とても大切にしています。

—— 過去のインタビューで「歌詞の文学性よりも、サウンドが描くイメージを重視している」と仰っていたのが印象的でした。Noridogamの音楽は、一聴すると温かく懐かしい雰囲気の中に、どこか奇妙で歪な音が隠されているのが魅力だと感じています。美しいだけで終わらせず、あえてそこに違和感や引っかかりを混ぜる際、ご自身の中で「よし、これでNoridogamらしくなった」と感じる、サウンドの決め手のようなものはあるのでしょうか?

Noridogam:90年代の韓国の歌謡を聴いてみると、サウンドと歌詞が逆説的な曲が本当に多いんです。例えば、すごく楽しいテクノビートの音楽に、愛の失敗や裏切りを描いた歌詞が乗っているといったように。僕は幼い頃からそういった感性に自然と馴染んでいたんだと思います。

それから「対比(コントラスト)」をとても大事にしていて、そこから生まれるダイナミクスこそが、音楽をより複合的にする重要な鍵だと考えています。

様々な部分でそういった対比を入れるのが好きなんです。温かみが感じられる曲にあえて厭世的な歌詞を。複雑な構成と極端にシンプルな構成を一つの曲に共存させること。奇妙なコードの色合いをところどころに配置するなど、対比やダイナミクスを積極的に活用することが自分にはしっくりくるんです。一言でまとめるなら、「クリシェをひねること」と言えるかもしれません。

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「強烈なメロディよりも、音楽と共に時間を過ごす感覚を」新曲「Truthbuster」の試み

—— 新曲「Truthbuster」についてお聞きします。歌詞には「lie(嘘つき)」「hypocrite(偽善者)」「stop talking and do your job(黙って仕事しろ)」といったような強い言葉が登場し、タイトル通り真実を暴くような緊張感が漂っています。一方で、公式説明文にある「それでもあなたを愛している(그럼에도 불구하고 널 사랑해)」という温かい言葉とのギャップが非常に印象に残りました。MVのシネマティックな映像美も相まって、リスナーにさまざまな物語を想像させる作品ですが、この楽曲はどういった感情、ストーリーから生まれたものなのか、可能な範囲で伺えたら嬉しいです。

Noridogam:「Truthbuster」は、すごく近しい友人との関係についてのストーリーです。一般的に「長い付き合いの友人」と言うと、僕の場合、自分とはかなり違う性格を持った人であるケースを周りでよく見かけます。僕は考えごとが多く口数が少ないタイプなのですが、長く付き合ってきた友人はどちらかというと外向的で、場の空気を作り出すような人たちなんです。

だからこそ、一番近くて長い関係でありながら、むしろお互いをうまく理解できていない部分も多いと思いました。それがときにはその関係を本当にしんどくさせてしまうし、お互いにストレスを生むこともあります。「Truthbuster」は、そういった苦痛やストレス、そしてお互いの違いを理解できない姿を歌っています。

それでも、そういうストレスや苦痛があったとしても、お互いを愛し、またお互いに頼ろうとする強い心が、関係を断ち切ることなく続かせてくれるのだと思います。(たとえ永遠に理解できなくても)理解しようと努力する意志があるからこそ。

そういう気持ちがあるからこそ、その人との関係は誰よりも長く続き、「友人」というものが生まれるんだと思います。そういった部分をMVで表現したかったんです。「それでもあなたを愛している(그럼에도 불구하고 널 사랑해)」という言葉は、「Truthbuster」で歌っている痛みやストレスを感じている自分、そして、似たようにまた別の関係で悩み苦しみ続けている人たちに伝えたかった言葉です。

—— 日本のフォトグラファー・Yuki Kikuchiさんとのコラボレーションにより誕生したMVは一本の映画のような没入感がありました。以前「Abandoned Umbrella」のMV制作でもご一緒されていますが、彼の作品のどのような点にNoridogamとの親和性を感じていますか? 本楽曲は7分と長いですが、この映像のために楽曲が7分に引き伸ばされたのでは?と感じるほど、お二人のシナジーは素晴らしかったです。

Noridogam:Yukiはプロのビデオグラファーではないからこそ、彼が作る映像からはいつも繊細な感情が伝わってくる気がします。Yukiは熟練されたビデオを作るわけではありませんが、彼と話してみると本当に感受性が鋭い友人だということがよくわかるんです。だからこそ、彼の映像にはむしろ、より率直な表現や物語があらわれるのだと思います。

俳優として参加してくれたシヒョンとドウンさんも同じで、彼女たちは俳優ではないため、演技のうまさよりも、むしろそのぎこちなさから、MVが何かを表現しようとしている意志が感じられたように思います。こうしたMVに宿っている率直な表現の意志、そしてこのような映像作品を作り出せるYukiの感性は、僕がNoridogamで伝えたい表現の在り方にとても近いと考えています。

曲のランニングタイムは制作段階ですでに決まっていたのですが、この場を借りて、こんなに長いMVを作らなければならない難しい任務を与えてしまってごめんね、とYukiに伝えたいです(笑)。

「Truthbuster」では、音楽的に少し長い呼吸を持たせたかったんです。強烈で秀麗なメロディを追うコンパクトな曲の良さよりも、音楽と共に時間を過ごす感覚を届けたかった。次のメロディ、次の歌詞を待ちながら、サックスのセンチメンタルなメロディを聴き、感情的なリフに引っ張られながら再びテーマを鑑賞する。そういった流れを曲に込めて、リスナーが聴いている間に何かしらの印象が立ちのぼるようにしたかったんです。

—— 今回、キャリア初となる英語詞に挑戦されています。母国語ではない言葉を選ぶことで、ご自身の感情表現や、メロディへの乗せ方にどのような発見がありましたか? また、英語だからこそ表現できたNoridogamの新しい一面はありますか?

Noridogam:僕はもともと韓国語で歌詞を書くのが好きでした。一番馴染みのある言語なので表現するのにも良かったですし。今後も韓国語の歌詞はずっと書いていくつもりですが、どうしても「世界の様々な国のファンと交流したい」という気持ちが大きくて、韓国語よりももう少し近く感じてもらえる言語でも歌詞を書いてみたいと思いました。

英語と韓国語は文法も発音もまったく異なるので、そこから生まれる音楽的な違いもすごく大きいと思います。今回はその違いを積極的に使ってみたかったんです。いつか日本語でも歌詞を書いてみたいと思っています…!

——「Truthbuster」は、来年リリース予定の2ndアルバムのタイトル曲でもあります。この楽曲は、アルバム全体の予告編のような役割でしょうか? それとも、アルバムには楽曲「Truthbuster」とはまた全く異なるNoridogamが待っているのでしょうか? 「グローバル展開を意識した作品」との情報も見ましたが、アルバム全体について少しヒントをいただけたら嬉しいです。

Noridogam:先ほどもお話しした通り、韓国だけでなく様々な国でツアーを組んで、ファンの皆さんに会いたいです。今後リリースされる2ndアルバム『Truthbuster』には、今回のシングルを含めさまざまな楽曲が収録される予定です。僕自身はあまり感じていないのですが、すでに完成した2ndアルバムの曲を聴いた周囲からは、「以前のNoridogamとは確実に違う」という評価をしてくれています。なので、これから聴いてくださる皆さんの反応もすごく楽しみにしています!

今回のアルバムは、これまで発表してきた曲よりも、もっと感情的な表現で溢れていると思います。ここにはシングル「Truthbuster」で描こうとしている「僕が生きる中で感じてきた様々な真実と、それを隠す仮面を脱ぎ捨てようとする物語」が込められた曲たちや、僕が仲間たちが一緒に作り出すアンサンブルで構成され、演奏の味わいが強調されたトラックなどが含まれた、盛りだくさんのアルバムになると思います。アルバムリリース後にも、新しいレパートリーでの公演を準備しようと思っていますので、ぜひ楽しみにしていてください。

 

「小さなステージの魅力は、大きなステージに劣らず強力だ」日本ツアーへの期待

—— 12月のツアー『”Truthbuster” the Tour!』は、日本のファンがNoridogamの世界を生で体感できる貴重な機会です。普段スタジオで一人で作り上げている緻密なサウンドを、ライブではどのような編成やアレンジで表現する予定ですか?

Noridogam:今回のツアーのテーマは、「Noridogamと友人たちが作り出す自由で小さなアンサンブル」です。そこで生まれるアンサンブル、演奏そのものの楽しさをライブでお見せしようと一生懸命準備しています。アルバムでは複合的な編曲で多彩なサウンドが使われましたが、ライブでは僕が最も信頼しているバンドメンバーたちと共に、僕たちだけのアンサンブルで表現される、公演ならではのまた違った魅力を感じていただければと思います。

今回のライブは、バンド「ボンジェインガン(縫製人間)」としても活発に活動するベーシストのチ・ユネと、ドラマーのチョン・イルジュン、シンガーソングライターであり様々なプロデュース活動でも活躍するキーボードのカン・ジウォン、そして韓国内のライブやレコーディングセッションで幅広く活躍しているサックス奏者のキム・ブミン。この5人編成でステージに立つ予定です。

—— 今年のフジロックではSilica GelとしてWHITE STAGEを熱狂させましたが、その際の日本の観客の熱気はチュンチュさんの目にどのように映りましたか? 今回のソロツアーでは、日本のファンの皆さんとどのようなコミュニケーションを取りたいか、お聞かせいただけたら嬉しいです。

Noridogam:フジロックのステージは、本当にすごい経験でした。自分が最も活動に拍車をかけたいと思っている日本という国で、あれほどの規模の観客の皆さんに自分たちの音楽を聴いてもらう機会ができたのはとてもありがたく、楽しい機会だったと思います。そして、Silica Gelのステージに強い関心と好意を持ってくれているという気持ちが客席からすごく伝わってきて、これからの日本での活動がますます楽しみになりました。

一方で、Noridogamの今回のツアーでは、より小規模な会場で、観客の皆さんと近い距離でお会いすることになります。ですが、小さなステージには大きなステージに負けない、まったく別の強い魅力があると思っています。近くてコンパクトな空間で感じられる演奏者の呼吸やアンサンブル、そしてサウンドが、より積極的にファンの皆さんに伝わると期待しています。今回は、皆さんと近い距離で一緒に呼吸するような感覚を共有したいという気持ちで準備しています。

—— 最後に、『”Truthbuster” the Tour!』、そして2ndアルバムの完成を楽しみにしているファンの皆さんへ、これからの活動のビジョンとメッセージをお願いします!

Noridogam:日本のファンの皆さんにこうしていろいろなお話ができる機会をいただけて、とても楽しかったです!

『”Truthbuster” the Tour!』のステージで皆さんにお会いできるのを楽しみにしていますので、ぜひ期待していてください。そして、これからリリースされる2ndアルバムには、1年ほど地道に作業してきた楽曲がたっぷり登場する予定です。こちらもぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。これからのNoridogamの日本での活動もどうぞよろしくお願いします。またお会いしましょう!

 

『“Truthbuster” the Tour!』ツアー

NORIDOGAM presents 2025 “Truthbuster” the Tour!

12/07(日) Musinsa Garage [ソウル]

12/09(火) Blue Note Place [東京]
OPEN 18:00 / START 19:00
■ イベント詳細

12/10(水) Blue Yard [大阪]
■ イベント詳細
OPEN 18:00 / START 19:00

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AKARI

AKARI

エディター|ライター

1994年生まれの自称、韓国音楽PR大使。インディペンデントな韓国のミュージシャンや業界人を中心にインタビューやコラムを執筆。「韓国の音楽をジャンルレスに届ける」をモットーに、韓国インディ音楽に特化したWEBマガジン「BUZZY ROOTS」の運営や、音楽・カルチャーメディアへの寄稿、広報、DJイベントへの出演、アーティストのアテンドなど、できることなら何でも形を問わず行なっています。プライベートでは、韓国人の夫と結婚し、二人の子どもを出産。子育てをしながら東京とソウルを行き来しています。

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