Korean Indie Music and Culture

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INTERVIEW

韓国のSSW JUE。私自身にとっても、私の音楽を聴いてくださる方々にとっても、時間が経っても意味を失わない作品であってほしいと思っています。|INTERVIEW #68

人々の中で揺れ動く様々な感情を、都会的なエッセンスで歌い上げる韓国のシンガーソングライター・JUE(ジュエ)。

彼女のキャリア初の日本語シングル「こんな顔」が11月26日に各配信サイトにてリリースされた。既に韓国でリリースされた「This Face」(2025年7月リリース)の日本語バージョンとして制作した今作。JUE自身が日本語訳に挑戦し、愛する人への溢れ出る感情を彼女らしい繊細な言葉で綴っている。

制作は自分を知り、記録していく行為でもあると語るJUE。大事にしている「独自のムード」を常に探求し続けるストイックな彼女が、どんな経緯を経てアーティストとなり、想いを込めて音楽に向き合い、曲を作り出しているのか。日本での活動も視野に入れているJUEを日本のリスナーにも知って欲しく、メールにてインタビューを行った。

Interview & Text:内畑美里


Q1. 夜の都会を連想するようなR&Bサウンドが特徴的です。どのようにして、今のサウンドに辿り着きましたか?活動の経緯などを教えてください。

リリースする曲のジャンルや雰囲気は、その時々の流れで変わることもありますが、ひとつだけ一貫した基準があります。それは、「私の声が生み出せるムードを中心に置く」ということです。

その基準のもとでさまざまな音楽を作っていくうちに、自然とヴィンテージ感のある質感や、余白のあるサウンドに惹かれていきました。たぶん私自身が好きで、私の声が一番自然に溶け込む音だと感じたからだと思います。今回の曲のサウンドは、プロデューサーのJINexと一緒に作業する中で、自然と形づくられたものです。以前の制作を土台にしながら、お互いに一番合うムードや方向性を探っていくうちに、今のR&Bサウンドにたどり着きました。ちょうどその頃、感情の濃いR&Bバラードや、叙情的な雰囲気の曲を書きたい時期だったこともあり、その流れの中で今回のサウンドが一番しっくりきたんだと思います。

質問で挙げてくださった「夜の都会」という表現は、私が伝えたかった感覚にどこか通じるものがあって、うれしいかったです。あたたかいけれど、同時に少し冷たくて静かな空気が同居しているような感じ。そんな二つの質感が共存する声を作りたくて、今回の制作はその方向に少し近づけた試みだったように思います。

Q2. 今のJUEを形成する、影響をうけたアーティストや芸術などを聞かせてください。

自分の音楽の歩みを振り返ると、ジャンルそのものよりも、独自のムードを持つアーティストに強く惹かれてきたように思います。ネオソウルやR&Bのスタイルから出発しましたが、特定のジャンルにとどまろうという気持ちはあまりありません。

私が憧れてきたのは、特定のサウンドというよりも、声だけでも存在感が伝わってくる人たち。そして、彼らの音楽が放つ唯一無二の雰囲気だった気がします。私の音楽もジャンルで語られる音楽ではなく、聴いた瞬間に「これはJUEだ」と感じてもらえるような、独自のムードを持った音楽と声を残していきたいと思っています。

Q3. ストレートなラブソングではなく、揺れ動く感情や、2人の間に出来た距離などを歌詞にすることが多いようです。そのような歌詞が多い理由や、歌詞を作成するときに意識することを教えてください。

歌詞を書くとき、私は感情をすぐに説明するのではなく、まず小さなイメージを先に置くことがよくあります。たとえば「こんな顔」の原曲にある「어제의 꿈이 내 마음을 닮아서 휘청인다(訳:昨日の夢が、私の心に似てよろめいている)」という表現のように、感情を擬人化したり、間接的ににじませるような書き方です。また、「ばかみたいな顔のまま / 鏡の中に滲んだ僕」という一節は、ただ「悲しい」と言うのではなく、涙で滲んでぼやけていく鏡の中の姿を比喩として描くことで、感情を伝えようとしています。

そうしたプロセスを通して、歌詞を手探りしながら感情と物語を形にしていくのが好きです。こうした表現の仕方は、私なりのコミュニケーションの方法でもあります。感情そのものを直接語るのではなく、その感情が滞在していた瞬間を見せること。そういうディテールに気づいてくれるリスナーなら、その中に小さな快感や共感を見つけてくれるはずだと思っています。

Q4. 曲を作るとき、歌詞を書くとき、JUEさんが最も大事にしていることは何ですか?

歌詞や楽曲を作るうえで、私が一番大切にしているのは、持続可能な音楽を作ること、ですね。

私自身にとっても、私の音楽を聴いてくださる方々にとっても、時間が経っても意味を失わない作品であってほしいと思っています。私にとって制作の過程は、単なる創作ではなく、自分を知り、記録していく行為でもあります。だからできるだけ正直に書こうとしつつ、同時に洗練された表現で届けられるよう努めています。前の質問でも触れたとおり、私は「独自のムード」を育てていくことに集中しています。それはまるでオールドスクールタトゥーのように、流行を超えながらも新しい時代の中で存在感を失わないもの――時間や環境が変わっても、自分の場所を保ち続ける感覚だと思っています。

最終的に私が目指しているのは、どんなジャンルの中にあっても自然に溶け込みながら、一曲の中に私のムードをしっかりと刻み込める音楽を作ることです。

Q5. 7月に韓国でリリースした「This Face」を日本語で再収録した「こんな顔」が11月26日にリリースされましたね! 歌詞もご自身で翻訳されたと思います。日本語収録の思い出などを教えてください。

日本語バージョンの制作で一番印象に残っているのは、翻訳そのものの過程です。まず私が歌詞を日本語に訳し、それを日本語が得意な友人たちに見てもらいながら、原曲の感情やニュアンスが「歌詞として自然に聞こえるか」を意識してブラッシュアップしていきました。実は、翻訳を手伝ってくれた友人は韓国語がネイティブでなかったんです。だからお互いに言葉を説明し合って、また解釈し直して、さらに表現を整えて……と、何度も往復しながら作業でしたが、これがとても面白かったです。

結果として、歌詞が完成するまでの時間そのものが、ひとつのコラボレーションであり、リアルタイムの「相互翻訳」みたいな体験でした。振り返ってみると、そんな試行錯誤さえも含めて、今回の作業がより特別に感じられます。一曲が別の言語で生まれ変わる過程には、技術的な正しさだけでなく、その瞬間の空気感や笑い声、そして一緒に過ごした時間まで全部が刻み込まれる。だから「こんな顔」は、単なる翻訳バージョンではなく、その過程で生まれた記憶や会話までも残っている、もうひとつの記録のような曲だと感じています。

 

Q6. なぜ日本語でリリースしようと思ったのか、動機を聞いても良いですか?

日本語バージョンのリリースを考えるようになったのは、計画して決めたというより、制作の途中でふっと湧いてきた感覚に近かったです。曲によっては、その音楽が持つ風合いやエネルギーが、ある言語と直感的につながることがあるのですが、この曲はまさにそうでした。作業しながら、「日本語で表現したらもっと馴染むかもしれない」という思いがずっと心の中にありました。それと、私の音楽を聴いてくださる日本のリスナーの方々から、SNSを通じてメッセージをいただく機会も多く、その流れもこの挑戦を後押ししてくれました。

ちょうどサポートしてもらえる環境も整っていたので、言語という変化を通して、ジャンルではなく表現の幅そのものを広げてみたいとも思いました。結果的にこれは新しい試みではあったけれど、私にとってはとても自然に導かれた選択だったと感じています。

Q7. これからの日本での活動で、目標にしていること、コラボレーションしてみたいアーティストがいたら教えてください!

今後もし日本で活動することになったら、昔から好きだった日本の音楽と自然につながるような作品づくりをしてみたいと思っています。子どもの頃、日本のR&Bやポップシーンに夢中になっていた時期があって、その頃よく聴いていたアーティストたちの名前は今でもすぐに思い出せます。

特に m-flo や Blu-Swing のようなグループとのコラボは、私の中でずっとひそかなロマンとして描いてきたイメージでもあります。それから、最近日本で存在感を放っている SIRUP さんや Ayumu Imazu さんのようなアーティストとも、男性ボーカルとのケミストリーがどんな形になるのか気になっていて、いつか一緒にやってみたいという思いがあります。

まだ夢に近い話ではありますが、日本での活動が自然に広がっていけば、こうしたコラボもいつか現実になるんじゃないかと期待しています。

Q8. 最後に、日本のリスナーへ一言お願いします!

日本にいる皆さん、こんにちは。お会いできてうれしいです。皆さんが送ってくださる応援や気持ちは、離れていてもはっきりと届いています。今回のリリースは、その想いへの私なりの「ありがとう」であり、そっと届けるご挨拶のような作品でした。まだ未熟なところも多いと思いますが、そのすべての過程を一緒に見守っていただけたら、とても大きな力になります。いつか同じ空間で、同じ空気を共有しながら、皆さんに音楽を届けられる日を心から楽しみにしています。本当にありがとうございます。

 

リリース情報

デジタル・シングル
Artist:JUE
Title:こんな顔
Release Date:2025-11-26

Track List:
1. こんな顔

Credits:
Lyrics by JUE 
Composed by JUE, JINex 
Arranged by JINex 
Vocal by JUE 
Chorus by JUE 
Piano by JINex 
Bass by JINex 
Drum by JINex 
Synthesizer by JINex 
Vocal Mixing by Muhpy 
Mixing by JINex 
Mastering by Alan JS Han

関連リンク

韓国SSW・JUE、初の日本語シングル「こんな顔」をリリース

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内畑美里

内畑美里

プロモーター

2017年よりソウルと東京の2か所にてDJイベント〈めちゃくちゃナイト〉、2024年より日韓の電子音楽を繋ぐイベント〈umm edition〉を主催。その他、韓国音楽に関する執筆や、来日・来韓公演のコーディネーターとして活動。韓国で好きなスポットはキンパ天国。好きな飲み物は삼다수(サムダス)。

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