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韓国のエレクトロニカ・ミュージシャン Fat Hamster & KANG New 来日直前インタビュー|INTERVIEW #39

韓国・ソウル拠点のエレクトロニカミュージシャン、Fat Hamster & KANG New。ソウルに《LetzRatz》という共同運営のエレクトロニカレーベルを立ち上げ、韓国内のライブハウスやフェスなどで意欲的に活動している。

Fat Hamsterのダウンテンポなビートとヘビーなベースライン、KANG Newのポップなボーカルと電子パーカッションのグルーヴが印象的な彼ら。今回初めての外国公演ということで、関西・東京ツアーを目前に控える2人にメールインタビューを行った。

Interview&text:music/And…

左:Fat Hamster、右:KANG New

—— まずはFat Hamster, KANG Newそれぞれ自己紹介からお願いします。

Fat Hamster(以下FH):はじめまして。韓国で活動しているエレクトロニカ・ミュージシャン、Fat Hamsterです。主にダウンテンポとシンセウェーヴといったジャンル的要素のある電子音楽をやっています。

KANG New(以下KN):はじめまして。KANG Newといいます。ジャンルにこだわらず自分らしいシンセサウンドを組み合わせて歌詞を付けて歌ってます。踊ったりもします。

Fat Hamster
KANG New

 

—— アーティスト名が印象的なのですが、どのような意味がありますか?

KN:実は名字がカンでして、名字に新しいという英単語のNewをつけてKANG Newになりました。「これから私は生まれ変わったんだぞ!新しいカン氏なんだぞ!」という意味を込めて。

FH:ベースサウンドが大きくてしっかりしているとFatなサウンドだと表現したりするんです。なので音楽でFatなのはすごく良い意味だなっと。そしてアーテイスト名を付ける当時ハムスターを飼ってましたのでくっつけてFat Hamsterになりました。

—— 普段はそれぞれソロ活動をしていますか?

FH:はい。基本ソロで、音源も各自で出しています。ライブ活動も別々でやる時もあるんですが、一緒にやるとなぜか反応がよくて(笑)。それで一緒にライブすることが増えましたね。

Fat Hamster

 

—— 2人が出会ったきっかけは何ですか?

KN:ソウルにホンデという場所があるんです。そこにライブハウスだったり小さなクラブが集まってるんですけど、私がホンデのとあるライブハウスでスタッフとして働いてたとき観客として通っていたFat Hamsterと親しくなって友達になりましたね。当時、彼はエレトロニカではなくロックをやってました。

FH:バンドマンでした。

—— これまでどのような音楽に影響を受けてきましたか?

KN:イギリスのバンドシーンが好きでずっとフォローアップしてきましたが、その中で影響を受けたバンドを選ぶとしたらDepeche Modeですかね。あと80年代のポップサウンドが好きです。

FH:私はバンドマンでしたので(笑)。実はパンクとかニューメタルとかが好きです。特にEmo的なのが大好きで、やってるジャンルは全然違うんですが感性的にはそちらの影響を受けています。エレクトロニカでいうとDeadmau5とJusticeのファンです。

 

—— 日本で好きなアーティストはいますか?

FH:バンドの話ばかりになりますが、ELLEGARDENとthe HIATUSの細美武士さんのファンです。20代はずっと細美さんの音楽を聴いていました。そしてSakanactionも好きです。

KN:今は俳優活動でもっと知られている方ですが、及川光博さんの曲やパフォーマンスが大好きです。

—— 2人とも日本語が上手ですが、どうやって修得したのですか?

KN:私は父の仕事で小さいころから日本と縁がありまして、高校の時も日本語を専攻しました。大学も日本で卒業しています。実は日本の教員免許も持ってるんです。

FH:あまり上手というほどの実力ではないです(笑)。日本のゲームが好きで韓国には発売されないゲームをなんとかプレイするために勉強していたらすこし上達したかなと思います。

—— 楽曲制作する際、どのようなことからインスピレーションを得ますか?

FH:インスピレーションを得ることがあまりないので何か出るまでずっと鍵盤の前に座っているタイプです。インスピレーションを得て作業に入るより、とにかく作業をしていたらその過程自体がインスピレーションになるというか。

KN:日常生活をしてると頭の中で何かしらずっと音楽が流れています。いいのがあればそれを具現化するという感じですかね。なので特にこれというより、日常すべてがインスピレーションなのかもしれません。

—— 2022年7月にFat Hamsterがデジタル EP 『Nonviolent Communication』を、KANG Newが今年8月にデジタル EP 『Here Is the Thing』をそれぞれリリースされましたが、作品について解説をお願いします。

FH:いろんなジャンルのアーティストたちとコラボをしました。韓国の伝統楽器であるカヤグム、スピリチュアル系、トランスミュージックなど自分と違うジャンルで活動している方たちと音楽を作ったら面白くなるかもと思ってやってみたらなかなかいいものができました。

KN:サウンド的にはとにかく面白い音を組み合わせてヘンテコなグルーヴを作ってみたいというのを考えて作業に取り組みました。周りから「KANG Newらしいね」という反応をいただいたので半分成功だなと思っています。歌詞のテーマは「死」ですかね。親しい存在の死、だれからも悲しまれない死などを題材にしました。

—— Fat Hamsterの「Nonviolent Communication」は、韓国の伝統楽器・カヤグムのアーティストとコラボされていますが、伝統的な楽器に特に関心があるのですか?

FH:伝統楽器に限らず楽器というものに興味がありました。ひとりでやっているとシンセサイザー中心になってしまうので、生の楽器の音が私の限界を破ってくれる気がするんです。あ、楽器というのはボーカルも含めての話です。

—— KANG Newの「Here Is the Thing」は韓国のチョンジュ市で起こった自然災害や地球環境問題がテーマになっていると聞きましたが、詳しく教えていただけますか?

KN:今、世界的に気候危機の影響を受けてますね。韓国も同じでして、昔よりも豪雨や土砂崩れ、台風被害が増えているんです。そんな状況のなか、人間は避難したり救助されたりする一方、動物、特に家畜と分類される動物たちはそのまま死んでいくしかないんです。チョンジュで供水が起きた時もそうでして60万に近い動物の命が犠牲になりました。人間としてこういう問題を直視し、しっかり記憶していく義務があるんじゃないかと思いました。

—— ジャケットのアートワーク、MVなどとても素敵ですが、ご自身で手掛けているのですか?

KN:ありがとうございます!ジャケットは全て私の作品です!

FH:最近とても才能あるビジュアルアーティストの方に知り合ってMVをその方に依頼したらいいものが出来上がりました。しかし演技って難しいですね(笑)。

—— 日本に来られたことはありますか?

KN:私は学校や会社勤めなどで日本に住んでましたが、住んでいた地域以外はあまり知らなくて。そういうところは旅行で訪れたりしてます。

FH:コロナ禍以前はよく旅行に来てました。近いし、ゲームや音楽など日本の文化が好きなので。

—— 今回のツアー中、東京で楽しみなことはありますか?

FH:私たち2人ともヴィーガンなんですが、探してみると東京に新しくできたヴィーガンレストランがいっぱいありました。とても楽しみです!

—— 今後の活動予定や目標など、教えていただけますか?

KN:とにかく面白い音楽を作って、それを通じていろんな場所でいろんな方に出会いたいなと思っています。韓国でもなるべくいろんな地域でライブができるように努力していますが、日本でももっと多くの方に私たちの音楽を聴いてもらえるために頑張りたいです。

FH:同じく、音楽を通じてたくさんの方と楽しいことができるように頑張りたいです。

          

イベント情報

Fat Hamster & KANG New JAPAN Tour 2023
日程/会場:
10/28(土)神戸・Alchemy Kobe
10/29(日)大阪・Environment 0g
11/03(金)東京・time Tokyo
11/04(土)東京・近道おてまえ
11/05(日)東京・渋谷LUSH

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フィールドリサーチャー|アクティビスト|ブッカー|オーガナイザー

音楽、紙、環境、思想、アート、映像、SNS、国際文化など、多様な関心を掛け合わせながら、独自の視点で世界を見つめ、発信・行動しています。 旅先で出会う町の空気や育つ植物の静かなエネルギー、ライブハウスで鳴る音や誰かと語る政治の話、紙の手ざわりとその背景にある文化や思想。 音楽を軸に、環境や社会課題、政治、国際文化について考え、SNSを活用して小さな問いかけを拡げ、伝統的な紙の文化を現代の感性で再編集する。 ジャンルを横断しながら「想いを伝える」「ひととひと、テーマとテーマ」をつなぎ、アイデアを生み出し、かたちにして、自分のペースで探求と発信、活動を続けています。

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