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過去を振り返り、未来を見つめる── Gogohawkが自然体で奏でる日常の記録|INTERVIEW #55

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過去を振り返り、未来を見つめる── Gogohawkが自然体で奏でる日常の記録|INTERVIEW #55

友人のドラマー、カン・ジョンホさんから連絡をもらったのが、Gogohawkとの出会いのきっかけだった。新しいバンドを始めたというジョンホさんから「楽曲を聴いてほしい」と送られてきたメッセージ。その音に触れた瞬間、私はすっかり魅了されてしまった。彼らの音楽に宿る独特の柔軟さと、“過去を見つめながらも未来へ向かう”視点に惹かれ、1stフルアルバム『VOL.07』のリリースを記念して、Gogohawkのメンバーにインタビューを行った。

Gogohawk

Gogohawkは、ギター/ボーカルのハ・ボムソク、ドラムのカン・ジョンホ、ベースのユ・ジョンヒョン、キーボードのLAKOVからなる4人組バンド。2022年にシングル「Sunset」でデビューし、同年の1st EP『Gogohawk』で注目を集めた彼らは、地道にリリースを重ねながら単独公演シリーズ『ISSUE』を成功させ、2025年に満を持して1stフルアルバム『VOL.07』をリリース。抽象的でありながらも核心に触れるメッセージで、リスナーを魅了してきた。

そんな彼らの音楽と、その内側にある思考に迫るべく、創作の裏側やバンドとしての歩みについて話を訊いた。


——「Gogohawk」という名前を初めて見たとき、前進の掛け声のようなエネルギッシュな響きを感じる一方で、韓国語の「고고학(コゴハク)」は“考古学”──つまり過去を探求する学問を意味します。そんな二重のニュアンスを持つこのバンド名には、どんな想いやストーリーが込められているのでしょうか?

Gogohawk:その通りです。両義的な意味を込めています。”鷹が飛び立つ”という意味にもなり得ますし、原初的な意味での”考古学”でもあります。そのため、スローガンを「過ぎた時間を振り返り、未来を見つめる私たち」と定めました。

—— 皆さんが音楽と出会った原体験や、それを自らの表現手段として選ぶに至ったきっかけを教えてください。

ハ・ボムソク:音楽的なインフラが整っていない町で育ったのですが、漠然と歌を歌いたいと思っていました。歌を歌うには、楽器のひとつくらいできたほうがいいと聞いて、いちばんカッコよく見えたギターを始めたんです。すると、むしろギターに夢中になってしまい、ここまで来ました。途中で歌を歌いながら、自分自身のアイデンティティを表現しなければという考えに至ったのは、音楽を始めて10年ほど経った頃だったと思います。他人の音楽をサポートすることに全く興味を感じられず、懐疑的になっていった結果、自然と自分自身の表現へとシフトしていきました。

カン・ジョンホ:最初に音楽に触れたのは、子どもの頃に母からピアノを教わったのがきっかけでした。その後、教会で初めてドラムを習うことになり、それからずっとドラムを叩き続けています。自分は内向的な性格だと思いますが、どこかで誰かに注目されたい気持ちもあったんだと思います。だから、ステージの上でドラムを叩くことに楽しさを感じ、今まで続けてこられたのだと思います。

ユ・ビョンヒョン:親の勧めで音楽を始めました。言葉ではなく音楽を通して感情を伝え合えることに深い意味を感じ、それが音楽を続けるきっかけになりました。

LAKOV:子どもの頃、誰もが一度はピアノ教室に通うように、私も自然と音楽に触れました。その後、素晴らしい仲間たちと一緒に音楽を作り上げていく過程に大きな魅力を感じるようになり、徐々に音楽が自分自身を表現する手段になっていきました。

—— Gogohawkというバンドがどのように出会い、どのような経緯で現在の形にたどり着いたのか、そのストーリーをお聞かせください。

Gogohawk:最初のスタート地点には、ボムソクとジョンホがいました。ある日、ジョンホがボムソクが歌いながらギターを弾いている姿を見て、一緒にやりたいと思ったそうです。ふたりの思いが一致して、バンドを始めることになり、最初はトリオ編成で活動していました。「VOL.01」となるEP『Gogohawk』(2022年12月リリース)を聴いていただくと、キーボードのサウンドが入っていないのを感じられると思います。現在のメンバーとは、「VOL.02」となるシングルアルバム『Wish』から一緒に活動するようになりました。「ビールを一杯飲みながら、自然な流れでメンバーが加わった」と思ってもらえればいいかなと思います。

    

1st EP『Gogohawk』

지나온 시간이 지금을 말해주듯 말없이 바라보고 있는 것으로 모든 것이 설명될 수 있기를 바라본다.
過ぎ去った時間が今を語るように、何も言わずに見つめていることですべてが説明できることを願う。

Track List:
01. Rain
02. Uneasy
03. Remorse
04. Sunset
05. Paradise
  

—— Gogohawkの音楽をひとことで表すと?スタイルやサウンドの特徴を、ご自身たちの言葉で説明していただけますか?

Gogohawk:ひと言で表すなら、「ひと言では表せない」ということになりますね、ハハ。飾り気のないサウンドを志向し、率直な演奏で満たしていこうとするチームです。ジャンル的にも、簡単には説明できないと思います。僕たちが影響を受けたすべてのものを、そのまま音楽に取り入れているからです。

—— 各メンバーの役割はもちろんのこと、音楽的・人間的な個性についても教えていただけますか?それぞれの存在がバンドにどんな彩りを加えているのでしょうか。

ハ・ボムソク:リーダーとして、全体的な企画や大枠を決める役割を担っています。ボーカルを担当していることもあり、チームの色合いに大きく関わっていると思います。でも、メンバーたちのサポートや主題意識がなければ、どんな色も出せなかったでしょうね。僕は気まぐれで、慌てやすい性格なので。

ハ・ボムソク(Gt/Vo)

カン・ジョンホ:僕は音楽を作るときも、人との関係においても、常に”調和”を第一に考えるタイプです。その調和のなかで、できるだけ自分だけの色を表現しようと悩みながらやっています。その姿勢がGogohawkの音楽にもよく表れていて、そこを好いてくれる方が多いのかなとも思います。これはメンバー全員に共通していることかもしれませんが、人生に向き合う態度が、自然と音楽にもにじみ出ている気がします(笑)。音楽以外の面でも、バンド内でできることはできるだけサポートしようと心がけています。

カン・ジョンホ(Dr)

ユ・ビョンヒョン:黙々と、着実に続けていくことが自分の個性じゃないかな、と僭越ながら思っています。僕は細かな部分にも気を配るよう、常に努力しているタイプですね。

ユ・ビョンヒョン(Ba)

LAKOV:僕は、染まっていない、ありのままの姿で、バンド内で自然な雰囲気を作り出していると思っています。音楽面でも、普段の行動でも、飾らずに真心を込めようと心がけています。

LAKOV(Key)

—— ハ・ボムソクさんのInstagramには、宿泊施設「Staypresso」やワインバー「Slowdance」といったアカウントがリンクされています。音楽活動と並行しているそのプロジェクトについて、もう少し詳しく教えてください。

ハ・ボムソク:私の故郷である江原道・コソン(高城)で、ワインバーと宿泊施設を運営しています。正確に言うと、宿泊施設は両親が運営していて、私はサポートする役割を担っています。音楽活動をしている間はずっとソウルにいましたが、だんだんとインフラ維持にかかる費用が増え、都市での疲労も蓄積していくなかで、故郷へ戻ろうと決心し、そのまま自営業者になりました。海辺の目の前にあって、すぐに日の出が見られる宿泊施設、そして、美味しいお酒が並び、繊細なプレイリストで彩られた音楽家のワイン倉庫──そんなふうに紹介したいです。時々ライブも開催しています。

Slowdance

—— ドラムのカン・ジョンホさんには、以前MKS名義でBUZZY ROOTSのインタビューにもご登場いただきました。あのときから現在にかけて、ご自身の生活や音楽に何か変化はありましたか?

カン・ジョンホ:以前は、ただ情熱だけで前後を考えずに、とにかくたくさんのライブや仕事をこなさなければならないと思っていましたが、今はより多くの経験を重ね、人生を生きる一人の人間としても、ミュージシャンとしても、少しは自分自身を遠くから見つめる余裕が生まれたように思います。年齢を重ねたからかもしれませんね(笑)。当時は若かったし、本当に何も分かっていなかったんです。今はむしろ、メンバーたちとの交流や制作作業から、たくさんのエネルギーをもらっています。今の自分は、過去の自分に比べて、少しは健康的な姿に近づいていると感じています。

——Gogohawkとして楽曲を制作する上で、最も大切にしている核のようなものがあれば、ぜひ教えてください。

ハ・ボムソク:自然体であることが一番大切だと思っています。それから、周りを気にしないことも重要です。たとえば「最近はこういうのが流行ってるから、こういうのをやってみよう」というような考えは排除しようとしています。私たちの中に内在しているものを、そのまま引き出すべきだという思いを常に持っています。

カン・ジョンホ:良いメロディー、ありきたりだけどありきたりに聴こえない演奏。

ユ・ビョンヒョン:楽曲の雰囲気と自由な表現を核にしようと心がけています。

LAKOV:アレンジ作業におけるディテールですね。完成度は結局、ごく小さな違いで決まるものだと思っています。わずかな差がクオリティを左右する核心だと信じています。

—— 歌詞を主に手がけるボムソクさんは、自然のモチーフ──海、波、光、風、雨、夜、太陽、虹といったイメージを巧みに織り交ぜています。それがサウンドの広がりや空間性にも繋がっていると感じます。歌詞はどのように生まれ、どこからインスピレーションを得ているのでしょうか?

ハ・ボムソク:やはり自然に囲まれた場所で多くの時間を過ごしているせいか、自然とそういったイメージが浮かぶのではないかと思います。周りのミュージシャンたちを見ていると、旅行に行ったり、非日常の領域で多くのインスピレーションを受けることが多いようですが、私の場合はごく日常の中からインスピレーションを得ています。特に、夜に長距離を運転しているときに、インスピレーションがよく湧いてきます。運転している間は何もせずにただハンドルを握っているだけなので、自然といろいろな考えが浮かんでくるようです。

波を止めてくれ
どこかにぶつかったら
粉々にあちこち散らばって
君のすべてが忘れられてしまうのだろうか
怖いんだ

——「WAVE」

明日が来たら もう君を探しはしない
無力な世界に 別れを告げよう
怒れる太陽と 虚脱した魂と
冷気に満ちた荒野へ登ろう

——「Trauma」

明日は来るだろう 青いあの光の中で
夜通し僕に手招きしていた さまよう記憶のどこか
ついにやってきた夏のあの雨音が
一晩中僕に歌ってくれた歌は
終わりのない想像の中へ

——「Live in Silence」

—— アルバムのタイトルには「VOL.1」「VOL.2」……とナンバリングが続いています。この命名には、どのような意図や思いが込められているのでしょうか? 積層していく記録のような感覚もあります。

Gogohawk:雑誌のようにアルバムを連載していきたい、という思いがあります。特定のコンセプトに縛られず、ごく日常の領域で継続していくスタイルです。ライブは『ISSUE』という名前で続けています。

—— Gogohawkの楽曲は、インストゥルメンタルのパートが際立っているのも印象的です。音で語る時間の豊かさを感じるのですが、それは意図的なものなのでしょうか?

Gogohawk:私たちのメンバー全員が演奏を重視するベースを持っているので、自然と演奏が多く入るようです。私たち自身もそれが好きですし、意図したというより、あくまで自然な流れだと思っています。たまに「ちょっと長すぎるかな…?」と思うこともありますが(笑)

—— 2025年に発表された1stフルアルバム『VOL.07』は、Gogohawkにとってどのような作品となったのでしょうか?制作過程やテーマについてもお聞かせください。

「制御不能な巨大な流れの前で、小さな存在たちが記録した世界の断片」というテーマを込めました。今回も自然が登場するのですが、フィジカルアルバムのアートワークには終始一貫「水」をテーマにしています。「井戸」のような対象を通して、流れを制御しようとするのか、それとも従うのかについて考えてみたように思います。

  

1st フルアルバム『VOL.7』

통제할 수 없는 거대한 흐름앞에서 작은 존재들이 기록한 세상의 단상
制御不能な巨大な流れの前で、小さな存在が記録した世界の断片

Track List
01. City Legend
02. The Well
03. 트라우마(Trauma)
04. 미래소년(Future Boy)
05. No Man’s Land
06. Persimmon
07. KHAKI LIGHTS
08. Live in Silence
  

——これからGogohawkを知る日本のリスナーに向けて、1曲だけ紹介するとしたら、どの楽曲を選びますか?その理由もあわせて教えてください。

ハ・ボムソク:「Wish(소원)」をおすすめしたいです。個人的に最も胸が躍る曲だと思います。

  

カン・ジョンホ:「Trauma(트라우마)」をおすすめします。最もGogohawkらしい音楽だと思います。

ユ・ビョンヒョン:「Wish(소원)」です。4人のメンバーが一緒に始めた最初の曲でもあり、日本で公演する際にはこの曲を絶対に演奏したいと思っています。

LAKOV:「Future Boy(미래소년)」をおすすめしたいです。後半の楽器メロディや全体的な雰囲気がゲームのBGMのように聞こえることもあり、レトロな質感が日本のリスナーにうまく響くと思いました。ミュージックビデオ的な要素も面白く感じてもらえると思います。

  

—— 2025年1月にリリースされた有名Instagramマガジン「AoB(밴드 붐은 온다/バンドブームは来る)」によるコンピレーション・アルバム『AoB Compilation Album Vol.1: Mutant』に「WAVE(파도)」が収録されましたね。この楽曲が選ばれた背景や、他の新鋭バンドと肩を並べて収録されたことへの思いを教えてください。

Gogohawk:まず、深い関心と愛情に心から感謝申し上げます。同時代の素晴らしいミュージシャンたちと一緒に一つの船に乗っているという思いで、この旅に非常にワクワクし、光栄に思っています。「WAVE」は、私たちを最もよく表現した曲ではないかと思います。演奏や編曲的にもそうです。AoBのオーナーの方も最も良いとおっしゃっていたのを覚えていて、それで選びました。

『AoB Compilation Album Vol.1: Mutant』

Track List:
01. kimseungjoo「Mutant」
02. kimseungjoo「city 404」
03. SIMILE LAND「Hoo! ha..」
04. Leaveourtears「stranger」
05. Erøtic Wørms Exhibitiøn「pickle me...」
06. evenif「Lone」
07. Gogohawk「WAVE」
08. OUR AGE「WWWY」
09. Kangziwon「pasta24」
10. ddbb「Train」
11. Ghost Bookstore「Spring Song」
12. Sanbo「Wabuwabu」

AoB(밴드 붐은 온다/バンドブームは来る):韓国内外のバンド音楽を軽やかに紹介するInstagramアカウント。2023年に開設され、2025年5月時点でのフォロワーは8.4万人。2025年1月に、“突然変異”というコンセプトで初のコンピレーションアルバムをリリース。
  

  

——最近よく聴いている音楽や、刺激を受けているアーティストがいればぜひ教えてください。

ハ・ボムソク:国内のインディ音楽も毎日聴いていますし、オルタナティブ音楽もたくさん聴きます。1つのバンドを挙げるのは少し難しいですね...!

カン・ジョンホ:King Gnuのサウンドが好きです。それ以外にも多くの韓国のインディバンドの音楽を聴いています。(Ex. Erøtic Wørms Exhibitiøn)

ユ・ビョンヒョン:最近は、Tempalayや羊文学からたくさん影響を受けています。

LAKOV:最近はTheo Katzmanの『Be the Wheel』というアルバムをよく聴いています。感性も深く、曲の構成や演奏も印象的で、とてもインスピレーションを受けています。

  

—— 最後に、Gogohawkの未来について。各メンバーが思い描くこれからの姿や、目指していきたいビジョンを聞かせてください。

ハ・ボムソク:"着実に自然体な音楽を作り続けるバンド" という形容詞をつけたいです。健康的な姿を見せることも重要だと思っています。今後は、自由をもっと取り入れていくようなバンドになりたいですね。

カン・ジョンホ:健康で着実に、もっと多くの場所でさまざまな人たちと出会いたいです。いつかは日本のファンの皆さんの前で公演するその日を楽しみにしています!(笑)ありがとうございます。

ユ・ビョンヒョン:私は着実に音楽をリリースし、ライブを通じてさまざまな経験を積んでいきたいです。音楽だけでなく、文化的にも影響を与えることができるGogohawkになればいいなと思っています。

LAKOV:これからも音楽を作り続け、ライブを行い、今よりも良い環境で自由に作業できる日が来ることを願っています。その中で、私たちの独自のカラーをより鮮明にしていきたいです。

  • この記事を書いた人

Akari

1994年生まれの自称、韓国音楽PR大使。インディペンデントな韓国のミュージシャンや業界人を中心にインタビューやコラムを執筆。「韓国の音楽をジャンルレスに届ける」をモットーに、韓国インディーズ音楽特化型メディア「BUZZYROOTS」の運営やDJイベントへの出演、アーティストのアテンドなど、多岐に渡り活動中。一番の推しバンドは、SURL。

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