今や世界中の音楽シーンを席巻し、ひとつのジャンルを超えてカルチャーとなったK-POP。BTSが全米チャート制覇を成し遂げ、数々のグループが海外の大型フェスのヘッドライナーを務める現在、その輝きは当たり前のものとして私たちの日常にある。だが、そういったK-POPの華やかな成功の裏に、どのような歴史が積み重ねられてきたのだろうか。
その答え、そしてかつてない知的興奮を与えてくれる一冊が、今回ご紹介する『100曲でわかる! K-POPヒストリー 1992-2020』である。本書は、韓国最大の音楽プラットフォーム「Melon」と「ソウル新聞」が共同企画し、35名の音楽関係者が選定、24名の評論家がレビューを執筆した極めて信頼性の高いK-POPガイドだ。私が普段から愛読しているメディア『ZENERATE』のキム・ドホン氏をはじめ、ウェブジン『IZM』、『IDOLOGY』の編集、ライターの方など、他にも錚々たる執筆陣が名を連ねており、著者のリストを見た瞬間、すぐにでも読みたいという衝動に駆られた。
タイトルにある通り、本書には1992年から2020年までの「K-POPの歴史を作った100曲」が年代順に収録されている。始まりはソテジワアイドゥルの「僕は知っている」、そして締めくくりはBTSの「Dynamite」。実際にページをめくってみると、単なる楽曲解説やディスクガイドにとどまらないことに気づく。なぜその曲がその時代に生まれ、なぜ当時のリスナーに熱狂的に受け入れられたのか。そして、その後のシーンにどのような影響を与えたのか…。社会的背景や産業構造の変化と共に語られるレビューは、まるで一本の壮大なドラマを読んでいるかのよう。これを日本語で読めるなんてありがたすぎる。
読み進めるにつれて、現在のK-POPシーンの礎には確かに数多くの転換点が存在したことを思い知らされる。バラバラに存在していた点(作品)と点(作品)が繋がり、やがてK-POPという巨大なうねりが形成されていく様を追体験できるのが、本書の醍醐味だと思う。
90年代生まれの私が初めてK-POPと出会ったのは2009年の少女時代「Gee」、そして、K-POPの世界に本格的にのめり込んだのが2013年のEXO「Growl」あたりからだった(リリース後の2014年の冬、大阪城ホールのライブに無理やり連れて行ってくれた友人には今でも感謝している)。この本を読んでいると、こんな風に思わず自分語りをはじめたくなる。本書は、自分がリアルタイムで楽しんでいた楽曲の記憶を鮮明に蘇らせてくれるだけでなく、物心がつく前のK-POP黎明期にあった空白のピースをも埋めてくれる。自分の中にあった断片的な記憶が、歴史という一本の線で繋がる感覚は快感でしかない。
そして、日本語版オリジナルの仕様が非常に気が利いている点も見逃せない。K-POP独特の用語の解説やアーティスト紹介に加え、掲載された100曲にすぐアクセスできるプレイリスト(QRコード)がついている。
K-POPを愛するファンはもちろん、「なぜK-POPがこれほどまでに世界を熱狂させるのか?」という問いの答えを探している人にも、自信を持っておすすめしたい一冊!
INFORMATION

『100曲でわかる! K-POPヒストリー 1992-2020』
出版社:アルテスパブリッシング
発売日:2025/11/28
著:イ・ジョンス、キム・ヨンデ、キム・ユナ、パク・ヒアほか計24人
訳:廣岡孝弥
企画:Melon&ソウル新聞
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