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PENTAGONウソク率いるバンド・KIK、初来日直前インタビュー|アイドルとインディの境界を越えて|INTERVIEW #72

韓国のバンド・KIKの初来日公演『KIK Asia Tour 2026 JAPAN』が、3月12日(木)、13日(金)に東京・ADRIFT、15日(日)に大阪・PLUSWIN HALL OSAKAで開催される。本公演は、日本のほかにもバンコク(タイ)、台中(台湾)、ソウル(韓国)をめぐるアジアツアー『KIK Asia Tour 2026』の一環として組まれたものだ。

KIKは、2025年6月30日にEP『KIK』をリリースし正式デビューを飾ったバンド。メンバーは、それぞれ異なる文脈で確かなキャリアを積んできた、チョン・ウソク(PENTAGON)、チョン・ミンヒョク(Lacuna)、オ・ミョンソク(SURL)の3人だ。

ウソクは、2016年にMnetのサバイバル番組『PENTAGON MAKER』を経て、ボーイズグループ・PENTAGONのメンバーとしてデビュー。グループ内では作詞、作曲、ラップメイキングを担う中心メンバーとして存在感を発揮してきた。2019年にはライ・グァンリンとのユニット「WOOSEOK X KUANLIN」で活動し、ソロアーティストとしての可能性も早くから示していた。

2024年にはダブル・シングル『Empty Paper』をリリースし、本格的なソロ活動をスタート。本ソロワークで特に注目したいのは、彼が以前から強い関心を寄せてきたロックサウンドを前面に打ち出している点だ。親しみやすいメロディラインに多彩な感情を込めた歌詞、そこに重厚なサウンドと彼ならではのラップを掛け合わせることで、独自のスタイルを築き上げている。

また、Taka Perry、Robin Packalen、Issei Uno Fifth、jeebanoff、Someone Else’s Rain、Chiaki Mayumuraなど、ジャンルや国境を越えたアーティストとのコラボレーションも重ね、音楽的なフィールドを広げてきた。韓国と日本でのソロライブを成功させたほか、日本のアーティストとの交流を目的としたイベント『FRIENDS Vol.1』をKT Zepp Yokohamaで開催するなど、アーティスト同士の新たな接点を生み出す場づくりにも取り組んでいる。

ギターのチョン・ミンヒョクが在籍するLacuna(ラクナ)は、2018年デビューの韓国インディシーンを代表する4人組バンド。ブリットポップやシューゲイザーの影響を受けた透明感のあるサウンドを武器に、「不完全で不安定なすべてのものをあたたかいギターで包み込む」と評されるその音楽性は、韓国にとどまらず海外にも熱心なリスナーを持つ。ミンヒョク自身は、2025年4月に初のソロEP『Borrowed Hearts(도서대여점)』をリリースし、よりパーソナルで実験的な表現にも踏み込んでいる。

ドラムのオ・ミョンソクが所属するSURLもまた、2018年デビューの4人組インディ・ロックバンドだ。ブリティッシュロックとブルースを土台に据えながら、キャッチーなメロディと鋭いエッジを持つサウンドでデビュー直後から韓国の新人賞を席巻し、「バンドシーンのスーパー・ルーキー」と称された。オ・ミョンソクはそのリズムの核を担うドラマーとして、ダイナミクスの大きいドラミングと、曲の空気を一変させるような表現力でバンドのグルーヴを支えてきた。SURLは、2019年の初来日公演(ミツメと対バン)、2023年の代官山UNIT公演(リーガルリリーと対バン)など度々来日を重ねており、日本のオーディエンスにとっても馴染みのある顔だ。

アイドルグループのメインラッパー、韓国インディを代表するギタリスト、ドラマー。まったく異なる音楽的背景を持つ3人が、なぜKIKとして集結したのか。そして3人がともに鳴らすサウンドは、互いのキャリアにどんな化学変化をもたらしているのか。初来日を目前に控えた彼らのメールインタビューをお届けする。

Interview & Text:AKARI(BUZZY ROOTS)

KIK メンバー

■ チョン・ウソク(정우석):ボーカル、ギター

     

■ チョン・ミンヒョク(정민혁):ギター

     

■ オ・ミョンソク(오명석):ドラム

   

偶然のラジオ出演から始まった必然のバンド

—— バンドのプロフィールを拝見した際、まず強く惹かれたのが結成の経緯でした。PENTAGON、Lacuna、SURLという異なるグループで活動してきた皆さんが、チーム「KIK」として集結するに至った背景やきっかけを教えてください。

ミンヒョク:偶然ウソクのラジオ番組『夜のラジオ』に出演したことをきっかけに親しくなり、その後も交流を続ける中で、お互いに挑戦してみたい音楽の方向性が同じだと気づきました。そうして自然と気負うことなく集まるようになりました。

—— 1998年生まれのメンバーが集まったようですが、偶然だったんでしょうか?

ミンヒョク:98年生まれは才能ある人が多いのかもしれませんね(笑)。ある意味、同い年だからこそ気が合ったのかもしれません。

—— 「KIK」というネーミングの由来には、どのような意味やストーリーが込められているのでしょうか?

ウソク:KIKは、発音そのものが持つエネルギーから出発しました。短くてストレートで、少し荒さもあって、一度で強く印象に残る言葉だったんです。大きな意味を後付けするというよりも、僕たちが鳴らす音そのものが名前の意味になればいいと思っていました。

—— それぞれ他にもプロジェクトを抱えながら活動されている中で、皆さんにとって「KIK」はご自身の中でどのような位置付けにあると言えますか? その他に抱えているプロジェクトについても交えながらお聞きできると嬉しいです。

ウソク:僕にとって、KIKは挑戦というよりも、より生の自分を見せる場所だと思っています。ほかのプロジェクトがある種の枠組みの中で動いている感覚だとすれば、KIKは感情が先に動くチームです。

ミンヒョク:音楽は、誰と一緒に作るかによって仕上がりが変わるものだと思います。KIKは、今いちばん自由に音楽を作れる場所だと感じています。

ミョンソク:何か特別な立ち位置というよりは、ただ今できることにベストを尽くしている、という感覚です。それぞれが自分のバンドで活動するときも同じですが、今はKIKとしてできる限り良い音楽を届けられるように努力しています。

—— K-POPとインディという異なるバックグラウンドを持つ皆さんが集まったことで、制作過程やアプローチの面で違いを感じる瞬間はありましたか? また、それがKIKのサウンドにどのような影響を与えていると感じますか?

ウソク:アプローチの仕方は違っても、最終的には「良いかどうか」で判断することになります。ジャンル的なバックグラウンドの違いは、むしろバンドの色になったと思います。

ミンヒョク:それぞれがこれまで学び、経験してきたことが異なるからこそ、その経験を一つに集めて制作すると、より新鮮で新しいアウトプットが生まれるんだと思います。

ミョンソク:インストを作る過程も、メロディや歌詞を乗せる過程も、それぞれが歩んできた道がしっかりしている分、全体的に制作はとてもスムーズでした。何より大切だったのは、欲張らずに「良いものは良い」というモットーを守ること。だからこそ、結果的にファンによりストレートに届くサウンドになっているのだと思います。

   

デビューEP『KIK』が放った信号弾。削ぎ落とした先に残るもの

—— 2025年6月30日にリリースされたデビューEP『KIK』は、非常に印象的な作品でした。荒々しいロックサウンドから爽やかなモダンロック、AOR的な洗練された質感まで、多彩な表情が一枚の中で共存していると感じました。このEPのコンセプトやサウンドの方向性について、皆さん自身の言葉で教えていただけますか?

ミンヒョク:僕たちの1st EP『KIK』は、KIKの始まりを告げる「信号弾」のような楽曲で構成されています。理由を求められることの多いこの世の中で、僕たちなりのやり方で、シンプルな歌詞を通して世の中に投げかける小さな叫びを込めたEPです。サウンドは、ときにブリットポップやガレージロックの質感を持ちつつ東洋的な色合いがにじむ、親しみやすくも新鮮な方向性で制作しました。

—— 『KIK』は、バンドとしての第一印象を決定づける重要な作品でもあったと思います。リスナーや周囲の反応を受けて、手応えや実感したことはありましたか?

ウソク:思っていた以上に多くの方がライブについて言及してくださって、それがいちばん嬉しかったです。サウンドそのものというより、エネルギーを受け取ってもらえたように感じました。第一印象というよりも、「最初の呼吸」のような作品でした。

—— デビューから一年も経たずに発表された2nd EP『LOW KIK』ですが、タイトルは「低いキック」という意味にもとれます。この作品にはどのようなテーマや方向性が込められているのでしょうか。また、1st EP制作時と比べて、心境や制作姿勢に変化はありましたか?

ウソク:『LOW KIK』は、エネルギーを下げたのではなく、「視線を下げた」感覚に近いです。大きく打ち出すサウンドよりも、内側で動く感情により集中しました。制作の過程でも削ぎ落とすという選択をたくさん重ねて、過剰にならないように何度も確かめながら進めました。

ミンヒョク:「KIKの低気圧の歌はどんな感じだろう」と想像しながら制作しました。1st EPには自分たちなりに満足していたので、それを上回る良い曲を作らなければならないという責任感もありました。

ミョンソク:『LOW KIK』を制作していた時期は、ちょうどメンバーそれぞれが個人的に疲れを感じていたタイミングでもあったと思います。だからなのか、もっと深い感情の変化を見せたいという思いが強くなり、音楽も自然と一段と深みを帯びたものになったのだと思います。1st EPで感じてもらった新鮮さは保ちつつ、今回はさらに踏み込んだ感情表現を目指しました。

—— タイのバンド・Deptとのコラボ曲「piece of peace」は、どのような経緯で実現したのでしょうか? 初めてのコラボレーション相手が海外アーティストになったかと思いますが、海外アーティストとのコラボレーションは意図的に考えられていたのでしょうか?

ミョンソク:Deptとはタイで親しく交流していた仲でした。あるとき彼らのライブを観て、音楽が本当に素晴らしいと感じ、ぜひ一緒にやりたいと思ったんです。Deptはシンセサイザーの扱いがとても上手く、僕たちはロックのエネルギーを担っている。だからこそ、コラボしたときに大きなシナジーが生まれると感じました。そこで、その方向性に合いそうな楽曲をこちらから制作して送りました。海外アーティストとのコラボレーションも意図的に視野に入れていましたし、彼らと僕たちならではの「ひとかけらの平和」を形にしてみたいと思ったんです。

—— 『KIK』『LOW KIK』の両作品に共通して、どの楽曲にも野外フェスの大きな空間で鳴っている光景が自然と想像されるような広がりを感じました。サウンドメイクにおいて空間やライブ感を意識することはありますか?

ミンヒョク:やはりサウンドメイキングにおいて、ライブを意識しないわけにはいきません。曲によっては、特にライブでより良いエネルギーを発揮できるように制作したものもあります。みんなで曲を感じ、一緒に歌う光景を思い描きながら、野外フェスで鳴り響くことを願って作った楽曲も多いです。

—— これまでリリースされた楽曲はすべて3人で作詞を手掛けていらっしゃるようですね。歌詞はどのようなプロセスで制作されることが多いのでしょうか? また、テーマや言葉選びの役割分担などがあれば教えてください。

ウソク:一人が最初の草案を投げると、ほかのメンバーがそれを何度も手直しし、削ぎ落としていきます。テーマは、最初から大きな何かを決めておくことはあまりしません。そのとき僕たちが感じていることが、自然とテーマになっていきます。言葉選びでは、できるだけ率直な思いを残すようにしています。

   

スピードより密度を。KIKが目指す場所

—— アジアツアーの開催決定おめでとうございます。日本では東京と大阪、合わせて計3公演が予定されていますが、日本公演に対して特別な思いや期待はありますか?

ウソク:KIKとして初めて訪れる空間なので、期待が大きいです。言葉が違っても、サウンドはきっと通じ合えると信じています。

ミンヒョク:僕は個人的に日本で初めて公演することになりますが、バンド大国ともいえる場所でライブをお見せできることを本当に嬉しく思います。良いエネルギーが僕たちならではのサウンドで会場いっぱいに響き渡るよう、全力を尽くします。

ミョンソク:大阪公演は初めてなので楽しみです。しかもライブの日が自分の誕生日でもあるので、そのぶん意味深い公演になりそうです。

—— 今後の活動の中で、具体的に達成したい目標や、グループとして描いている最終的なビジョンがあればぜひ教えてください。

ウソク:継続して良い曲を届けられるチームでありたいと思っています。スピードよりも密度を残せるバンドです。

ミンヒョク:あらゆる国で長く愛され続ける、健やかなチームでありたいです。

ミョンソク:誰が聴いても良いと感じる名曲をたくさん生み出したいです。そして何より、自分たち自身が満足できる歩みを重ねていきたいです。楽しみにしていてください。

   

公演詳細

『KIK Asia Tour 2026 JAPAN』

【東京】
開催日時 :
2026年3月12日(木) 開場 17:00/開演 18:00
2026年3月13日(金) 開場 17:00/開演 18:00
会場 : ADRIFT
チケット:イープラス
※ 販売開始:2026年2月3日(火) 18:00~

【大阪】
開催日時 :
2026年3月15日(日) 開場 17:00/開演 18:00
会場 : PLUSWIN HALL OSAKA
チケット:イープラス
※ 販売開始:2026年2月3日(火) 19:00~

■ 公式サイト

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AKARI

AKARI

エディター|ライター

1994年生まれの自称、韓国音楽PR大使。インディペンデントな韓国のミュージシャンや業界人を中心にインタビューやコラムを執筆。「韓国の音楽をジャンルレスに届ける」をモットーに、韓国インディ音楽に特化したWEBマガジン「BUZZY ROOTS」の運営や、音楽・カルチャーメディアへの寄稿、広報、DJイベントへの出演、アーティストのアテンドなど、できることなら何でも形を問わず行なっています。プライベートでは、韓国人の夫と結婚し、二人の子どもを出産。子育てをしながら東京とソウルを行き来しています。

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