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SYNCHRONICITY出演直前、Dabdaが語る「希望」とは|INTERVIEW #74

韓国・ソウルを拠点に活動する4人組インディロックバンド、Dabda。繊細に変化していくアレンジと高い演奏強度を両立させたライブパフォーマンスで支持を集めてきた彼らは、マスロックをベースにしながらも、その枠組みにとどまらない表現を追求してきた。

2016年のデビューEP『Island of Each』以降、1stフルアルバム『But, All The Shining Things Are』(2020年)、柏倉隆史(toe)とのコラボレーション・シングル「Jungle Gym」(2021年)を経て、2023年にはEP『Yonder』をリリース。国内外のフェス出演やツアーを重ねながら、作品ごとにアプローチを更新し続けている。

2025年9月にはシングル「DDDD!」を発表し、BUZZY ROOTSでもインタビューを掲載。直線的なアプローチとパーカッシブな試みが印象的だった同曲に続き、今回新たにリリースされたのが「Dear Hope」だ。穏やかでありながら内省的な響きを持つこの楽曲は、現在の彼らのモードを反映するかたちで結実したものでもある。

初となるSYNCHRONICITY出演を控えた今、Dabdaはどのような地点に立っているのかを語ってもらうべく、メールインタビューを行った。新曲「Dear Hope」と、その先にあるアルバムへの視線を通して、彼らの現在地を紐解いていく。

取材・文:AKARI(BUZZY ROOTS)
取材協力:内畑美里(Balsin)

   

プロフィール:Dabda

  

◾️Dabda(ダブダ)
・김지애 キム・ジエ(Vo/Gt)
・박정웅 パク・ジョンウン(Gt)
・노거현 ノ・ゴヒョン(Ba)
・이승현 イ・スンヒョン(Dr)

◾️Dabda SNS Info
Bandcamp InstagramFacebookXYouTube

Q1.「Dear Hope」では、希望が単なるポジティブな概念ではなく、不安や焦燥と隣り合わせのものとして描かれている点が印象的でした。今のみなさんにとって「希望」とはなんでしょうか?

スンヒョン:僕にとって「希望」は、モチベーションのようなものだと思います。人として生きていると、どうしても疲れたりしんどくなったりする瞬間がありますが、「希望」があるからこそ、もう一度気を引き締めて前に進んでいける。すぐに消えてしまったり、掴めないように感じることもあるけれど、ふと通り過ぎる心地いい風にさえ意味を見出しながら、そうした瞬間に、あらためて「希望」を思い出すこともあります。

ジョンウン:「希望」という言葉を考えると、2022年の冬、疲れ切った一日の終わりに、大雪の中を歩いて帰ったときのあの途方に暮れるような感覚をよく思い出します。当時はただ息苦しくて漠然とした気持ちだとしか思っていませんでしたが、今振り返ると、むしろあのときこそが一番「希望」に近かったのかもしれないと思うようになりました。

そのときのイメージを思い出しながら、少し白く霞んだようなギターのトーンでこの曲を作り始めました。面白いことに、最初は「この霞がかった音でいこう」と思っていたはずなのに、曲の終盤に向かうにつれて、どこかに辿り着いたかのように音は次第にクリアになり、より近くに感じられるものになっていったんです。もしかすると僕は、「希望」が遠くにあるものではなく、すぐそばにあってほしいと願っていたのかもしれません。

ゴヒョン:僕はあまり感情の起伏が激しいタイプではないので、普段から「希望」について深く考えることは多くありません。ただ、今回の制作を通して感じたのは、希望とは「人」そのものだということです。Dabdaとして活動する中で出会ってきたミュージシャン仲間や、たくさんの人たち、そしてファンのみなさんこそが、自分たちが音楽を続けていくための希望なのだと思っています。

ジエ:曲の紹介にも書いたように、私は「希望」という言葉を聞くと、それに自然と付きまとう暗い感情のほうに先に意識が向いてしまうタイプでした。特に音楽を始めてからは、根拠のない希望を抱くことがどこか無邪気すぎるように感じられて、不必要なロマンを追いかけているようにも思えていたんです。その先に待っているであろう落胆を、どこかで予感していたからかもしれません。

おそらく私が歌詞を書き、歌う立場だからこそ、そうした感情がより前に出ていたのだと思います。でも、自分では気づけなかった「希望」の別の側面をメンバーが演奏を通して描き出してくれたことで、「Dear Hope」はようやく、私たちが知っている「希望」の多面的なあり方を、より立体的に掬い取れる作品になったと感じています。

***

Q2. 本作は、スケッチ段階から「希望」という明確なテーマをあらかじめ据えて制作された、と作品の紹介文で拝見しました。これまでは、制作の過程で意味やテーマを後付けする楽曲が多かったとのことですが、今回はあらかじめテーマを設定したことで、楽曲のアレンジや意思決定にどんな変化が生まれましたか?

スンヒョン:「Dear Hope」の初期デモは、かなり前から作り始めていました。当時を振り返ると、なかなか制作が進まず、無理に難しいテクニックを入れようとしたり、新しいものを探そうとしたことで、かえって行き詰まってしまっていたんです。そこで発想を切り替えて、「いつも通り、気楽に何か作ってみよう!」とジャムをしていたところ、当時のメンバーだったヨセフの最初のギターリフの雰囲気やベースラインから、どこか希望的なイメージを感じ取ることができました。それをきっかけに、デモのタイトルを「ヒマンイ(희망이、“希望”という意味の愛称)」として制作を進めました。

また、昨年toeの柏倉隆史さんと一緒に参加したドラムフェスティバルで、50人以上によるドラムの行進を目にしたのですが、それがとても印象に残っていて。そのときに感じた、希望に満ちたエネルギーを楽曲に落とし込みたいと思い、アウトロではドラムのレイヤーを幾重にも重ねています。

ジエ:明確なテーマを掲げて制作を始めると、それぞれの捉え方の違いが、よりはっきりと見えてくる気がします。自分にとっての「希望」はこういうものだけれど、他の人にとってはまったく異なるかたちをしているのだと、あらためて実感するんです。そのため、アレンジを進めていく中で、自分が想定していなかった方向に展開していくこともあり、ときにはそれが馴染まず、戸惑いや違和感を覚えることもありました。ただ、最終的に曲が完成してみると、そうしたプロセスがあったからこそ自分の視野が少し広がり、これまでの限定的だった捉え方から一歩外に出ることができたのだと感じています。

制作時の様子(画像提供:Electric Muse)

  

***

Q3. 先行シングル「DDDD!」では、漂流している主人公・Dの視点から、倦怠感や自己懐疑、そして前に進めないといった感覚が描かれていました。この「停滞」している状態は、みなさん自身を投影したストーリーだったのでしょうか? その感覚を楽曲として表現する際に、意識したポイントがあれば教えてください。

  

スンヒョン:アルバイトを辞めてから、「作業室 – 家 – 作業室 – 家」… と作業室と家を往復するだけの生活を長く続けてきました。そうしたルーティンの中で生まれる倦怠感は、かなり大きかったと思います。その一方で、ドラムのアレンジでは、その倦怠感をそのままなぞるのではなく、何とかして新しい感覚を持ち込みたいと考えました。普段よりも音数を減らし、より直線的なイメージを持ちながら編曲しています。パーカッションパートへの挑戦も、同じ意図から試みたものです。

ジエ:Dという存在は、ある意味で私の分身と言っていいほどよく似た人物です。私の挫折は、いつもDがいる場所からやってくるんです。あのときこうしていれば、ああしていれば…と、結局は自分がなれなかった姿ばかりを想像してしまい、そうなれなかった「今の自分」を低く見てしまう。だからこそ、自分と似たタイプの人に実際に出会うと、息が詰まるように感じることもあります。それでも、同じような人たちを避けたいわけではなくて、むしろ少し距離を保ちながら応援していたい。そんな気持ちも「DDDD!」には込められています。結局、もっと前に進もうと孤軍奮闘しているのが、今の私たちなんだと思います。

***

Q4. 「DDDD!」と「Dear Hope」は制作されたタイミングやプロセスも含めて、どのような関係性にある楽曲でしょうか? それぞれの楽曲が生まれた順序や背景、制作時のモードの違いなどがあれば、ぜひお伺いしたいです。

スンヒョン:「DDDD!」と「Dear Hope」は、ほぼ同時期に制作された楽曲です。「Dear Hope」を先に着手していたと記憶していますが、長いあいだ未完成のまま寝かせていました。僕たちはタイトルが決まる前、曲ごとにニックネームで呼ぶことがあるのですが、「DDDD!」は「トゥンタンイ(ドラムの“トゥンタン”という音から取った呼び名)」、「Dear Hope」は「ヒマンイ」と呼んでいました。

「トゥンタンイ」は、制作のためにジャムをしていたとき、ドラムのタムの音が「トゥンタン、トゥンタン」と響く感覚から付けた名前です。一方「ヒマンイ」は、先ほども話したように、ギターとベースのリフから穏やかでどこか希望的なイメージを感じ取って名付けました。

制作時のモードの違いで言うと、「DDDD!」は直線的な印象を強く意識し、「トゥンタンイ」というニックネームに引っ張られるようにパーカッションも入れてみました。「Dear Hope」は、ドラムラインをできるだけシンプルにしたいと考えていました。これまで自分のスキルを超えたノートを多く使ってきて、演奏に負担を感じることも多かったので、この曲ではもう少し自然体で演奏したかったんです。ただ、結果的には「Dear Hope」もまた、難しいフレーズが増えてしまいました……。

制作時の様子(画像提供:Electric Muse)

ジョンウン:Dabdaに加入して最初に「DDDD!」と「Dear Hope」のデモを聴いたとき、この2曲はギターのトーンをはっきり分ける必要があると感じました。 「DDDD!」が直線的でややエッジの立ったトーンを志向しているのに対して、「Dear Hope」はより複合的な質感と、流れていくようなトーンでアプローチしています。

また、「DDDD!」では歌詞そのものというよりもエネルギーにフォーカスしていたのに対し、「Dear Hope」では歌詞への意識がより強くなった点も大きな違いです。特に中盤のギターラインは、まるで線を描くようなイメージで表現したいと考えていました。

ゴヒョン:「DDDD!」は、明るく輪郭のはっきりしたポップミュージックを志向したミックスになっていますが、「Dear Hope」は、より共感性の高いポストロックやシューゲイズの質感を意識した仕上がりになっています。

「DDDD!」をリリースした昨年9月は、ちょうどアジアツアーの最中で、あの暑い気候にすごくよく合う音楽だと感じていました。一方「Dear Hope」は、韓国で春の訪れを感じる時期にリリースされていて、それもまた季節によく馴染んでいました。

ジエ:「DDDD!」の歌詞は、“why do we sail rainbow”という一行の問いから始まりました。たった一つのクエスチョンマークから出発した曲だったからこそ、歌詞を書き上げるまでにはかなり時間がかかりました。振り返ってみると、「なぜ私たちは夢を追うのか」という問い自体が、簡単に答えの出るものではないからこそ、書きながら何度も自分自身に問い返していたのだと思います。

一方で「Dear Hope」は、比較的スムーズに歌詞が生まれました。希望のイメージが、より鮮明に浮かび上がってきたからです。「私の愛は崩れ落ちそうな危うさで私を抱きしめる(내 사랑은 무너질 듯 위태로운 자세로 날 안아요)」「松明を手にした人々が闇を切り裂き、順番を待ちながら互いの顔を照らし合う(횃불을 든 사람들이 어둠을 갈라서서 차례를 기다리며 서로의 얼굴을 비추네)」といった場面は、私なりに見つめた「同時代を生きる私たち」のメタファーでもあります。

この2曲はいずれも「踏みとどまりながら生きている人たち」の物語です。

制作時の様子(画像提供:Electric Muse)

***

Q5. 「DDDD!」が先行シングル第一弾として公開され、「Dear Hope」がその次のステップとして提示されている中で、この2曲は2ndフルアルバム全体の中でどのような位置付けにあるのでしょうか? 2ndフルアルバムのヒントを、可能な範囲でお伺いできたらうれしいです。

スンヒョン:アルバム用に制作したデモは、1stアルバムやこれまでのEPに比べて、落ち着いたトーンの楽曲が多くなっています。最終的に収録曲が出揃ったときには、「DDDD!」的な方向性と「Dear Hope」的な方向性、その2つが共存するアルバムになるんじゃないかと思っています。

現時点では、どんな作品に仕上がるのか僕自身もまだはっきりとはわかっていません。冬のあいだに集中的に制作を進めてきましたが、これから春や夏に向かう中で、そうした季節の変化もデモに反映されていく気がします。

ゴヒョン:個人的には、より成熟したDabdaの音楽が収められていると感じています。これまでの作品が、明るさと同時に熱や不安定さを孕んだものだったとすれば、2ndアルバムに収録される楽曲は、少し異なる質感へと変化しつつあるように思います。

***

Q6. 『SYNCHRONICITY’26』への出演が決定しています。過去のインタビューでは、SYNCHRONICITYに遊びに行ったことがあるともおっしゃっていましたね。様々な国やステージでの公演を経て、みなさんの持つエネルギーを観客と共有する感覚もきっと変化してきたのだと想像していますが、意気込みや思い入れをぜひお聞かせください。

ジエ:私も昨年、SYNCHRONICITYに行きました。これだけ魅力的な会場があんなに近い距離に集まっていることに驚きましたし、好きなアーティストもたくさん出演していて、「来年もまた来たい」と思っていたんです。まさか自分たちが出演者として戻ってくることになるとは思ってもいませんでした。昨年は観客として純粋に楽しみましたが、今回はミュージシャンとして、その時間を全力で味わいたいです。ぜひ会場でお会いしましょう!

ジョンウン:SYNCHRONICITYは今回が初めての出演なので、とても楽しみにしています。いろんな国でライブを重ねる中で実感したのは、ライブというのはステージと客席が一緒に作り上げていくものだということです。言葉が通じなくても、音楽を通して自然にエネルギーをやり取りできる体験が、これからますます重要になっていくと感じています。これまでと変わらず、誠実に臨みたいと思います!

ゴヒョン:韓国にも「Zandari Festa」という、SYNCHRONICITYのような都市型フェスがあります。そこに参加して多くの人と出会う中で、ミュージシャンやその音楽に深く引き込まれていく感覚を何度も経験してきました。SYNCHRONICITYでも、同じように素晴らしい体験ができるのではないかと期待しています。たくさんの方と出会えるのを楽しみにしています。

スンヒョン:昨年、友達と一緒にSYNCHRONICITYに行ったとき、「いつかDabdaとして必ず出演したい!」と強く思いました。フェスが終わったその日に、アプリのおすすめアーティスト欄に自分たちの名前を書いたほどです。

会場のコンディションの良さや、新しく出会えるアーティストたち、そして自分が好きな日本のアーティストがオールスターチームのように集まるこのフェスに参加できることを、本当にうれしく思っています。欲張りすぎず、その瞬間を全力で楽しむこと。それが今回の目標です!

    

    

リリース情報

Dabda「Dear Hope」

  

Release Date:2026-3-24
Release Format:Digital Single
Label:Electric Muse

Track List
01. Dear Hope

配信リンクSpotify

   

公演詳細

『SYNCHRONICITY’26』

日時
2026年4月11日(土) openstart 13:00(時間予定)
2026年4月12日(日) openstart 13:00(時間予定)

会場
Spotify O-EAST / Spotify O-WEST / Spotify O-nest / duo MUSIC EXCHANGE / clubasia / LOFT9 Shibuya / SHIBUYA CLUB QUATTRO / Veats Shibuya / WWW / WWWX / TOKIO TOKYO / SHIBUYA FOWS 他

チケットチケットぴあ

料金(各ドリンク別)
先行・一般通し券:17,800円
先行・一般前売りチケット:9,800円

公式ウェブサイト
お問い合わせ:info@synchronicity.tv
主催:SYNCHRONICITY’26実行委員会


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AKARI

AKARI

BUZZY ROOTS 主宰

1994年生まれの自称、韓国音楽PR大使。インディペンデントな韓国のミュージシャンや業界人を中心にインタビューやコラムを執筆。「韓国の音楽をジャンルレスに届ける」をモットーに、韓国インディ音楽に特化したWEBマガジン「BUZZY ROOTS」の運営や、音楽・カルチャーメディアへの寄稿、広報、DJイベントへの出演、アーティストのアテンドなど、できることなら何でも形を問わず行なっています。プライベートでは、韓国人の夫と結婚し、二人の子どもを出産。子育てをしながら東京とソウルを行き来しています。

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