第23回韓国大衆音楽賞の授賞式、および受賞作品を振り返りつつ、審査委員による各部門の選評(全26部門)を全文翻訳でお届け。
「時代と共鳴する音楽の力」第23回韓国大衆音楽賞を振り返って
去る2月26日、「第23回韓国大衆音楽賞」が開催された。授賞式は「韓国の大衆音楽人たちの祝祭」という修飾語にふさわしく、数多くのアーティストが一堂に会して行われた。昨年2冠に輝いた Danpyunsun & The Moments Ensemble の開会祝賀公演で幕を開け、中盤には前年度3冠のイ・スンユンによるパフォーマンスも披露された。韓国大衆音楽賞の授賞式会場で祝賀公演が行われるのは、コロナウイルスのパンデミック以前である2019年以来、実に7年ぶりの光景だった。司会者・Nucksal のユーモアあふれる進行のもと、授賞式は3時間近くに及んだ。総合分野、ジャンル分野、特別分野を合わせて計26部門の受賞者が発表され、昨年この世を去った過去の受賞者や選定委員への哀悼の時間も設けられた。
受賞結果に関しては、何よりも総合分野に大きな注目が集まった。それぞれ異なるアプローチで2025年を輝かせたと評価される作品が並ぶ中、最高の音楽的栄誉とされる「今年のアルバム」は、CHUDAHYE CHAGIS の『SOSUMINJOK(少数民族)』が受賞した。韓国の伝統的な巫歌をヒップホップ、ダンスホール、ファンク、サイケデリック・ロックの文脈に落とし込んだ、自ら「サイケデリック・シャーマニック・ファンク」と称する音楽性で、韓国的でありながら新しい何かを創り出した点が高く評価されたのだろう。収録曲「Heosse!」は最優秀R&B・ソウル・ソング部門を受賞し、2冠を達成した。アルバムとしては総合部門のみでの受賞となったが、それはジャンルの垣根を越えてこそ、より高く評価すべきポイントが多かったためでもあるだろう。
イ・チャンヒョクは、前作を凌駕する音楽的成長を見せた『EROS』を通じて、人間の悲しみや悩み、愛など、自身の内面から芽生えたあらゆる思考を見事に音楽として表現したと評価された。同アルバムは最優秀ポップ・アルバムを受賞し、愛の価値を力説しながら時代に響くメッセージをゴスペルスタイルのコーラスと軽快なリズムのシンセポップで解き明かした収録曲 「Endangered Love」は、最優秀ポップ・ソングに続き、今年の歌賞まで受賞する快挙を成し遂げた。この結果は、彼が受賞の感想で語ったように「人々が愛の力を待ち望み、信じている証ではないだろうか」と思わせてくれる。
「今年の音楽人」部門は、インディーズ・アーティストとしては異例の旋風を巻き起こしている HANRORO が受賞した。あまりにも錚々たるアーティストが名を連ねるラインナップだったが、その中で HANRORO が受賞の栄誉を手にしたのは、傷つき、砕け散っていく若者たちに対して真の癒やしと連帯のメッセージを伝えようとする彼女の音楽が、同世代の胸に響き、もたらした成果が総合的に評価されたためだと言えるだろう。選定評でも言及されたように、メジャーとインディーズの境界線を越え、音楽を通じて導き出した連帯は、この時代のアーティストが手にするべき重要な成果であり、成就の一つとして捉えられているからだろう。
総合分野の3部門を含む計5部門にノミネートされ注目を集めていたウ・ヒジュンが、「今年の新人」と「最優秀オルタナティブ・ロック・ソング」部門を受賞した。ウ・ヒジュンは、個人的なストーリーを通じて同時代の現代人の生き方を省みさせる歌詞と、それを表現する荒削りで生々しい音楽表現が高く評価された。新人賞の場合、どれほど洗練されているかよりも、最初から自分だけの個性と確固たる世界観を示していたかという点が重要な評価基準となることも、主な受賞理由だろう。
今回の受賞結果からは、CHUDAHYE CHAGIS をはじめ、ジャンルの境界をまたぐ試みを成功裏に着地させた作品が多いことがわかる。エレクトロ・ハウスを基盤に多彩なジャンルを融合させ、複数のゲストを迎えて色彩を添えた KIRARA の『KIRARA』(最優秀エレクトロニック・アルバム)や、様々な時代とジャンルの韓国大衆音楽をサンプリングして韓国ヒップホップの「アンセム」を作り上げた Sik-K & Lil Moshpit の『K-FLIP+』(最優秀ラップ&ヒップホップ・アルバム/最優秀ラップ&ヒップホップ・ソング)といった作品がその代表格だ。
一方で、総合分野で受賞した HANRORO やイ・チャンヒョクの音楽がそうであるように、Shin In Ryu の『Shining Strike』(最優秀オルタナティブ・ロック・アルバム)など、時代と共鳴する感性を込めた作品も目を引く。さらに、同じく総合分野の受賞者であるウ・ヒジュンをはじめ、クォン・ナム(最優秀フォーク・アルバム/最優秀フォーク・ソング)、ユン・ダヘ(最優秀R&B・ソウル・アルバム)といった、極めてパーソナルな物語を詰め込んだアーティストたちの作品も、それぞれ異なるアプローチで同世代リスナーの心に響く音楽性が認められた。
そのほかにも、K-POPの境界を拡張し、グローバル音楽市場の中心で新たな拠点を宣言した JENNIE(最優秀K-POP・アルバム/最優秀K-POP・ソング)、ライブアルバムで受賞し「すぐにジャズクラブに戻るつもりだ」という躍動感あふれる感想を残した MALO(最優秀ジャズ・ボーカル・アルバム)、自然と共鳴する試みを込めた Gray by Silver(最優秀グローバル・コンテンポラリー・アルバム)、メタルとハードコア・パンクの豊かな遺産を詰め込んだ baan(最優秀ヘヴィネス・アルバム)など、受賞作の顔ぶれは韓国大衆音楽の多様性を代弁している。
一方で、それぞれ6部門と5部門にノミネートされ、今回の授賞式の主役になると思われていた Effie と NMIXX が1部門も受賞できなかったことには、多くのファンから惜しむ声が上がった。韓国大衆音楽賞の受賞作選定システムの特性上、ジャンル分科別の投票と総合投票が行われるため、票の分散や競合作品との兼ね合いによってこのような結果が生じることもある。しかし、Effie のように2つのジャンルで同時にノミネートされたり、NMIXX のように1つの部門に2作品をノミネートさせたりしたこと自体が、彼女たちが2025年の韓国大衆音楽を振り返る際に決して外すことのできない名前であることを明確に証明している。
比較的注目されにくい特別分野の受賞者についても、この機会にぜひ触れておきたい。「功労賞」は、1979年にデビューし、1980年代の韓国大衆音楽史において「韓国的ロック」の基盤を築き、ロック音楽を主流文化へと引き上げた伝説的なバンド・ソンゴルメに授与された。リーダーのペ・チョルスは1990年の解散以降、ラジオDJとして「ペ・チョルスの音楽キャンプ」を36年間にわたり進行中だが、2022年には再結成ライブを開催して話題を呼んだ。中心メンバーであるペ・チョルスとク・チャンモが共に、ユーモアたっぷりの受賞コメントを伝えた。比較的最近になって韓国の音楽に触れた読者であれば、絶対に聴いておくべきバンドとして推薦したい。
「選定委員会特別賞」は、CJ文化財団の「TUNE UP」に贈られた。「TUNE UP」は、2010年から才能あるインディーズ音楽家を発掘してきたプログラムである。彼らは単なる新人の発掘にとどまらず、アルバム制作や公演、プロモーションまでを支援することで、多くのアーティストが大衆に知られる環境を構築した。今やシーンの主軸となった SE SO NEON、Car, the garden、ADOY、wave to earth、HANRORO などが、「TUNE UP」プログラムを通じて名を広めた代表的なアーティストたちだ。「韓国大衆音楽賞」は、韓国大衆音楽シーンの多様性の成長に貢献した同プログラムの功労に対し、感謝の意を表したものと言える。
毎年韓国では、ノミネートのリストや受賞結果が発表されると、音楽ファンの間で結果を巡って様々な議論が交わされるのが常である。時には厳しい批判が飛び交うこともある。私自身もいち選定委員であるが、実際のところ、私個人のリストと韓国大衆音楽賞の選定結果は同一ではない。だからこそ、そうした意見が出るのも理解できる。むしろ、こうした授賞式を機に、人々が昨年の良かった音楽を改めて振り返り、互いの意見を交わし合う場が設けられることこそが、韓国大衆音楽賞が担っている最大の役割ではないかとも考えている。
仕事の都合により、今年は授賞式会場に直接足を運べなかったが、昨年初めて授賞式の現場を訪れた際に感じたものは鮮明に記憶している。互いに全く面識がなかったであろう間柄でも、創作に対する熱意と音楽への愛情に満ちた人々が同じ空間に共にいるというだけで、会場にはエネルギーが溢れていた。互いの音楽的成果を認め合い、感謝とインスピレーションを交わす姿、彼らの受賞コメントから、改めてこの授賞式の存在意義を実感した。依然として課題が残る授賞式ではあろうが、その中でも引き続き、より良い音楽を紹介する存在として確固たる歩みを続けてほしいと願うのも、あの日の強烈な記憶があるからだ。
本稿は授賞式の結果を中心とした内容であるため、主要な受賞作を取り上げることになったが、他のすべての選定委員と同様に、私もまた「韓国大衆音楽賞」にノミネートされたすべての作品が受賞作に勝るとも劣らない素晴らしい作品であり、もう一度多くの人々に紹介され、光が当たることを強く願っている。その想いを、最後に改めてここに記しておきたい。
選評|総合分野
今年のアルバム|CHUDAHYE CHAGIS(チュダヘ・チャジス)『SOSUMINJOK』
추다혜차지스『소수민족』
韓国大衆音楽賞とこの時代は、なぜいまだに「アルバム」という形式をあえて呼ぶのか。『SOSUMINJOK(直訳:少数民族)』というタイトルが示す通り、いまやもしかすると少数の美学、少数の志向となりつつあるかもしれないその価値をめぐって、本作は独自の答えを打ち出す。
前作となる1stフルアルバム『Underneath the Dansang Tree Tonight(原題:오늘밤 당산나무 아래서/直訳:今夜 堂山の木の下で)』(★1)が証明したように、『SOSUMINJOK』もやはり、40分あまりのランニングタイムの中で「巫歌(★2)」という馴染みの薄い音楽、芸術様式を伝統の装飾ではなく、今日の言語とスタイルによって蘇らせた。前作の構成にトランペットとサックスが追加された中盤トラックの編成は、リズムの骨格を広げつつも、チュダヘ・チャジスだけが提示できる個性としてボーカルの魅力と奇妙なムードをより鮮明に照らす。また、ライブ性を重視したレコーディングによって精緻な密度とエネルギッシュな現場性が均衡を保っている。
一曲目の「Jakdu(原題:작두/直訳:作刀)」(★3)が接神の構造を呼び起こす序文だとすれば、「Heosse! (原題:허쎄)」(★4)は分厚いファンキーなベースと鋭いギターリフ、オールド・ヒップホップのリズムの上に済州巫歌の表現法を配置し、ボーカル・パートの緊張を現代のグルーヴへと置き換えたダンストラックだ。「Bugi(原題:부귀덩덩)」はダブやルーツ・レゲエのリズム感、管楽器のサウンドに、伝統的な祝願の機能やポンキ(★5)を重ね合わせ、それを味わい深い韓民族特有の興へと再構築する。
韓国大衆音楽賞がいくつかの定型化されたジャンル部門に沿って候補を選定し授賞するのは、あくまで必要と便宜によることにすぎない。優れた音楽と芸術はジャンルと境界を超越するということを、本作はあらためて想起させる。『少数民族』がメタファーとして示す「少数」とは、分類を拒む存在のあり方だ。明確な個性を、不透明なアイデンティティの音楽性とプロダクションによって現在の視点で捉え直したこの設計は、韓国音楽の外縁を越え、グローバルな大衆音楽の文法そのものを拡張した快挙であり、同時代の韓国大衆音楽が到達した誇るべき基準である。
——選定委員 チョン・ビョンウク(大衆音楽評論家)
★1 堂山の木(당산나무):村の守護神が宿ると信じられている神木。
★2 巫歌(무가):韓国の巫俗(シャーマニズム)儀礼・クッ(굿)において、巫女(ムダン)が神霊に向かって歌う歌。
★3 作刀(작두/チャクドゥ):本来は藁などを切る大型の刃物。韓国の巫俗儀礼「クッ」においては、巫女(ムダン)が刃の上に立つ「作刀乗り(작두타기)」で用いられ、神が降りた状態を示す象徴的な道具。
★4 ホッセ(허쎄):済州島の巫歌である「プダシ(푸다시)」の歌詞とリズムを引用した曲。「プダシ」とは「プダッコリ(푸닥거리)」の済州島の方言で、家の中の雑鬼を追い払う浄化儀式を意味する。「ホッセ」はプダシを行う際の掛け声の一種。
★5 ポンキ(뽕기):韓国のトロットに由来する、哀愁や情感を帯びた独特の節回しや情緒を指す言葉。
今年の歌|LEE CHANHYUK(イ・チャンヒョク)「Endangered Love」
이찬혁「멸종위기사랑」
「天才」。私たちは常に彼をそう呼んできた。しかしその称号は、王冠の重みのように絶えず自らを証明し続けなければならない宿題でもあった。それでも、その負担の中で彼が最後まで手放さなかったものがある。彼の創作には、常に「愛」という言葉が据えられている。彼の楽曲における愛は、軽やかでロマンティックな感情の噴出ではなく、もっとも異質な方法で相手を観察し、距離を保ちながら果てしなく問いを投げかける探究に近い。彼にとって愛はヒット曲のためのコンセプトではなく、一つの叙事であり、思考の構造なのだ。
2nd フルアルバム『EROS』は、彼がどれほど執拗に愛を探究してきたかを示す成果であり、止むことのない問いと省察の集積である。リード曲「Endangered Love(原題:멸종위기사랑/直訳:絶滅危機の愛)」は、人間の不完全な愛をより叙情的に紐解いた楽曲で、喪失と連帯のメッセージを濃密に込めた天才的な秀作だ。彼はこの曲を通して、自身に被せられた重みを踏みしめながら、あらためて自らの立ち位置を証明する。かつてないほど愛が速く消え去っていく時代。不安と連帯を捉えた彼のメッセージは「今年の歌」となり、人々の心の奥深くへと染み込んだ。
——選定委員 チョ・ヘリム(大衆音楽評論家、音楽コンテンツ企画者)
今年のミュージシャン|HANRORO(ハンロロ)
한로로
私たちはしばしば青春を金色のレトリックで装飾しようとするが、ハンロロの歌は、その華やかな表層の下に崩れ落ちた家の残骸を直視するリアリストのまなざしから出発する。
インディとメジャーのあいだの架け橋が断たれてしまったこの孤立の時代に彼女が築き上げてきた軌跡は、絶滅したと思われていた同世代の涙を復元する切実な「補修工事」だ。崩れた廃墟の上でもなお、最後まで互いを離さないという倫理的態度は、盲目的な希望ではなく、傷の深さを知る者だけが刻むことのできる成熟した楽観の落款(★1)である。
ゆえに「ハンロロ」という現象は、単なるスターの登場を超え、断片化した個人を「私たち」という水平的な連帯へと結び直す新たな道(路)の幕開けとなる。既成世代(★2)の文法では翻訳されないこの熱い抱擁は、やがて私たちの時代が目撃することになる巨大なロックスターの必然的な予告編と呼んでも差し支えない。
★1「楽観(낙관)」と「落款(낙관)」の同音異義を重ねた表現。
★2 既成世代(기성세대):社会で既に安定した地位を確立し、現在を主導する年上の世代。若者世代(MZ世代など)との対比で使われることが多い。
——選定委員 イ・ジェフン(NEWSIS 記者)
今年の新人|Woo Huijun(ウ・ヒジュン)
우희준
ウ・ヒジュンの音楽でまず目を引くのは「天然」だ。童謡を歌うかのように天真爛漫な唱法、やや深遠な歌詞を表出するその自然体なあり方が理由だ。
しかし、ウ・ヒジュンの「天然」はそこにとどまらない。彼女が2025年を通して発表した楽曲では、自らの視線で世界を観照するかのように歌いながら、深い洞察と思考力が滲む歌詞は自然の摂理を扱うかのように哲学的だ。さらに、「人生においてどうすることもできないもの」への吐露が隙間なく刻み込まれている点において、ウ・ヒジュンは「天然」という言葉の多義性をすべて網羅している。内容の多面性と同様に、サウンドの様相もまた多彩で独特だ。整然としながらもどこか粗削りなローファイの質感、オルタナティブ・ロックを基盤にフォークトロニカにまで広がる拡張性、インストゥルメンタル・トラックを含む構成から垣間見れる大胆さがその例だ。
その中でも最も際立つのは、作品全体を通して生の印象を伝えるウ・ヒジュンの力量そのものである。エレキギターを強調しつつアナログの感性を漂わせる音楽から連想されるアーティストは少なくない。しかし、容易ではない人生の重みをはつらつとした軽やかさへと転換し、その複合性をバランスよく編み上げる力は強烈であり、ウ・ヒジュンの音楽の明確な独創性が小心に響くのだ。
——選定委員 イ・アリム(ウェブマガジン「音楽趣向Y(음악취향Y)」ライター)
選評|ジャンル分野
最優秀ロック・アルバム|Wah Wah Wah, Noridogam『UBUBU』
※3月12日(木) 公開予定
最優秀ロック・ソング|イ・スンユン「PunKanon」
※3月12日(木) 公開予定
最優秀オルタナティブ・ロック・アルバム|Shin In Ryu『Shining Strike』
※3月12日(木) 公開予定
最優秀オルタナティブ・ロック・ソング|ウ・ヒジュン「spacious house」
※3月12日(木) 公開予定
最優秀ヘヴィネス・アルバム:baan『neumann』
※3月12日(木) 公開予定

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