韓国(Korea)のオルタナティヴ(Alternative)アーティストたちをサポートするP-VINEの新シリーズ「K-ALT」が始動した。その記念すべき第一弾として登場したのが、R&Bシンガー Jiselle(ジゼル)。2022年に発表をした自身初のEP『Therapy Session』に新たに数曲を追加した『Therapy Session Deluxe』がフィジカル(CD/LP)でリリースされることとなった。
Jiselleは小学校高学年の2年間をアトランタで、大学の4年間を日本で過ごした経験があり、優れた国際感覚を持った逸材。韓国語、日本語、英語を駆使した作詞、作曲とそのマルチな才能を武器に2019年にデビュー。これまでに韓国を代表するラッパーであるBewhY、2023年にWWWXで来日公演を成功させたpH-1など、数多くの名だたるアーティストとの共演を果たしている。
初のフィジカル化となる今作には、Jay Parkが立ち上げた韓国最大級のヒップホップレーベル〈H1GHR MUSIC〉に所属するBIG Naughty、Spotifyのリスナーが100万人を超え「2022年上半期最高のK-POP」に選出されたGEMINI、Apple Music Korea R&B / Soulアルバム・チャート1位、総合チャート3位を獲得した経歴のあるoceanfromtheblueが客演として参加。さらに今回、韓国での練習生経験を活かし現在国内外で活躍をする日本人アーティストのNOAが参加する新曲「Bad Time (feat. NOA)」が収録されている。
BUZZY ROOTSでは、Jiselleのインタビューをお届け。彼女のこれまでの歩みや音楽にかける想い、そして『Therapy Session Deluxe』の制作秘話や魅力について訊いた。
ずっと音楽に夢中で生きてきた
ー こんにちは。簡単に自己紹介をお願いします。
こんにちは、R&BシンガーソングライターのJiselleです。よろしくお願いします。
ー Jiselleさんの経歴を拝見したところ、福岡で4年間大学に通っていたそうですが、どういった理由で大学期間を日本で過ごされていたのでしょうか?日本での生活はどうでしたか?
最初は日本語を学びたいという気持ちも大きかったですし、私は人生において経験を大事にしたいと考えていて、新しい場所で学校に通い、いろんな国の友達を作り、特別な経験をしたいという強い思いもありました。私が通っていた立命館アジア太平洋大学(APU)は国際的な大学でさまざまな国から学生たちが集まっており、望んでいたような国際交流ができました。日本語も今はだいぶ忘れてしまいましたが、学校に通っているうちにかなり上達しました。
ー その後、経営大学院で修士号を取得し、音楽関連会社での社会人経験を経て、シンガーになったとお聞きしました。音楽の道に進もうと思ったきっかけを教えてください。
修士課程を終え、博士課程に入る前に少し休んでみたいという気持ちもありましたし、自分のマーケティングという専門を生かして仕事をしてみたくもなりました。そこで、プロデューサーマネジメント会社に就職し、2年ほど働くことになりました。その中で、プロデューサーのみなさんがどうやって曲を作るのか間近で見ることになったのですが、私はずっと音楽に夢中で生きてきたので、作曲に対して強い関心を持つようになったんです。そこで、自費で機材を買い揃え、社長から夜中にスタジオを使ってもいいと許可をもらい、徹夜で独学しました。そこから、一人でアルバムをリリースしたり、クルーも作ったりと、いろんな経験に繋がっていきましたね。しばらくして私のデモを聴いたレーベル(Million Market)から連絡があり、アーティストとして最初の契約を結ぶことになりました。
ー 音楽に限らず何か本気でやりたいことを見つけても、いろんなものが邪魔をして、自分の進路を大きく変えるというのは難しい人も多いのではないかと思います。Jiselleさんは、音楽の道に進みたいと思い立ってから、具体的にどういったプロセスでデビューを実現させていったのでしょうか?
実は、音楽は私の人生とは切っても切れないものでした。小学生の頃はピアノ、フルートを演奏しながらクラシック音楽に慣れ親しみ、アメリカに住んでいた時にはバンドに所属していたこともありました。 両親はクラシック音楽以外の大衆音楽には大反対で、当時は将来の夢として考えられなかったのだと思います。
その後、私が学位を取得し、専門的に仕事を始めてから、自分が本当にやりたいことはなにかを考え、動きはじめました。そうこうするうちに、良い知らせがやってきて、レーベルと出会ってデビューができる状況になり、両親も認めてくれました。今思えばものすごく勇気のいることでしたが、当時は音楽が好きすぎて、諦めるということすら考えられませんでした。
ー歌唱や作曲の技術など、音楽についてはどのように勉強されたのでしょうか?
音楽はもともと好きで、歌うことも好きだったのですが、作曲は初めてだったんです。作曲に関わることはすべて独学で学びました。DAWを買って、その使い方に慣れるところから応用させるところまでもっていくには並々ならぬ努力が必要でしたが、YouTubeで学んだり、周りのプロデューサーの方々からアドバイスをもらったりして、試行錯誤を繰り返しました。慣れるまでに時間はかかりましたが、一番楽しかった時期だったと思います。
人との会話がインスピレーションの源泉
ー普段、曲のインスピレーションはどこから得ることが多いですか?
ほとんどが「会話」から来ています。 映画を見たり、旅行に行ったり、本を読んだりしてインスピレーションを得る人もいると思いますが、私は現実的で誰もが共感できるテーマを歌詞にするのが好きなので、人との交流が一番大事だと思っています。 別れに関する話ひとつとっても、友人と会話をすることで題材がたくさん出てきますよね。
ーいつもどんなことを意識して曲を作っていますか。また、これまで生み出してきた楽曲のどういった点にご自身のオリジナリティーを感じますか?
意識していることは曲によってさまざまですが、いかにメッセージを伝えられるかにこだわっています。 メッセージを上手く伝えるにはいろんな工夫が必要で、適切なメロディー、歌詞、そしてハーモニー、パッドなど、いろんな要素が適切に合わさることではじめて、誰が聞いても私が伝えたいメッセージが正確に伝わるのだと思います。 ハーモニーラインとメロディーの構成に自分のオリジナリティーを感じています。
ーChancellor、pH-1、CHANGMO、PENOMECO、BIG Naughty、GEMINIなど、これまでたくさんのアーティストとコラボを行ってきたと思いますが、どういった経緯で他のアーティストと接点を持ち、制作を行うことが多いですか?
人づてにお願いするケースもありますが、ほとんどの場合はトラックのスケッチ段階で「この人だ!」と思い浮かんだアーティストに思い切って連絡してみています。 最近はインスタグラムのDMでも連絡できるので、とにかく一度やってみるんです。これまでは幸いなことに私の頭の中のイメージとインスピレーションがうまく伝わったようで、結果として皆さん快く引き受けてくださっています。
『Therapy Session Deluxe』について
ー『Therapy Session Deluxe』は、自身初EP『Therapy Session』に過去のシングル数曲、日本人アーティスト・NOAさんとの新曲を追加したフィジカル版とのことですが、Jiselleさんにとってどういう存在のアルバムになりましたか?
今回のアルバムは、私にとって特別なアルバムです。 まず、日本で初めてリリースすること自体大きな意味があり、NOAと協力して作った新曲を追加できたことで、さらにスペシャルなものとなりました。 6月に日本に行ってサイン会やインストアライブも行いましたが、とても楽しく幸せでした。
ー『Therapy Session Deluxe』の収録曲は、どのような基準で選定しましたか?
まず、私が2022年にリリースした4曲入りのEP『Therapy Session』をフィジカルアルバムとして初リリースすることが決まったのですが、ここに『Therapy Session』以降にリリースしたシングルを追加しました。 人によってはアルバムとシングルを分けて聴くこともあると思いますが、私の音楽的な色やムードがどのように繋がっているか、どの順番で聴いてほしいかなどを考慮して選びました。
ー今回のアルバムのハイライトとも言えるのが、NOAさんとのコラボ新曲「Bad Time (feat. NOA)」ではないでしょうか。コラボに至った経緯を教えてください。
今回もトラックのスケッチをしながら、NOAを思い浮かべました。NOAはもともとプロデューサーを通して知っていて、実際に日本に遊びに行った時に日本のプロデューサーのSunny Boyさんが直接会えるように紹介してくれて、よい関係を築いてきました。 そんな中、「Bad Time」を制作するタイミングで、NOAの声が入ると曲にダイナミクスが生まれるのではないかと思い連絡してみることにしました。 幸いにも彼がものすごく気に入ってくれて、今回のコラボレーションに至りました。
ーNOAさんとの作曲のプロセスや印象的なエピソードについて教えてください。
NOAは韓国語が本当に上手で。「Bad Time」は歌詞が韓国語で構成された曲ということで、韓国語を想定して作曲してくれていたのですが、私は個人的に日本語の発音や歌がとても好きで、日本語の歌詞が入るとさらに魅力的になると思ったので、NOAに日本語の歌詞もお願いすることにしました。プレコーラスに入った日本語がとても美しく聞こえるように作ってくれて、この曲の中で一番好きな部分です。
ー先日、タワーレコード渋谷にてインストアライブが開催されました。日本での初ライブはいかがでしたか?
とても幸せでした。日本での活動は初めてでとても緊張したのですが、皆さんの前に立った途端、ステージを降りるのがイヤになってしまいました。ファンの皆さんがたくさんの声援や手書きのお手紙、プレゼントを送ってくださり、とても特別な思い出になりました。
目標は海外での活動に力を入れること
ー 音楽活動におけるバケットリストを3つ挙げるとしたら?
一つ目はアメリカツアー、二つ目は日本で日本語の曲をリリースすること。そして、三つ目はもっといろんな国で活動することですね。 目標はたくさんあるのですが、今の短期的な目標としては、海外での活動に力を入れたいと思っています。
ーまた日本に来ていただけますか?
ぜひ行きたいです!!私にとって第二の故郷のような日本です。大好きな日本。『Therapy Session Deluxe』のLPがリリースされるタイミングが9月なので、その時にまたイベントをできるのではないかと期待しています:)
リリース情報
Jiselle『Therapy Session Deluxe』
アーティスト:Jiselle / ジゼル
タイトル:Therapy Session Deluxe / セラピー・セッション・デラックス
フォーマット:CD / LP (初回生産限定盤/クリアパープルヴァイナル仕様)
発売日:CD 2024.5.22 / LP 2024.9.18
品番:CD PCD-25393 / LP PLP-7435CP
定価:CD ¥2,750(税抜¥2,500) / LP ¥4,950(税抜¥4,500)
レーベル:P-VINE
【Track List】
1. Enemy (feat. GEMINI)
2. Therapy (feat. MRSHLL)
3. Butterfly (feat. oceanfromtheblue)
4. Bad Time (feat. NOA)
5. Way U Are (feat. BIG Naughty)
6. Ready 2 Go
7. Grown-up Talk
8. Steamy Hot