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新しいことに挑戦するすべての人へ。韓国のインディバンドSURL、待望の1stフルアルバム『of us』インタビュー|INTERVIEW #34

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新しいことに挑戦するすべての人へ。韓国のインディバンドSURL、待望の1stフルアルバム『of us』インタビュー|INTERVIEW #34

韓国のインディロックバンド、SURL(ソル)のファースト・フルアルバム『of us』が2022年10月25日にリリースされた。

ああ、SURLが帰ってきた!

待望の初フルアルバムを一周し終わった時の、心の中の第一声だ。サウンド的な新しさや実験を感じる部分ももちろんあったが、そんなハングリー精神も含めて、2018年のデビュー当時から変わらない「SURLらしさ」を再確認できた作品だった。

SURLは、ブリティッシュロック、ブルースをベースに多様なジャンルを横断しながら独自のスタイルで音楽を届ける4人組バンド。デビュー直後から「新韓カードルーキープロジェクト」や「EBS今年のハロールーキーwith KOCCA」など、韓国国内で数々の賞を受賞し、韓国バンドシーンのルーキーとして注目を集めてきた。海外公演も積極的に行う中、2019年11月に初来日。彼らが敬愛するミツメとの2マンライブを大盛況で終えた。

その後、コロナ禍に突入してもその歩みを止めることはなく、定期的なシングルのリリースに加えて、Jay Park(ジェイ・パーク)、Hash Swan(ハッシュスワン)といったK-HIPHOP界の人気アーティストとのコラボやドラマOSTへの参加、Mnetの最新バンドサバイバル番組『Great Seoul Invasion』への出場など、思いのままに次々とチャレンジを重ね、着実に経験値を積み上げてきた。そしてついに、満を持して念願のファースト・フルアルバムをリリース、というわけである。

SURLは、自らを「誰もが共感できるような話を音楽を通して聴かせる」バンドだと話す。そんな彼らが語るのは、明るく美しいものの影に隠れた真実。Instagramのストーリーズに流れてくるようなキラキラした青春の裏に隠れた不安、孤独、不快感。それらを明確な歌詞や輪郭のはっきりしたサウンドで表現するのではなく、薄くて繊細な層を丁寧に塗り重ねながら、寡黙でダイナミックな風景画を描いていく。そこには、決して聴く者に価値観を押し付けない優しさと包容力があるし、リスナーは構えることなく、自分のペースで彼らの語るストーリーを味わうことができる。

今回のフルアルバムでも、SURLは「裏側の真実」を紐解いていく。

ダブルタイトル曲の一つである「Every Day」は、SURL特有の叙情的で空虚な演奏が際立つナンバー。叶わなかった夢や過去の自分にさよならを告げ、新たな道を進もうとする全ての人に勇気を与える作品だ。もう一つのタイトル曲「WHAT TIME IS IT NOW?」は、急速に流れる時代のアンバランスさについて語った曲で、混沌とした日々に息苦しさを感じる現代人に共感を与える。

他にも、今年4月にアルバムプレビューコンサート「preview of us」で観客に大きな余韻を与えた「Fall」や、10月にソウル市内で行われたゲリラライブを通じて初めて披露した「Rope」をはじめ、「Walking In Dream」、「Dongsan」、「Around」など、計10トラックが収録されている。

今回は、そんな渾身のフルアルバム『of us』をリリースしたばかりのSURLのメールインタビューをお届けする。ぜひ、実際に音源を聴きながら読み進めてもらえたら幸いだ。

©︎MPMG MUSIC

ライブの大切さを実感した自粛期間

ーここ3年ほど、新型コロナウイルスの影響もあり、思い通りに活動できないもどかしい日々が続いていたと思います。そんな苦しい状況の中でも、できることを見つけては一歩一歩前進するみなさんの姿がとても印象的でした。コロナ禍の3年間を振り返ってみて、いかがですか?

ソル・ホスン(Gt/Vo):新型コロナウイルスが全世界で猛威を振るう中、もちろん韓国でも、非常に多くの変化がありました。たくさんのオフラインイベントが中止になり、代わりにオンラインで行うことになりました。仮に観客ありの状態でライブできたとしても、声出しできず、座って拍手することしかできない状態でした。

でも、そんな状況の中でもライブができたこと自体には、とても感謝しています。活動が全くできなかったとしたら、今に至るまでの結果はまた大きく違っていたと思います。コロナ禍でも楽曲のリリースやOST参加など、さまざまな活動を続けてきましたが、実はその裏でフルアルバムの制作を行っていたんです。

イ・ハンビン(Ba):コロナの影響で辛い時間を過ごしていました。ライブをするにしても対面で行うことができず、いつもマスクを着用し、座ってライブを行ったので、物足りなさもありました。でも、最近はスタンディング形式も可能になり、ファンのみんなと一緒に歌うことや声出しもOKになって、再びライブの楽しさを感じているところです。深く印象に残っているのは、Mnetの新バンドサバイバル番組『Great Seoul Invasion』に参加し、楽曲「NO JAM(Feat. jerd, Q the trumpet, HAH, Gwak Jinseok, Kim Minsu, Lafic)」を制作したことです。いろんなアーティストの方々と一緒にステージに上がったことが僕たちにとって新しい経験で、記憶に残っています。

オ・ミョンソク(Dr):コロナのせいで多くの活動が制限され、大変な部分もありました。でも同時に、どれだけライブの場が大切なのかを改めて気づかされた、心苦しくも大切な時間だったと思っています。

キム・ドヨン(Gt):パンデミックが起きて最初の1年は、僕にとってすごく必要な休息期間でした。でも、それが3年続くとさすがに辛かったです。それでもオンライン公演という新しい経験ができたのは、新鮮で面白かったです。

ー そんな中、ファースト・フルアルバム『of us』のリリースに向けて準備されてきたということですが、制作開始からリリースまで、どれくらいの期間がかかりましたか? 

ホスン(Gt/Vo):リリースまでの準備期間は、2年ほどでした。実は、今年の春から夏の間に発売しようと思っていたのですが、『Great Seoul Invasion』に参加することになり、結局、放送終了後の10月にリリースすることになりました。リリース時期が遅れ、むしろよかったと思っています。すでにコロナによる規制もほとんどなくなり、活動も以前より自由にできるようになったタイミングだったので。

多様なサウンドを有機的に取り入れ
既存の枠を壊す

©︎MPMG MUSIC

ー『of us』を聴いてみると、ピアノやストリングスの音を取り入れた「Every Day」、アコースティックな「You’re Fire」など、これまでの楽曲ではあまり聴こえてこなかった新しいSURLの音色に出会うことができた気がします。アルバムを作る上で、普段とやり方を変えてみたところはありました?

ホスン(Gt/Vo):僕たちの初のフルアルバムにふさわしく、SURLの色をありのままに見せつつも、以前とは違う成長した姿を見せたくて。それで、曲の構成やサウンドそのものに新しい試みをたくさん取り入れてみました。歌詞も、後ろではなく前を見つめる感じで書いています。

ハンビン(Ba):アルバムのトラックリストを決める時、サウンドが荒々しく強い、特色のあるトラックをたくさん入れたかったんです。ただ、そうすると、聴いている人たちが疲れてしまう気がしたので、「You’re Fire」のようなアコースティックのトラックを入れることにしました。

「Every Day」に関しては、サウンド面により工夫を凝らし、美しい雰囲気を出したかったので、ストリングスとピアノを加えてみました。いざ作業してみると、僕たちの元々のサウンドとは違って聴こえてリストから外したくなったのですが、アルバム全体のバランスを見て、最終的に入れるのが良いと判断しました。

ミョンソク(Dr):音楽活動を始めてすでに4-5年目ですが、その間に各メンバーの技量が上がったりして、単純なバンドサウンド以外にもう少し多彩なサウンドを取り入れようと、たくさんチャレンジしてきました。その成果が、今回のアルバムで上手く現れたように思います。

ドヨン(Gt):これまでリリースした音源は、バンドの「和」を重視して曲を作っていました。でも、今回のフルアルバムでは、バンドサウンドの上により多様なサウンドを有機的に入れていくことに重きを置きました。だから、これまでの楽曲と少し違って感じるのかもしれません。

ー歌詞やサウンドにおいて、現実や社会に立ち向かうパワフルさや前衛的な感じをこれまでの作品と比べてより強く感じた気もしました。

ホスン(Gt/Vo):「既存の枠を壊そう」という考えをもって制作しました。これまでの作品も良かったのですが、以前と似たような結果が出てきてはダメな気がして。曲一つ一つの雰囲気をもう少し最大化してみたらいいような気がしました。ライブの場だけでなく、曲そのもので圧倒したかったんです。

ハンビン(Ba):現実や社会を意識したというよりは、アルバムのテーマの話をする時にただ単に僕たちの話をもっと取り入れてみようという趣旨でした。自然と出てきた僕たちのストーリーです。

ミョンソク(Dr):僕たちが、もともと少し現実に対して悲観的なところがあるからかもしれないです。

ドヨン(Gt):何かに立ち向かうことを意図したのではなく、ただ僕たちの厭世的な気質が反映されたような気がします。

新しいことに挑戦するすべての人に届けたい

©︎MPMG MUSIC

ーアルバムのタイトルを『of us』とした理由はなんですか?

ホスン(Gt/Vo):初のフルアルバムにふさわしくなるよう、SURLがどんなチームなのかを表現したくて、これまでにリリースした作品よりももっと僕たちが中心となるようなストーリーを書いてみよう、という話になりました。そうなった時に、簡潔かつ正確にその意図を表現するのが良さそうだったので、『of us』に決まりました。

ータイトル曲「WHAT TIME IS IT NOW?」では、遅刻するメンバーに向けてギターのドヨンさんが叫んだ言葉「何時だ?」をきっかけに作られたそうですね。

ホスン(Gt/Vo):どんな曲を書こうか悩んでいた時、緊迫感のある曲を作ってみたら良いのでは、という話が出ました。緊迫した状況と言えば何があるかな?と話していると、メンバーが遅刻した時にかなりハラハラしたよね、という話になり、その時の様子を曲にすることにしました。

ードヨンさんの一言によって、メンバー同士で言い合いになったりはしませんでしたか?

ホスン(Gt/Vo):普段、僕たちはこのような状況で喧嘩することはなく、一方的に怒られ、怒られる側はそれを受け止めます。今回の場合は、ドヨンに怒られたんです。

普通は、怒られた時に自分の落ち度を認めるのは認めるけど、それでもなんとか言い逃れをしようとするじゃないですか。例えば、「家を出たけどものを持ってくるのを忘れ、取りに帰ったから遅れた」とか「道がすごく混んでいて遅れた」とか。そんな風に言い訳をすることになり、時間通りにきた人は待ちながらだんだんイライラしてきて、遅刻した人が到着した途端になぜこんなに遅れたのかと問いただす。こうしたストーリーをメンバーで考えているうちに歌詞を思いつき、サウンドも浮かんできて「WHAT TIME IS IT NOW?」が完成しました。もう遅刻はしません。

ー「Walking In Dream」では、曲中盤のギターリフやアウトロの音がユニークで、展開が面白いなと思いました。

ホスン(Gt/Vo):「Walking In Dream」は、僕が一時期よく見ていた夢を曲に込めています。中盤部分(3:00〜)は、夢の中に深く吸い込まれていき、そこで混乱する様子や、夢の中で起きたことが目の前で素早く繰り返されて過ぎ去る様子を表現しようとしました。終盤部分(4:50〜)は、夢からハッと目覚めた感じを表現しました。夢から覚めると、しばらくの間は夢の内容を思い出すことができますが、意識がだんだんはっきりしていくにつれてぼやけていく、そのイメージです。

ー「Dongsan(동산)」は広がりあるスライドギターが印象的で、まるで幼少期に戻ったかのような懐かしさを感じました。タイトルの「Dongsan」は「丘」という意味ですが、具体的にイメージしている場所はありますか? 歌詞を見ると「誰にも知られていない自分たちだけの場所」とも読み取れますが。

ホスン(Gt/Vo):僕はこの歌を作る時、テレタビーズの丘を思いながら書きました。笑えるかもしれませんが、本当にテレタビーズの丘以外思いつかなくて。「僕がその場所に行ったらどうだろうか」「なぜ行くことになるのだろうか」と考えながら、歌詞を書きました。

ハンビン(Ba):テレタビーズに出てきた丘...

ミョンソク(Dr):いろいろ意味がありそうですが、僕が感じる限り、明るい場所ではなさそうです。

ドヨン(Gt):「丘」が誰も知らない場所だと仮定すると、僕の家。

아무도 여긴 안 올 거야 誰もここには来ないよ
아무도 우릴 모를 거야 誰も僕たちのことを知らないよ
하루가 다시 또 와도  一日がまたやってきても
안개는 우릴 덮을 거야 霧が私たちを覆うんだ

ーアルバムの一番最後に収録されている「Around(한바퀴)」の温かみある歌詞は、作品のエンディングにぴったりの曲だと思いました。最初からアルバムの一番最後にもってこようと思って作ったのですか?

ホスン(Gt/Vo):いえ、違います。フルアルバムのために作った曲の中から10曲を選び、一つ一つ聴きつつ順番を決めました。その結果、「Around」が最後の曲にぴったりだという話が出たので、アルバムの一番最後に配置しました。

하나씩 떨어져 멀어진대도 一つずつ離れて遠ざかっても
남겨진 발자국을 따라가서 残された足跡をたどって
다시 만나자 그곳에서 また会おう その場所で

ーこのアルバムでは、歌詞が全て英語の曲が「Rope」「You’re Fire」「Fall」と3曲登場します。どんな基準で、この曲は英語、この曲は韓国語、と使い分けているのでしょうか?

ホスン(Gt/Vo):実は、特定の基準はありません。「Rope」や「Fall」については、バンドサウンドを作った後にボーカルのメロディーと歌詞を乗せていったのですが、英語が曲の雰囲気にぴったりだと思い、英語で歌詞を書いてみました。これまでにリリースした英語の楽曲も、大体このような理由です。

ー『of us』をどのような人に聴いてほしいですか?

ホスン(Gt/Vo):誰でも。みんなに聴いてほしいです。SURLを知っている人はもちろん、知らない人でも良い。それと、これまでとは違った新しいことに挑戦しようとしている人に聴いてほしいし、少しでもそういった方々の助けになれたらと思っています。このアルバム自体に「新たな始まり」という意味が込められているので。

ハンビン(Ba):純粋にリラックスして音楽を楽しみたい人に聴いてほしいです。

ミョンソク(Dr):僕たちを好きでいてくれて、これからも期待してくださる方に聴いてほしいです。

ドヨン(Gt):誰でも。道で横を歩いている人の耳にイヤホンを入れてあげたいです。

©︎MPMG MUSIC

ー最後に、みなさんの今後の目標を教えてください!

ホスン(Gt/Vo):2018年にデビューしてから、本当にたくさんのことがありました。いろんな曲をリリースし、多くの人たちの前でライブをしながら、僕たちを好きでいてくださる方も増えました。コロナでしばらくできていなかったライブや他の音楽活動も、これから積極的に行っていきます。また海外でもたくさん公演したいし、特に日本でライブをしたいです。韓国では、近いうちに単独公演を企画しているので、そちらも一生懸命準備したいと思います。

ハンビン(Ba):いろいろと目標はありますが、日本でもツアーをしてみたいです。日本のライブ会場は音がいいと有名で、観客のマナーも素晴らしいとよく耳にします。必ず一度やってみたいです!

ミョンソク(Dr):大きく、広く、カッコよく、有名になって、もっとたくさんの会場を回ることです!

ドヨン(Gt):SUMMER SONICのメインステージに出演することになったら、引退を考えるくらいうれしいです。


 

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  • この記事を書いた人

Akari

1994年生まれの自称、韓国音楽PR大使。インディペンデントな韓国のミュージシャンや業界人を中心にインタビューやコラムを執筆。「韓国の音楽をジャンルレスに届ける」をモットーに、韓国インディーズ音楽特化型メディア「BUZZYROOTS」の運営やDJイベントへの出演、アーティストのアテンドなど、多岐に渡り活動中。一番の推しバンドは、SURL。

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