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off the menu × HALLEY 来日公演 スペシャル対談インタビュー 前編|INTERVIEW #47

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off the menu × HALLEY 来日公演 スペシャル対談インタビュー 前編|INTERVIEW #47

シンセ・ポップ、ドリーム・ポップ、インディー・ロック、R&B…多彩なジャンルを自由に往来する韓国のオルタナティブ・バンドoff the menuが約2年ぶりに東京公演を行う。

<off the menu tour 2024>と題し、ソウル、東京、台北、そしてSXSWシドニー、世界4カ国でライブを行う彼らは、今年より本格的に世界へ活動範囲を広げ、着実に、そしてものすごいスピードで韓国のインディーズ・シーンを駆け抜けている、大注目のバンドだ。

今回、東京公演で共演するアーティストは、off the menuと同じくアジアや世界に向けて活動を行う、5人組R&BバンドHALLEY。

この対談が初顔合わせとなる2チーム。off the menuの3名と、HALLEYから張太賢、高橋継、清水直人の3名に、アジアのバンドとして、また世界に向けて活動を行うバンドとして、話を伺った。

取材/構成:内畑美里
通訳:Kim Dejong

off the menu
HALLEY

ー自己紹介をお願いいたします。

アン・ジョンジュン(以下、ジョンジュン):こんにちは。off the menuでボーカルとシンセサイザーを担当しているアン・ジョンジュンです。(日本語で)よろしくお願いします!このあと、スンミンが日本語で挨拶します。

イ・スンミン(以下、スンミン):(笑)え〜と…、(日本語で)はじめまして、私はoff the menuでシンセサイザーを担当しています、イ・スンミンです。よろしくお願いします。

HALLEY:わあ〜!よろしくお願いします!

イ・ヒョンソプ(以下、ヒョンソプ):はじめまして、off the menuでベースを弾いています、イ・ヒョンソプです。

張太賢(以下、てひょん):HALLEYでボーカルを担当している、チャン・テヒョンと言います。よろしくお願いします。(韓国語で)こんにちは。よろしくお願いします。

高橋継(以下、高橋):HALLEYでベースを担当している高橋継です。お願いします。

清水直人(以下、清水):off the menuの皆さん、(韓国語で)はじめまして。ドラムのナオトと申します。よろしくお願いします。

off the menu:うお〜!(笑)。

ー10月2日(水)に開催される<off the menu tour 2024>の東京公演にて、2チームが共演することになりましたが、お互いの音楽を聴いてみて、感じた第一印象などがあれば教えていただきたいです。

ジョンジュン:初めて聴いたとき、HALLEYはライブがうまいなと思いました。東京公演で共演するとき、負けちゃいけないと思いました(笑)。それが一番大きかった。あと、HALLEYがフュージョン・ジャズをベースしている部分に関して、自分たちと仲が良い韓国のバンドJACKINGCONG(ジャックキングコング)と比較しながら、「フュージョン・ジャズって、韓国ではこういうシーンが生まれて、日本ではこういう風になるんだ」っていうところで、かなり聴き込みました。あと、ボーカルもそうですが、演奏自体がすごくピタッとハマる感じがあって。やはり日本の音楽、特に演奏がすごい。レベルが高いなと感じました。

HALLEY:ありがとうございます。

スンミン:日本はすごく音楽に対してオープンな国だと思っていたのですが、特にジャズとかヒップホップとかR&B…いわゆるブラックミュージックに対して特化した国だという印象が以前からあったんです。とてもアイコニックだと思っていて。HALLEYはそのような音楽をすばらしく体現しているバンドだと思い、気持ちよく聴いていました。

ヒョンソプ:僕はHALLEYの「Breeze」がものすごく好きで。ベースラインとか演奏がうますぎて、ちょっとビビりながら聴きました(笑)。

てひょん:よかったね。高橋くん(笑)。

高橋:光栄です(笑)。

てひょん:便宜上、韓国語じゃなく日本語でしゃべろうと思うんですが、まず第一印象はシンセサイザーの音が良すぎて…びっくりしていました。どの国の音楽を聴いても、シンセサイザーがこんなにまっすぐ、超ぶっとく、こう…鮮明に聴こえてくるってあまりないと思っていたんですけど。単純にシンセ・ポップっていう風にジャンルで括ることはできないと思ったし、シンセの音自体が、R&Bによく使われるオーガニックなシンセのサウンドからもってきていて、それをよりエレクトロっぽく、ポップにまとめ上げているのがすごく不思議でした。もちろんいい意味で。

1st EP『Contact』と最新アルバム『Every Point of View』、どちらも聴いたんですけど、びっくりしちゃいましたね。言いたいことがたくさんあるんですけど、すごい、すごい良い。off the menuという名前自体が、いろんなジャンルを駆使するためだと伺ったんですけど、まさにバンド名を体現されているように感じました。実際のライブはどうなんだろう?と、想像が膨らみましたね。

          

         

off the menu:ありがとう…!(照)。

清水:僕もてひょんと同じような感想で、とにかくサウンドがすごくきれいで魅力的だなと。バンド名を冠した1st シングル『off the menu』を聴いたんですが、一番最初のイントロのシンセサイザーの音で、「ああ、好きなバンドだな」って確信するぐらい。

てひょん:わかる。めちゃくちゃ。

清水:クオリティも高いしきれいだし、特に音の広がりが印象的だなと。HALLEYはミニマルなサウンド感の楽曲が多いのに対して、off the menuさんの曲はすごい広がりがあって、映画のようなスケール感があるなと感じてて。

最新のアルバムを聴いたんですけど、アルバム全体のストーリーがすごい良い。最後3曲のドラマチックな感じとか、コード進行それぞれがもっている表情がどれもめちゃくちゃ好きだなと思って。例えば9曲目の「Blindspot」も、物悲しさがあったり、温かさがあったり、緊張感もあったり…みたいなコードの表情がすごく印象的で好きでした。

off the menu:ありがとう、ありがとう〜(照)。

高橋:さっき「Breeze」という曲に(ヒョンソプさんが)触れてくださっていたんですけど…off the menuの「Aussie Blues」っていう曲がもうめっちゃ良くて…あの…実は隠れてベースラインを完コピして…(笑)。

てひょん&清水:まじ?(笑)すご!(笑)

高橋:(ベースライン)練習して…すごい難しい、それでいてめちゃくちゃかっこいい。すごく。てひょんと直人が言ってくれたんですけど、広がりと迫力を持ったサウンドがすごい魅力的だなと思った。演奏はもちろん、ミックスや音作りで僕たちがもっていないものをたくさん見ることができて、めっちゃ勉強になりました。

ヒョンソプ:ありがとうございますっ(照)。

高橋:めっちゃかっこよかった!


ーすでにお話の中に出てきたバンドの名前の由来など、その辺も含めてお話をお聞かせください。両チームとも学生時代に結成し、リリックに英語をはじめ多言語を使用するなど、共通点がいろいろあるように感じています。まずバンド結成の経緯からお聞かせください。

ジョンジュン:僕たち3人は大学の同期として関係がスタートしたんですけど、自分が大学に入った理由自体が、バンドメンバーを探すためでした。自分がこれからどういう活動をしたいのか、ヴィジョンや目標を固めていく中で、出会ったスンミンとヒョンソプはすごく演奏がうまかった。でも、大学にはこういう演奏がうまい人がたくさんいる。なので、単に演奏がうまいだけでなく、いろんな音楽を聴いて、自分が今後どういう音楽を作りたい人なのかきちんと意識している人がメンバーとしていいなと思っていました。2人はアーティストとしての意識がちゃんとある人だったので、結果、今の3人になっています。

ー大学の音楽サークルなどではなく、直接何かお友達として出会った感じなんでしょうか?

ジョンジュン:大学が音楽系だったんです。

てひょん:僕らも大学で出会ったのは同じなんですが、同期ではなくてインターカレッジサークルっていう、いろんな大学の生徒たちが参加することのできるサークルがあって。ブラックミュージック好きが集まる、演奏ができる子が集まるすごい有名なサークルで出会いました。

メンバーみんなが音楽を専攻しているわけでは全くない。ただ、日本の大学ってサークル活動がすごく活発で、そのサークルに行けば音楽仲間を探すことができるというある種の構造があるので、それを目的に僕らも探しに行きました。

メンバーとはサークルにおいては同期なんですけど、学年はそれぞれ違っていて。今日参加している3人は同い年で23歳(24の代)ですが、残りの2人は23、22の代なので、サークルに入ったタイミングは一緒ですが、歳が異なる。

最初はoff the menuさんと一緒で、「俺はこういう音楽をやりたいから一緒にやろうぜ」って感じではなくて、サークルの中の企画としてバンドを組んだんですが、やっていくうちにお互いのやりたいことが結構似ていることがどんどん分かって。じゃあ曲作っていこうよ、みたいな。サークルじゃなくてバンドとしてやっていこうとなったのがきっかけですね。

清水:みんなで育て合った、みたいな感覚。

てひょん:うん。

ヒョンソプ:ちょっと話が逸れちゃうんですけど、02~03年生まれですか?

てひょん:00~02年生まれです。

ヒョンソプ:!!こんなにいい曲が作れるのに、とても若くてビビりました(笑)。

ジョンジュン:ヒョンソプは、ちゃんと敬語使えって思ってるっぽい(笑)。
※off the menuは98〜99年生まれ。

ヒョンソプ:違う!!おいこら!(笑)。

全員:(爆笑)。

てひょん:うちらも上下関係は割としっかりしてる方かもしれないね(笑)。バンド内はみんなタメ口ですけど、他のアーティストや先輩とか、外だと上下関係が結構しっかりしてます。だから、ちゃんと敬語使えるよってことだね(笑)。

ーヒョンソプさんにも敬語を使って接してくれるようですね(笑)。

ヒョンソプ:違うんですってば〜…(笑)。私たち、(日本語で)友達…(笑)。

ジョンジュン:チーム友達(笑)。

全員:(爆笑)。僕たちチーム友達〜(笑)。

ー(笑)。お話していただいたように、皆さんが大学で出会ってバンドやってみようとなったあと、どのような理由でバンドの名前をつけましたか?由来を教えてください。

ヒョンソプ:もともとはいろんな候補があって…例えば、ティンカベールなんちゃらとかいう名前も候補としてあったんですけど、off the menuはもともとジョンジュンが入っていたクルー?集団?みたいなところの名前。その集団がなくなるということで、名前を引き継いだっていうのが正しいかな。引き継いだあとに、off the menuという名前は先ほど話した通り、ジャンルに関わらず今自分たちがやりたい音楽をやりましょう、という意味にもなるのかなと。

ジョンジュン:そこに加えて、off the menuは「いろんな音楽をやりたい」っていうことにも紐づく名前なんですけど、海外のレストラン行くとメニューに”off the menu”と書いてあって。その日のシェフの気分次第とか”おまかせ”とか、そういう感じ。さまざまなシチュエーションで選ばれるような、いろんなジャンルでその時々の気持ちや場所に合わせて音楽ができるバンドになりたい、という意味です。

HALLEY:かっこいいな…。

off the menu:(日本語で)ありがとう、ありがとう〜(照笑)。

てひょん:あはは(笑)。めっちゃ面白いな、これ(笑)。

清水:(HALLEYという名前は)複雑な経緯があるというか、いろいろ言葉遊びをしていった結果。まず、僕たちがアジア人としてのアイデンティティがあるというか。例えばてひょんは韓国出身だったり、ギターの晴(登山晴)が香港出身だったり。日本にいるけど、別に日本人っていうアイデンティティはそんなになくて。だから、日本よりも、アジアっていうアイデンティティが出るバンド名の方がいいよねっていうのはもともとあって。

僕らの共通点でもある “黄色人種”から”YELLOW”っていうワードがまず最初に出て、”YELLOW”がスラングっぽく”YELLA”になって。メンバーの中にクリスチャンアイデンティティがある人たちがいて、特にてひょんと継はクリスチャンだから。…テヒョンの発想だったかな? ”Selah”は。Selahはテヒョンから説明してほしいかも。

てひょん:聖書にSelahっていう音楽記号が出てくるんですけど、一番最後に”h”がつくんですよ。”YELLA”と”Selah”で韻を踏んでる。ゴスペルが好きなメンバーもいることから、ゴスペルのルーツだったり、包括的なクリスチャンから出てくる音楽も結構多かったりもするので、じゃあ”h”をぶっこもうと言って、”YELLAH”にしたんです。

清水:さらに僕が「逆にしてみたら?」と言って。そうしたらちょうどHALLEYって、ハレー彗星と同じスペルの言葉ですごい面白いってなって。で、このまま行っちゃえ!って。後付けでハレー彗星…

てひょん:70年に一度、みたいな(笑)。

清水:何十年に一度しか来ないみたいな意味もあるし、かっこいいじゃんということで、HALLEYに決まりました。

高橋:言葉遊びからね。

てひょん:個人的にはoff the menuっていう、見たら(一発で)わかるかっこいい名前にも憧れてます(笑)。


ー例えば歌詞を多言語で表現する部分に関して、自分たちにさまざまなルーツ、バックグラウンドがあることなどの意味も含まれているんでしょうか? off the menuは英語と韓国語、HALLEYは英語と日本語を使用されますよね。歌詞を書くときにどのようなことを意識して書かれているか、伺いたいです。

ジョンジュン:まず一番のポイントとして、世界共通言語が英語じゃないですか。自分たちの音楽が多くの人たちに触れるきっかけを作るには、やはりハングルよりは英語を使うべきだという判断でした。活動範囲を韓国だけに制限されたくなかったので、さっきHALLEYが話していたように、自分たちも韓国のバンドというより、アジアのバンドとして意識をしています。「これはどこの国?」とリスナーに思わせるのではなく、シンプルに音楽だけで楽しめるようにするならば、英語の方が有利なのかなって。

僕自身、アメリカに留学していたこともあって、自然と英語歌詞の音楽に触れる機会がたくさんあり、そのあと韓国に戻った理由も、親近感を持っていた英語圏の音楽を表現するためでした。いろんなジャンルの音楽を作っていくと、韓国語のちょっと強い抑揚や発音が、表現しようとしていた音楽と少し相性が良くないと感じる場面がありました。例えば、ドリームポップ、ベッドルームポップなどの音楽を作るときには、やわらかい英語の発音の方がより相性がいいんじゃないか、ということも含めて、やっぱり英語なのかなって。もちろん、韓国語の方がより有利なジャンルもあるんですけど、自分たちの好きなサウンドに合うのは英語かなと思っています。

ーてひょんさんも以前、カナダへ留学されてましたよね。

てひょん:はい、留学していました。あの…共通点が思ったより多くてびっくりしているんですけど、もともと僕らも「アジアを代表するバンドになりたい。」という思いが最初からあったわけではなく、やり続けるうちにバンド結成時にもっていた「”アジア”というアイデンティティから生まれて、アジアの音楽として体現したい」という部分が大きくなってきたので、そういう意味で英語詞は、おっしゃっていたように世界の公用語として一番効果的に伝わるなと。ただ、僕はそれを戦略的に選択したわけではなかったかもしれないです。それよりも、一番音楽を聴いてた時期に海外にいたという部分に、かなり共感できるなと思いました。

僕はカナダに一年間、中学一年生のときはタイに一年住んでいたので、英語に接する時間がかなり長かった。自分で何かを書き起こすときや詞を書くときに英語を使うことは、僕の中でスムーズというか、ナチュラルな行為だったから英語になっているところも多いです。

10月2日にニューシングル「Chicken Crisp」が出るんですが、その曲には日本語、韓国語、英語、三か国語が混ざっています。バンドのアイデンティティである多国籍的な部分だったりとか、”アジアのものである”ということを効果的に出すにはどうすれば良いか?と考えたときに、言語を混ぜるのが一番手っ取り早いだろうと。僕がマルチリンガルだからこそ、いろんな言語が頭の中にあるということを、うまくそのまま出して、見せるようなことも良いなという風に思っていましたね。

あと、先ほどおっしゃっていた、言語の発音が硬いことなどが原因でR&Bに似合わないという部分も、僕たちは結構経験していて。「英語の方が似合うよね」とか、「まず日本語が思い浮かばないよね、この曲調。」みたいなこともあったので、自然と英語を選んでいくことはたくさんあった。なんかこれ英語っしょ、みたいなね。

清水:感覚的には、韓国語よりむしろ日本語の方がR&B合わないなって思うことが多いかもしれない。平っべたすぎたり。

てひょん:そうそう、わかる。

高橋:(日本語は)全部に母音がセットでついちゃうから、子音のみの発音がなかったりして。

てひょん:僕らはK-POPやK-R&Bをよく聴くんですけど、実際に韓国で音楽をされてる方々もそういう悩みをもってるんだっていうのは、すごい新鮮かもしれない。

清水:韓国語はそういう(R&Bなどの)音楽と相性いい言語なのかなって、日本語話者からすると思ってしまう。

てひょん:日本のR&Bアーティスト、多分みんな思っていると思うので、結構意外ですね。

ーありがとうございます。では、曲を作るとき・ライブを行うときに意識していることはありますか?

ジョンジュン:僕は作曲について話したいんですが、ライブについての説明は他のメンバーに任せたい。先にライブの部分話す人いる?

ヒョンソプ&スンミン:(無言)

ジョンジュン:どっちも僕が話せって?(笑)。

ー(笑)。スンミンさんどうですか?

ジョンジュン:スンミン!話してよ!(笑)。

スンミン:(笑)。…何の制限や縛りもなく、ただただその時々にしたいことをする…。

ジョンジュン:それだけかよ!(笑)。ライブ的な部分で、もともとは音源に忠実なライブをするというモードだったんですが、87danceをはじめ、仲の良いバンドのライブを見に行ったとき、(音源では)結構チルな感じなのに、ライブのときは盛り上がるアレンジを見て、すごく刺激を貰いました。例えば、ジャスティン・ビーバーの「Hold On」や「Deserve you」という曲は、ライブアレンジが本当にすばらしい。ライブって音源とは役割が違うから、ライブに来てくれた人たちの心に刺さるアレンジをと、あえてイントロを作ったり。みんなが楽しめる公演演出を今は一番意識しています。

2022年に初めて東京で公演を行ったときは、自分たちが音源に対して忠実なモードだったので、今回の公演はライブアレンジの部分で変化があるかなと思います。

作曲の部分だと、もともとはK-POPみたいに一曲に対して130トラックくらい作って、好きなもの全部MAXで詰め込む、みたいなことやってたんですけど、そうするとミキシングで苦労したり、結果ぐちゃぐちゃになっちゃったりして。

今、来年5月頃リリース予定のEPを準備中ですが、これは今までと違って余白を作ろうと。エッセンシャルな音を一個だけ入れましょう、みたいなアプローチをしています。最近、菅原慎一さんのバンドSAMOEDOや、川辺素さんのソロだったりミツメだったり、日本の音楽をよく聴いています。すごくシンプルな曲の作りなのに、物足りない状態なのかって言えば、決してそうではない。余白の美学というか、十分にミックスすれば満たされる。いろんな音をMAXに入れる必要は全くないんじゃないかなって思っています。HALLEYの楽曲もそうなんじゃないかなと感じてます。

          

          

清水:K-POPや、US/UKのR&Bのライブシーンを見たときに、イントロに壮大なアレンジが組み込まれていたり、原曲にはないブレイクやキメ、リフが組み込まれててライブでしか見れない感動があるから、僕らも意識したいよねっていうのはずっとある。ライブアレンジは毎回マンネリ化しないようにっていう面と、びっくりさせてやろうみたいな面があります。僕たちはジャムセッション、即興セッションをやることが好きなので、ジャズ、ファンク、オールドスクール・ヒップホップ…いろいろ好きだったからこそ、ライブ中は戦略的なアレンジだけじゃなくて、即興的に生まれるコミュニケーションも価値として絶対持っておこうと。音源に対して忠実になりすぎないという部分は、即興的な演奏の面でも常に考えています。

てひょん:プレイとか歌い方とか、もうほぼほぼ原曲じゃないよね?みたいな。枠組みと骨組みは残ってるけど、内容が全部違うライブを僕たちはいつもやっています。これを心がけてるというより、僕たちが一番やりやすく楽しめるフォーマットとしてもっているイメージですよね。

清水:僕たちがスティーヴィー・ワンダーの「Isn't She Lovely?」をジャムセッションするかのように、自分たちが書いた曲を、自分たちでセッションしてるみたいな気持ちもちょっとある。

てひょん:あるある。加えて、もう完全に違う曲のオマージュをもってきてぶつけてとか。例えばですけど、僕たちの「Set Free」という曲は、ライブだとモノネオンの「Hot Cheetos」という強いリフがある曲とマッシュアップしてライブアレンジしたりしています。

清水:どぎついリフとパコーン!とね。

てひょん:「混ぜるな危険」みたいな状態で、そのままパコーン!とやることが結構多いです。

ライブは瞬間的美学・芸術として置いておく感じですけど、音源は作品として残していくっていう強い思いがあるから、一つ一つ緻密に見ていくことが多いです。即興性から生まれるような曲作りももちろんあるけど、残していく段階において全部精査する。例えばリフがあって、リフに呼応するバッキング(伴奏)のカウンターエネルギーがあるときとか、キーボードディストの心(西山心)が弾いて生まれたものだったとしても、これ要る?要らない?って毎回メンバーで話し合って決めてたりしてますね。

清水:今言った通りで、瞬間的表現のライブと時間をかけて作り込んでいく音源だと、やっぱり真逆の作り方になっていきますね。あと、ジャンル的な話も曲作りで少し関係してくると思っています。僕ら、「アジアンソウルのバンドですよ」って自分たちで言ってるんですけど、さっきスンミンさんが「ピュアなブラックミュージックのルーツを感じる」と話をしてくれましたが、僕たちR&Bをちゃんとやろうという気持ちはずっとあって。いろんなものをガーッていう感じではないタイプのバンドかなと。常にアメリカとかイギリスの今盛んなR&B音楽をいっぱい聴いて、いろんなインスピレーションを生んでいく中で、僕たちの中にルーツとして絶対にある日本音楽の部分や、K-POP/K-R&Bの部分が滲み出てくる感じが、アジアンソウルとして表現されてるのかなって思っています。

ー自分がバンドをやろう、アーティストになろう思った瞬間に一番影響を受けたアーティストがいれば、教えていただきたいです。

スンミン:バンドをやろうという意識は特になくて(笑)。好きなアーティストがいたから自分もバンドをやりたい!というよりも、ただヒョンソプとジョンジュンと話して、遊んで、一緒に何かやりたかったというのが先です。なので、影響を受けたアーティストとかはいないかな。

ヒョンソプ:もともとR&B、特にディアンジェロがものすごく好きで。彼のライブセットをたくさん見て、自分もバンドをやりたいなと思いました。でも自分の好みを理解してくれる人っているのかな?って当時は思っていました。そのあと大学でジョンジュンとスンミンと出会って、バンドを始めたって感じです。

          

ジョンジュン:バンドをやる決定的な理由は、とにかく一人になりたくなかったっていう(笑)。一人で何かをやりきる自信がなさすぎて。影響を受けたミュージシャンは、韓国だとGlen Check(グレンチェック)。あとはジャスティス、トロ・イ・モワ、シチズンズ!とか。フランスのプームやパラディ、フェニックス。フレンチ・ポップやシンセ・ポップが多かったと思います。

            

高橋:僕らHALLEYの共通点として、もともとR&B好き。結成当時からよく話してたのは、ディアンジェロ、エリカ・バドゥ、ジェイディラとか。あと、それを現代的に解釈しているロバート・グラスパーなどからすごく影響を受けていて。R&Bの中でもネオ・ソウルの文脈で、僕たちも音楽作れたらいいよねっていうところから始まっています。僕らが出会ったサークルに、自分がやりたいことをやるためにバンドをやるぞ、という意思のもと入ったというよりも、結果バンドとして今自分がやりたいことができてるなっていう感覚です。

           

清水:僕は最初からバンドをやりたいと思っていました。日本ってバンド産業がすごい盛んな国だから、自分が音楽をやる方法として、バンドは一番自然な道のりだった。僕はずっとドラムをやっていたし、ドラマーが一人で音楽をやるのはあんまりイメージつかないし、バンドっていうフォーマットに自然と自分を組み込んでいった感じがありました。

小さい頃マイケル・ジャクソンをずっと聴いて育ったんですよ。だから、ブラックミュージックをやりたい思いも自然と同時にあって、ブラックミュージックやりたい、バンドやりたいっていう気持ちは、ずっと自分の中にあったもの。

尊敬しているミュージシャンは、ドラマーのロバート”スパット”シーライト。以前はスナーキー・パピーっていうフュージョンバンドで活動していて、現在はゴースト・ノートというファンク・バンドのオーナーをやっています。ドラマーなんだけど、プロデュースやアレンジメントもしてる人で、音楽でいろんな表現ができるドラマー、みたいな存在。すごい憧れています。だから、僕はバンドの一員としてそういう表現をしたいなと思ってました。作曲とかができるようなドラマー。

ゴスペルと、ファンク、R&B、ヒップホップ。いろんな音楽好きだった中でも、ナレオ(HALLEYが出会った早稲田のサークル名)に入ってメンバーと出会ってからは、ネオソウルに傾倒していって、ロバート・グラスパーの音楽聴き始めたり、ディアンジェロの影響を強く受けたりして変遷していった感じですね。

てひょん:(ジョンジュンさんのように)マジで僕も一人でやりたくなくて(笑)。僕は高校〜大学と、一人で弾き語りをしてたんですが、音楽をもっと作りたいという過程で、一人じゃ到底できねぇなと思ったので、音楽仲間を探しに(サークルへ)行ったんですね。当時、ちょうど종합선물세트(ハッピーセット的な意味)みたいにみんないたから(笑)、じゃあ全部一緒にみんなでやろう、っていうのが一番最初の出会いでした。

その当時に影響を受けてたのは、韓国だとCrush(クラッシュ)とか。韓国のR&Bはずっと聴いてたので、CrushとかDEAN(ディーン)とか、そこらへんはずっと聴いていた。あとCrushからの派生でデヴィン・モリソンとかも聴いていた気がします。ジョイスライスもすごい好きだった。

           

           

メンバーに会ってからはマジでネオソウルにどっぷり。ミュージック・ソウルチャイルドも聴くし、それこそエリカ・バドゥも聴くし。あとザ・ルーツとかジャズ・リベレーターズとか…ジャズヒップホップもどっぷり聴き始めた。カーティス・リー・メイフィールド、ランス・アレンっていう、ゴスペルだけど昔めっちゃソウルやっていた人とかを聴いて、どんどん昔に遡っていったんですが、今のHALLEYはミント・コンディションっていうR&Bバンドの形態に近いんじゃないかな。

         

ネオソウルっていうムーブメント自体が、昔のクラシック・ソウルを新しく解釈するという意味のネオソウルだったと思うんですけど、僕らがバンドとしてやろうと思ってるのは、そのネオソウルをもう一回作り直すということです。昔のものを吸収するのは当たり前だけど、HALLEYの方程式を用いて、そのネオソウルを作り出していく感じですね、感覚は。


ーありがとうございます。最後に、10月2日の公演に向けて一言メッセージをいただきたいです。

ヒョンソプ:日本めっちゃ楽しみ…。

ジョンジュン:もっと長く話せし(笑)。

ヒョンソプ:(笑)。東京公演では、音源とは違う、バラエティに富んだアレンジもたくさん披露する予定です。観客の皆さんが僕たちと一緒に一つになって楽しんでほしいというのが、僕たちの願いです。 ありがとうございます。

スンミン:僕は手短に。(日本語で)一緒に遊ぼ〜!

ジョンジュン:off the menuの音楽のコンセプトは、その時々に自分たちがやりたい音楽をやるというのが一番大きなポイントです。だから楽曲によってジャンルも異なります。観客の皆さんも、その時々の景色や感情で僕たちの音楽と接してほしいし、ライブでは僕たちの曲と自身の感情や記憶の交点を探して、感情を解放できるようなライブであってほしい。それらを体感できるように、僕たちも公演に向けて頑張ります。

清水:まず、僕はもうすでにoff the menuのファンなので(笑)、リスナーとして日本でoff the menuの音楽を聴けるのがすごく楽しみです。そして、僕たちにとってほぼ初となる国外アーティストとの企画をoff the menuとできてすごい光栄ですし、ワクワクしています。

off the menuのコンセプト自体が、そのときの気分で音楽が多彩に生まれていく、という意味だと思っていますが、僕らの演奏がなんらかの瞬間にoff the menuへ影響できたら面白いなと思います。楽しみにしています!

ヒョンソプ:(日本語で)よろしくお願いします!

高橋:(off the menuの)音源をずっと聴きながら、めちゃくちゃ楽しみだなって。実際こうやってお話しさせていただいて、本当素敵な人たちだなと思っています。今からライブの日が楽しみで仕方ないです。僕らもたくさん学びを得たいし、off the menuにとってもお土産としてもって帰っていただける何かがあったら、光栄です。

てひょん:インタビューで交感できたエネルギーをそのままライブもっていけたらいいなって思います。互いに新鮮な部分があったと思いますし、日本と韓国という違う土俵でやってる音楽だけど、アジアに向けて、世界に向けて、っていう同じ志をもっている部分にもかなりすごいシンパシーを覚えたので、「アジアという扉が開かれるようなバンドが2組でいる」ところを、日本の音楽シーンしか見たことのないファンの皆さん、観客の皆さんに向けてしっかりと見せつつも、一体となる良いライブにしたい。ちゃんと盛り上がって、ちゃんと温めて締めくくれるように、僕らも頑張っていけたらと思います。よろしくお願いします。

ー本日はありがとうございました!

off the menu:ありがとうございます!HALLEY頑張れ〜!

HALLEY:あはは!カムサハムニダ〜!(笑)。

         

イベント詳細

『off the menu tour 2024 in Tokyo』

日時:2024年10月2日(水) open 19:00 / start 19:30
会場:Spotify O-nest
料金:ADV 3,800(+1drink) / DOOR 4,300(+1drink)
チケット販売:
Livepocket ※8/29(木)18:00〜販売開始

LIVE:
off the menu
HALLEY
supported by au スマートパスプレミアム

公演問い合わせ先:Spotify O-nest

主催:シブヤテレビジョン
制作/企画:内畑美里、シブヤテレビジョン
supportedbyauスマートパスプレミアム

『off the menu Tour 2024 in Tokyo - AFTERPARTY』

日時:2024年10月3日(木) 18:00-22:00
会場:WPÜ CAFE & DINER SHINJUKU
※入場後にアーティストに還元したい金額を自由に決定していただく“NAME YOUR PRICE”方式を採用しています。

Live performance:
payperview - JungJun Ahn, Seungmin Lee (from off the menu), Junyoung Choi (from 87dance)
beipana

DJ:
nanase
1skr


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BUZZYROOTS 編集部

Korean Indie Music and Culture Web Magazine|韓国の音楽シーンをジャンルレスに発信するWEBメディアです。各所に散らばった韓国の音楽情報をぎゅっとまとめてご紹介します。

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