グラマラスなサングラスと派手な化粧を纏い、伝統的な韓国ポップスタイルで歌う女性2人組ユニット、MiMi SISTERS。韓国インディ音楽界のスター“チャンギハと顔たち(Kiha & The Faces)”の元メンバーであり、ステージでの振る舞いは韓国の伝統的な50年代〜70年代ガールズグループスタイルを彷彿とさせ、自らを「チープな神秘主義」と称して14年以上ファンを魅了し続けている。
2010年にバンドを脱退後、2011年と2014年にアルバムをリリースし、2018年にはヒーリング・キャンペーンの第1弾として、自殺防止キャンペーンソング「Let’s All Die Naturally」を発表、2019年に第2弾「MiMi’s Mukbang Song」をリリース。近年では特にLGBTコミュニティーでこのシングルが話題となり、韓国で開催された「Seoul Queer Culture Festival」でもパフォーマンスを行った。
また、世界的パンデミックが長期化し広がっていく中で、ロックダウンやソーシャルディスタンスによって人との繋がりを絶たれた状況を救うため、MiMi SISTERSは世界中のファンが集まり会話することでストレスを発散出来る場としてClubhouseでトークショーを行ってきた。最新シングル「Come On and Chit Chat」はそんなClubhouseでのトークショーやファンとの交流から生まれた楽曲。オリジナルの韓国語バージョンは2021年7月にリリースされており、2021年8月27日に英語・日本語バージョンがリリースとなった。
下記インタビューと共に楽曲を聴きながら、ぜひMiMi SISTERSの世界観に浸って欲しい。
INTERVIEW
ー簡単に自己紹介をお願いします。
こんにちは、MiMi SISTERS(ミミシスターズ)です!私たちは韓国を中心に活動している14年目のインディガールズグループです。大きな “ミミ” (큰미미)と小さな “ミミ”(작은미미)の2人のメンバーで活動する女性デュオです! 2008年にバンド "チャンギハと顔たち" でデビューし、2010年に独立。2011年に初の正規アルバムを発売した後、今に至るまで地道に活動してきました。
ー今まで日本に来たことはありますか?
実は、日本は私たちと非常に親交の深い国です。小さなミミは幼い頃に大阪と京都に住んでいて、大きなミミは日本のインディバンドや昭和歌謡に関心が高いです。2人でずっと前に一緒に行った初の海外旅行もまさに京都と神戸でした!
ミミとして、より強い日本との縁が生まれたのは、大阪のソウル音楽の女帝・大西ユカリ姉さんのおかげです。『直撃! 韓流婦人拳』というアルバムを発売する際にミミがコーラスに参加したのをはじめ、大阪・新世界の中心、通天閣で何度もライブを共にするという晴れ舞台を味わいました。新世界の飲み放題居酒屋で串カツを食べながら「二度漬けは禁止やで」と叫んだり、ホルモン焼きを食べたりもしました!その後も、ユカリ姉さんとは日本、そして韓国で何度も会い、私たちは家族になりました。
ミミが大変な時や嬉しい時やいつも力になってくださるユカリ姉さんがとても懐かしいです(泣)今はコロナで行けないけれど、状況がよくなればすぐに飛んでいく予定です。いつか皆さんとも日本でお会いできることを祈ります!
ー2021年8月にシングル「みんなでしゃべろう(Come On and Chit Chat)」の日本語バージョンをリリースされていますが、日本語でリリースしようと思ったきっかけは何ですか?
「みんなでしゃべろう(Come On and Chit Chat)」はミミのヒーリング・キャンペーンソングの第3弾です。実は日本語で録音したのはこれが初めてではなく、2018年にリリースしたキャンペーンソング第1弾「みんな自然に死のう(Let's All Die Naturally)」でも日本語に挑戦しています。
日本語と英語のバージョンで録音することになったきっかけを話す前に、まず楽曲の紹介をしたいと思います。
普通 "キャンペーンソング" と言えば、政府機関や地方自治体、特定の目的を持った団体が公益のためにミュージシャンに依頼をして作るのが普通ですが、このキャンペーンソングは私たち側で先に自発的に作ることになりました。初めて作った「みんな自然に死のう(Let's All Die Naturally)」は自殺予防のための曲、2番目の2019年にリリースした「MiMi's Mukbang Song」は旅行推奨ソング、3番目の「みんなでしゃべろう(Come On and Chit Chat)」はおしゃべり推奨ソングです。
日本もそうですが、ストレスや競争によるプレッシャーがひどい韓国で大変な思いをしている友達と聴きたくなる曲メドレーです。コロナの状況がますます深刻になり、社会の中でより一層憂鬱になる人が多いので、こういう時こそ音楽で少しでもみんなの癒しになれれば、と考えました。「あなたは決して一人ではありません。私たちはみんな繋がっています。」というメッセージを世界中に共有したかった。こうした経緯で、英語でも録音をし、ミミの友達がたくさんいる日本語にも挑戦しました。
ー自発的にキャンペーンソングをリリースし始めたとのことですが、そのきっかけや根底にある想いは何でしょう。
2018年にリリースした「みんな自然に死のう(Let's All Die Naturally)」は、実は社会に向けたメッセージというよりも、自分たちを慰めようとした曲でもあったんです。その時は私たちが音楽を始めてから10年目になった年でした。当時、自らこの世を去ってしまった友達もいましたし、音楽を辞めた仲間たちも多かったです。とても悲しくて心苦しい出来事でした。それが、決して彼らだけのことだと思えず...。私たちもやはり、音楽的な限界やミミをいつまでできるかという漠然とした不安感がますます大きくなっていき、ミュージシャンもしくは人間 “ミミ” としてもっとできることはないか、悩んだ時期でした。
人間として、ミュージシャンとして、私たちが「自然死」できる道はないだろうか。それは、他ならぬ「逃げることなく、自分たちの経験や想いを正直に表現すること」でした。ミミらしくいること。そこから、非常に愉快でダンサブルな自殺予防ソングが生まれたんです。
曲が世に出ると、多くの方々から反響をいただきました。実は、これまでミミとして活動していて、これほど反応が大きい曲は初めてだったんです。それだけ皆大変なんだと思い、幾度となく心を痛めました。
歌を歌う人も聴く人もそんな風にエネルギーを受け取れば、もっと大きなエネルギーが生まれるということを知り、最終的にキャンペーンソング第3弾まで作ることになりました。 「みんな自然に死のう(Let's All Die Naturally)」と「みんなでしゃべろう(Come On and Chit Chat)」は、多くの方々の声援と愛のおかげで昨年韓国でカラオケにも追加されています。
「みんなでしゃべろう(Come On and Chit Chat)」は、コロナのせいで友達や家族と思い切りおしゃべりができないやるせなさ、マスク無しで延々とおしゃべりすることをどれだけ欲しているか、おしゃべりを通して私たちがどれだけ生き生きできるのかについて語っていて、2021年頭に偶然、音声SNSのClubhouseというプラットフォームで出会った方からインスピレーションを受けて作った曲でした。日本にも多くのClubhouseユーザーがいらっしゃると思いますが(実際にClubhouseで多くの日本の方々とお会いしました!)、Clubhouseで心ゆくまで一晩中誰かと話をしながら、部屋の中に一人で閉じ込められていても私の声と心は世界中の友達と繋がっているということをひしひしと実感しました。「まるでベッドで楽しむ世界旅行!」そう思うと、全然寂しくなくて。
みんなと繋がっているという気持ち。あなたの話を一晩中聞くことができ、私たちの声は本物なんだと信頼する気持ち。毎回曲を作るたびに、そんな思いを抱いている気がします。
この曲がいつか誰かに触れて私たちとの間に繋がりが生まれたら。私たちの曲を聴いて、一度でも他の誰かを思い出して、寂しくないと感じたら。私たちは、「ミミの音楽としての役割」を十分果たしていると思います。もちろん、私たちの音楽をきっかけにミミのファンになってくれたらもっと嬉しいです!
ー自らの音楽に影響を与えたロールモデルとなるようなミュージシャンはいますか?
私たちは韓国の1960-70代の "シスターズ" の先輩たちのDNAを受け継いでいます!(笑)
日本には昔から多くのガールズグループがいることを知っていますが、韓国も同様にギラソンのようなガールズグループ、女性歌手の先輩たちがとてもたくさんいらっしゃいます。
1950年代にアメリカに進出した韓国初のガールズグループであり、レジェンドのキム・シスターズ(Kim Sisters)をはじめ、パール・シスターズ(Pearl Sisters)、イ・シスターズ(Lee Sisters)、バニーガールズ(Bunny Girls)、ファニー・シスターズ、スク・シスターズ(Sook Sisters)、ヒー・シスターズ(Hee Sisters)、ハッピー・ドールズ(Happy Dolls)。ガールズグループではありませんが、キム・ジョンミ、キム・チュジャなど、その当時、サイケデリックやロックだけでなく韓国の "ポンキ" がたくさん入った曲を歌ったボーカリストから多くの影響を受けました。
※ポンキ:感傷的な韓国人の情緒に沿うK-POPの特性を総称する言葉。
2009年にリリースしたミミの正規1集アルバムに「Space Trip」(作詞/作曲:シン・ジュンヒョン)という曲がありますが、その曲もバニーガールズが1971年に発売した「Space Trip」をリメイクしたナンバーで、アルバムに収録したリメイク曲はなんと16分を超えています(16:44)。ぜひ原曲とミミのリメイクバージョンを比較しながら聞いてみてください!
ー常にサングラスをした神秘的な覆面姿にも、諸先輩方から受け継いだエッセンスが隠れているのでしょうか...?
サングラスをし始めたのは、私たちがMiMi SISTERSとして独立する前、「チャン・ギハと顔たち」というバンドで活動するときに初めて一緒にリリースした「Accept Me(나를 받아주오)」という曲のためでした。愛で傷つき、マネキンやロボットのように感情が固まった女性を表現するためにサングラスを選び、その時から今に至るまで(多分これからもずっと)14年の間ずっと、サングラスをしています!
最初はサングラスとヴィンテージワンピース、真っ赤な口紅、そして、笑わず言葉も発しない非常にミステリアスなコンセプトで活動をしていました。今は、バンドから独立していて自分たちの音楽をしなければいけないので、話したり泣いたり笑ったりすることもありますが、サングラスだけはあきらめられません!そろそろサングラスをとりたいのに、ファンの方々が反対するんですよ!ファンの方々が守ってくれる神秘主義とでも言いましょうか。 私たちは「チープな神秘主義」と呼んでいます。(笑)
このサングラスというのがとてもおもしろいですが、多くのファンの方々がミミのサングラスを「匿名掲示板」のように考えてくださっているようです。目というのは多くの感情を表現できる身体の器官だと思うのですが、この目をブロックすることで、多くの方々が自分の話をむしろもっと正直に私たちに打ち明けてくれる時があります。
私たちはSNSを通じて多くの方々とコミュニケーションするのが好きなのですが、DMで悩み相談を送ってくる方々もたくさんいらっしゃいます。日本にいる皆さんも、一人で悩んでいる問題があるなら、いつでもミミのSNSに来てくださいね!
ー音楽活動に関して、今後の目標はありますか?
私たちの最終目標は、おばあちゃんガールズグループになってグラストンベリーの舞台に立つことです! 今呼ばれても行けませんよ、まだおばあちゃんじゃないから! (笑)その前までの目標ももちろんあります。 14年間で正規アルバム2枚と多くのシングルを発表しましたが、2022年には正規アルバム3集を準備しようと思っています。 キャンペーンソングもこれからもリリースし続けるつもりです。
私たちが生きている中でその時その時感じたこと、共有したいことを歌います。 これからも皆さんとずっと一緒です!
ー最後に、日本の皆さんに向けてメッセージをお願いします!
このようにインタビューを通して、BUZZY ROOTSの皆さんにお会いできてとても嬉しいです!それから、日本で出会った大阪名物の自由軒がとても懐かしいです。餃子の王将のチャーハンも、一蘭のラーメンも…大阪のとある軽洋食屋さんのデミオムライス…たまごサンド…そして豚汁も…あ、もちろん食べ物だけではありません。日本で出会った多くの方々、本当に親切な方々に対する記憶も未だに残っています。そして、この記事を通して初めてお会いする皆さん、長いインタビューを読んで下さり、とても感謝しています。
ミミは、毎週月曜日の夜10時に皆さんをお待ちしています。5年間続けている「Retro Monday(レトロマンデー)」という名前のラジオで、韓国大衆音楽の歴史上の名曲と現代韓国インディ音楽を紹介しているんです。 YouTube、Instagramのライブなど、いくつかのプラットフォームを試して、現在はClubhouseに落ち着いてます。いつでも来て、私たちと話しましょうね!
私たちは「人生において楽しさ、ユーモア、ロマンが無くなったら、生きていく面白みがない!」と考えているチームです。みんな大変な時期を過ごしていますが、もう少し頑張れば輝く日々が戻ってくると思います。それまでどうかお元気で。オンラインでもオフラインでも、すぐに会いましょうね!
(インタビュー協力:Tron Music / 内畑美里)