The Black Skirtsが自身初となるEP『Good Luck To You, Girl Scout!』を4月30日(金)に全世界同時リリースした。自粛期間に恋人にフラれた友人の話からインスピレーションを受け、嫉妬に燃えた自身の思春期の恋の思い出を”ガールスカウト”という斬新なテーマに盛りつけた、これまでの作品には無い新鮮さがどことなく感じられる本作。全6曲はハウスレコーディングで制作され、メロディーラインや編成はミニマルに作られている。そのためか、サウンドのいびつさも相まって詞の内容や歌に溢れる感情がさらに際立っている。
2年ぶりとなるリリースを機に次作の制作へのさらなる意欲を見せつつ、近年は、JYJのXIA(ジュンス)、EXOのスホ、チョンハ等アイドルとのコラボレーションやプロデュースを行っており、音楽活動に広がりを見せている。環境や心境にも変化が多かった中で、今彼は何を思うのだろうか。
今回BUZZYROOTSではEP発売を記念し独占メール・インタビューを敢行。アルバムの制作背景やエピソードから現在の心境を聞かせてくれた。
ーまず、このアルバムはコロナウイルスの隔離期間中に恋人にフラれた友人にインスピレーションを受けて作ったそうですが、この話を聞いた直後からアルバムが完成するまで、どのようなことを考えながら作業されていたのでしょうか?
昨年の夏、友達数人がほぼ同じ頃に彼女にフラれて、出来るだけ多く一緒にいてあげようと努力しました。どうしても一人で考える時間が多くなるとしんどくなるので。大体は平常心で曲を作りますが、友達の影響か、テレビを見ていてもなんだかひどく憂鬱になる状態の中で、昨年夏に別れの歌を作りました。準備している正規アルバムに集中するのも精一杯で、この曲たちは発売するどころか初めから完成させる考えもなかったんです。しかしコロナでライブも中止となり、アルバムの制作も遅れるついでにファンサービスで企画したEPです。
ーこの隔離期間でヒュイルさんが失ったものはありますか?思い浮かんだものを自由にお話しください。
元々外向的では無いので、旅行とか、人と集まって遊びに行ったりするようなことはしないんです。なので幸いにも日常で大きく変わったことは無いです。強いて言うなら、コロナによって見応えのある映画があんまり無いことかな?深夜や早朝に一人で映画館に行くのが好きなんですが、最近は観たい映画も無いし、映画館にももう一年以上行ってないですね。
ーアルバムのジャケットが印象的です。ディスコグラフィーを振り返ってみて、イラストのデザインである点、そして表情がはっきりと描かれている点で新鮮に感じました。(これまでのジャケットはアンニュイな表情というイメージです) ジャケットデザインはどのように決めていったのでしょうか?
正規アルバムと差別を図りたかったという理由もあるし、憂鬱に聴こえるかもしれない曲たちですが、でもそれなりに可愛らしさも持ち合わせてると思って、カバーやパッケージのデザインをちょっとカジュアルでファニーに持って行きたかったんです。
ー”Girl Scout”という言葉を聞いて、溌剌としている純粋な幼い女の子を想像しながら聴いたのですが、実際各曲には嫉妬を含んだ複雑な感情が描かれており、聴いた後はもう少し成熟した人物をイメージしました。このように、アルバムタイトルと曲のテーマが対比的だと思ったのですが、どのような意図が込められているのでしょうか?
溌溂で純粋な女の子たちが時に最も悪質だったりします。思春期になるとほとんどの女の子が早熟になって、少なくとも私の記憶ではそうでした。そんな思春期を思い浮かべながら、嫉妬という感情を私に想起させて作った曲たちです。いつどこにでも旅立つ準備が出来ている、好奇心旺盛なガールスカウトのイメージが今回のアルバムに相応しいと思ったんです。
ー対比という点で併せて思ったのが、曲のミニマルな構成とシンプルなサウンドに比べ、歌詞の内容が複雑であることです。各曲は、歌詞と音楽どちらから先に作られて、そしてどのように曲を組み立てていったのでしょうか?
曲を作る時に歌詞とメロディーは大体一緒に進めていきます。音楽好きの一人のファンとして、そしてミュージシャンとしても音楽ではメロディーが占める部分が80%以上だと思います。しかし僕のファンたちはいつも歌詞にもっと多く比重を置くようです。元々は今回のEP全曲全てアコギのみで録音する予定だったんです。普段の編曲スタイルに比べると非常にミニマルな編曲になってますが。
ーインスタグラムに投稿された、これまでのアルバムの制作期間を示したタイムラインがとても気になったのですが(現在は削除)、今回のアルバムが短期間で制作されたのはなぜでしょうか?
先にお話しした通り、蒸し暑い夏の夜、いつものようにテレビを観ながら作った曲で、正規でリリースしたかった曲たちでは無いんです。次の正規アルバムまでのお休みアルバムというか。これまでのアルバムたちは制作期間が長く、元々のんびりと制作するほうです。最近は少しタイトに、会社員のようにコツコツ制作しています。我ながら歳取ったなと思いますね。
ー制作期間が短い中でも難しかった点(アルバム全体や曲など)はありましたか?
制作自体は難しいものでは無いですが、もっとリラックスして素朴なアレンジで行けば良かった、という思いは今でも強くあります。アコギとiPhoneだけで録音をしなければならなかったのですが、いざリリースするとなるとそれが出来ないんです。音楽だけでなく、美術、映画、執筆を含む大体の創作は加えるよりも引いていくのがいつも難しいですね。
ー「Two days」MVには女装してご自身が出演されましたね。出演にはどういった経緯があったのでしょうか?また主人公役の俳優(Leo Suzuki)がヒュイルさんと似ていると思ったのですが、彼がキャスティングされた経緯についても教えてください。
MVはアメリカで撮影を行ったんですが、直接行かなくても私が参加できる唯一の方法があのような形でした。実は以前面白がって女装フィルターを使ってみたら、女装した自分が理想的な姿だなと気づいたんです。Jo Breonna(女装した自分の名前)はアイビー・リーグへの進学を準備しながらバレーボールチームの主将を務めている、どこかで見かけた在米韓国人の学生って感じで。
Leo SuzukiはMV監督・Waley Wangのキャスティングです。Leoはダンサーとして素晴らしいですが、演技経験があまりなく、初めは少し心配だったんですが、演技経験が豊富な他の子たちより上手だったし、何より表情を上手く表現していて自然でした。MVで使われた眼鏡や帽子などを見ると監督がある程度私の過去のファッションを参考にしているようですね。LeoとWaley、2人とも信じられない程素晴らしいMVを作ってくれました。今後も彼らと一緒にやっていきたいと思ってます。
ー最近は、アイドルのプロデュースやコラボレーションという新たな活動にも取り組まれていますが、ご自身の楽曲制作時との違いはどういった点でしょうか?また、どんな点に面白さを感じていますか?
正直に言うと、アイドルのプロデュースやコラボレーションはあくまで仕事としてアプローチしています。クライアントが好みそうなスタイルや歌詞を推測して制作しないといけないので、チャレンジと思えば楽しいです。ですが、The Black Skirtsのアルバム、正確には正規アルバム以外の制作には、正直愛情があんまりないというか……。 以前には新しいもの、面白いのを追いかけていたとすると、今は自分が得意なものそして好きなものだけをやっても時間が足りない感じです。
ー最後に、今年下半期から来年の活動予定について聞かせてください。
ランニングをもう一度始めて、ヨガにも通ってます。そしてタバコぐらい中毒になっているハンバーガーをある程度で辞められるようになりました。長い間体を酷使させてきたことで、丈夫な体でなくてはやりたいことが長く続けられないという結論を見出したんです。ハルキ(村上春樹)をたくさん読んでいるわけではないですが、彼がランニングに関して書いた本を楽しく読んでます。もう一度ランニングを始めたのは多少その影響もあると思います。
協力・監修:Bside Label