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矛盾し、歪んだ欲望について —— xiihu EP『WHOREMONES』|INTERVIEW #81

テクノロジーの発達と共に、我々の生活の在り方も変容している。インターネット空間には低俗なミーム、AI生成のどこか不気味な画像、そしてショート動画が無数にアップロードされ、我々はそれを漫然と消費してしまう。身体の感覚は薄れ、すべてが画面の中に還元されていく。韓国のシンガーソングライター/プロデューサー/DJのxiihu(シフ)は、そんな現在に感じる孤独、矛盾、渇望をもとにEP『WHOREMONES』を作り上げた。サウンド面の新たな試み、そして誇張された欲望の形……最新作の裏側や彼女自身について、赤裸々に語ってもらった。

Interview & Text:火気厳禁 / kakigenkin


—— xiihuさん、こんにちは。まずは、簡単に自己紹介をお願いします。

xiihu : こんにちは。ソウルを拠点にプロデューサー、シンガーソングライター、DJとして活動しながら電子音楽を作っているxiihuです。

—— EP『WHOREMONES』はこれまでの作品と比べてより“踊れる”楽曲を中心に構成されている印象を受けました。今作の音楽面でのテーマはどういったものでしたか?

xiihu : DJとして活動する中で、クラブで流したい音楽はたくさん浮かぶのですが、次第に他の人の曲ではなく自分の音楽を直接流したいという思いが大きくなりました。そのため、今回のEPはクラブでよく響くようなダンサブルな楽曲を作ることに集中し、サウンド・ビジュアル共に華やかで大胆な方向性を目指しました。

—— 今回のEPでは(主に性的に)相手を蔑むような悪い言葉をあえて使い、それをむしろ誇張することで女性の性的主体性を描いています。こうしたテーマを選んだ理由は何だったのでしょうか?

xiihu : 私には“自分の許可のもとで支配されたい”という欲望があります。恋愛はよくゲームだとも言われるじゃないですか。誰かを支配したり支配されたりする関係に魅力を感じつつも、同時にその状況全体を自分がコントロールしたいと考えているのかもしれません。自分が受け入れられる、予測できる範囲で支配されることを望むという「矛盾」について語りたかったんです。

そのため、あえて自分の欲望を誇張し、相手が女性に対して使いそうな侮蔑的で強い表現を私が先に使いました。表面上は過度にセクシャルな表現をしていますが、その中には結局、相手に愛されたいという気持ちも内包されています。そういう意味で『WHOREMONES』は挑発的に見えますが、実は自分の欲望や感情を誰よりも素直にさらけ出したアルバムなのだと思います。

——「thots(about u)」で描かれている、ある対象が忘れられないのに奔放な行動を取る矛盾した心情は、離れたところにいる相手を想う「tellmenow」とも共通する部分があると感じました。xiihuさんの作品に共通するテーマとして「孤独」や「渇望」があるように思うのですが、そういったテーマを扱いながら制作を行うことはどんな作業だと言えるのでしょうか?

xiihu : 孤独と渇望は、私の中で最も深いところにある感情だと思います。私はいつも孤独を感じ、愛情を渇望しながら生きている人間だと自分自身を捉えています。ですが、いざ本当に好きな人の前では素直になるのが難しい時があります。傷つくのが怖くて先に逃げたり、何も言わなかったりすることもあれば、逆に私の矛盾した行動で相手を怖がらせてしまうこともあります。そうしながらもずっとその人を恋しく思う両面性が、自然と私の音楽に表れているのだと思います。

ですから、孤独や渇望を扱う作業は、現実では表現しきれなかった感情を音楽の中だけでも素直にさらけ出す過程に近いです。もしかしたら、いつかその相手が私の音楽を聴いて私の気持ちに気づいてくれることを願う、少し受け身な告白でもあります。

xiihu「tellmenow」

——「submissive & breedable」は、男女の視点を反転させるアイデアが面白い楽曲ですね。1番では身体的な描写、2番から人工的なモチーフが登場するところが特に興味深いのですが、この曲の制作の過程について伺いたいです。

xiihu : 実は、私はこのタイトルのように相手に服従することを望むこともあります。ただ、単純に「私があなたを支配する」とか「あなたは私に服従すべきだ」という話ではなく、「私はあなたに完全に服従したいから、まず私がそうしてもいいと思える理由を作ってほしい」という気持ちに近いんです。結局、「私が望む方法で私を支配してほしい」という矛盾したメッセージなんです。

最初から1番と2番のイメージを明確に区分して歌詞を書いたわけではなく、ただ直感的に書き進めていきました。1番では口、視線、鎖骨のように身体的で直接的なイメージを使い、2人の中での役割と緊張感を表現しました。同時に「I own the word, not the name」という歌詞には、相手が付ける名前に規定されるより、その言葉を私が先んじて受け負って、主導権を握るという態度が込められています。

2番ではビニール、電圧、クリックベイト(釣り広告)、アルゴリズムのように人工的でデジタルな単語が自然と登場します。最初から何か意味を決めて書いたわけではありませんが、完成してみると1番の肉体的で私的なイメージが2番で人工的で外部的なイメージへと拡張され、興味深い対比が生まれたと思います。決められた役割やイメージの中に固定されず、それを私なりのやり方でひねりたいという態度は、両方のパートに共通して込められていると思います。

—— MVも同様に、“女性の性的な主体性”をキャンプ(camp)な感覚で視覚化しています。監督を務めたeerieさんとはどのように制作を進めましたか?

xiihu : eerieは小学生の頃に同じ美術教室に通っていた友達です。20歳を過ぎてから再び連絡を取るようになり、私が2025年のフルアルバム『Signals』を準備する中でクリエイティブディレクター兼デザイナーを探していた際、初めて一緒に作業することになりました。

個人的にも親しく、お互いの好みや美意識に対する理解が深いので、作業する時に意見が衝突したり、コミュニケーションに難しさを感じる時がほとんどありませんでした。今回のMVも、私が考える女性の欲望と権力関係をeerieがキャンプ的な感覚の誇張されたイメージへと拡張してくれ、お互いに自由にアイデアをやり取りしながら完成させました。私の意図を正確に理解しながらも、それをより強烈な視覚的言語へと発展させてくれる、とても優れたディレクターであり素晴らしい友人だと思っています。

xiihu「submissive & breedable」

——「digital4play」ではSNS上での駆け引きを描いていますが、過去にリリースされた楽曲「love machine」などでもデジタル空間での出来事がモチーフとなっています。恋愛に限らず、SNSの存在は現代の人間関係においてどのような効果をもたらしていると思いますか?

xiihu : とても大きな影響を与えていると思います。正直、人々がちゃんと関係を築くためにはインターネットがなくなった方がいいのではないかと考える時もあります。特に恋愛においてはなおさら。

デジタル空間には相手の表情や話し方、周りの状況といった実体の情報がないので、その空白をずっと推測で埋めることになります。関係がうまくいっている時はその推測すら緊張感やときめき、一種の面白さになりますが、逆の方向に作用し始めると、相手が目の前にいなくても毎時間その人の接続ステータスや返信、投稿などを気にするようになりますよね。そうなると、実際には一緒にいない人の存在が、かえって自分の日常をより多く占めるようになったりもします。

同時に、関係を断ち切ることもあまりにも簡単になりました。十分な説明なしにブロックしたりフォロー解除したりして、一人の人間を人生から消し去ることができるのですから。私はそんなやり方に真剣味が欠けていると感じる時があり、かなり悲しくなります。もちろんSNSのおかげで物理的な距離を超えて関係を結び、維持できるというメリットも明確にありますが、まさにその特性が執着や誤解、無責任な断絶を生みかねないという点で、諸刃の剣だと思います。

—— タトゥーアーティストのJINJINNEEDLEさんが企画するプロジェクト「Skinomakase」の参加メンバーで出演されたパーティーでもこのEPの曲を披露されていましたね。Instagram上でも時折楽曲の一部を公開してくださっていますが、改めてこの「Skinomakase」プロジェクトについて教えてください。

xiihu : 「Skinomakase」はディレクターやアーティストとして活動領域を広げている私の友人、JINJINNEEDLEが企画しているプロジェクトです。その中で私は “Skinomakase sound system” に参加しています。

彼が世界中を旅しながらタトゥーの施術で出会った、あるいは各都市別のプロジェクトを進める中で知り合ったアーティストたちとコラボレーションし、1つのコンピレーションまたはプロジェクトアルバムとして披露することを目標にしています。

私が参加したトラックは、現在「MENACE」というタイトルにしようかと考えています。この曲ではラップをはじめ、普段の個人の制作ではあまり試さなかったボーカルのスタイルを見せようとしました。従来のxiihuとは少し違う、私の中のもう1つの自我を取り出したトラックのようでもあります。まだすべてを公開出来る段階ではなく、これからどのように拡張していくか私自身も楽しみにしているプロジェクトです。

—— xiihuさん個人の今後の活動予定についても伺いたいです。

xiihu : 10月には『WHOREMONES』のデラックスアルバムを、11月にはリミックスアルバムを順次リリースする予定です。今年いっぱいは新しいトラックと様々なバージョンの楽曲を通じて、『WHOREMONES』の世界をもう少し拡張してお見せしようと思っています。まだまだ続く『WHOREMONES』の世界を存分にお楽しみください。

—— 日本のカルチャー、特にマンガ・アニメがお好きとのことですが、どういった経緯でそうした作品に触れるようになったのでしょうか。

xiihu : 幼い頃に「ポケットモンスター」が好きだったことをきっかけに、日本の漫画やアニメに自然と触れるようになったのだと思います。私が初めて読んだ漫画として記憶している作品は「シュガシュガルーン」です。その後、少女漫画から少年漫画までジャンルを問わず好きになり、多くの作品を探して見るようになりました。正確にどの作品が決定的なきっかけだったかは覚えていませんが、幼少期から日本漫画特有の繊細な感情表現と強烈なキャラクター、独特な世界観にずっと魅力を感じてきました。

—— 最後に、『WHOREMONES』を聴いているリスナー、xiihuさんのファン、そしてすべての女性たちに向けてメッセージをお願いします。

xiihu : 皆さん、欲しいものを欲しいと言い、要求してもいいんです。生きてみてそう思いました。もちろん私も要求することが得意ではありません。断られたり相手を失ったりするのが怖いですから。それでもどうしようもないですよね。結局は自分が楽しむための人生なのですから、自分の欲望や意見を今よりもう少し素直に出してもいいと思います。相手が受け入れてくれないのなら残念ですが、だからといって自分が望む気持ち自体は間違ってないんですから。

特に女性たちが自分の欲望を抑圧したり恥ずかしがったりしないでほしいです。『WHOREMONES』も私が望むことと恐れていることを同時に素直に話してみようと作ったアルバムです。聴いてくださり、私の素直さを一緒に楽しんでくださってありがとうございます。

■ xiihu:Instagram


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火気厳禁

火気厳禁

韓国音楽ライター、DJ

2018年の年末からK-POPにハマり、韓国音楽(K-POP, K-R&B, K-HIPHOP…)について語るブログを運営。2023年に雑誌『ユリイカ』に評論「K-POPガールズグループにおけるラッパーの系譜——連鎖し、伝播するシスターフッド」を寄稿し、以降、韓国アーティストへのインタビューやアーティスト紹介コラム、ライブレポート、また韓国アーティストの新曲発表に合わせたプレスリリースの作成と配信などを行っています。 2025年よりDJとしても活動を開始し、都内各所のクラブやDJバーにて行われるK-POP, 韓国音楽系のイベントに出演中です。

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