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Shin In Ryu 初来日公演 直前インタビュー|INTERVIEW #66

韓国のインディシーンで煌めく魅力を放つインディロックバンド、Shin In Ryu。

2018年のデビュー以来、誰もが経験する喜怒哀楽の感情と経験、そして穏やかな波のように悲しみを癒す歌詞とパステル調の楽曲で、注⽬を集めてきた。現在までに2枚のEP、多数のシングルを発表し、今年4月には待望の1stフルアルバム『Shining Strike』をリリース。シーンを代表するバンドのポジションを確⽴している。

そんな彼らが、10月12日(日)、タワーレコード渋谷店にて初の来日ライブを行う。記念すべき初来日を前に、彼らにメールインタビューを敢行。バンド結成のきっかけ、幅広い影響源、アルバム『Shining Strike』の制作エピソード、日本でも行われたプレリスニングイベント、そして日本公演の意気込みまで。そのユニークな世界観とストーリーに迫った。

Interview & Text:AKARI(BUZZY ROOTS)
Support:mahocast

—— はじめまして!まずはじめに、Shin In Ryuのことを初めて知る日本の皆さんに向けて、自己紹介をお願いします。

Shin In Ryu:こんにちは。あなたの輝く瞬間を切り取るバンド、Shin In Ryu(シンインリュ)です。私たちは、シン・オンユ(Vo.)、ハ・ヒョンオン(Key.)、ムン・ジョンファン(Ba.)で構成された3人組のバンドです。それぞれ異なる個性とカラーを持ったメンバーたちが集まって一つの物語をともに描き、ステージを彩っています。ロックをベースとしながらも、ポップなセンスと温かいメロディーを取り入れ、時にはアニメーションのワンシーンのように眩しく、時には童話のように純粋で温かく、皆さんに寄り添うような音楽を作っています。

—— メンバー全員が同じ大学の実用音楽科出身だったそうですね。もともとどのような志を持って入学されたのでしょうか? また、どのような流れでバンド結成に至りましたか?

シン・オンユ:自分の好きな音楽がほとんどバンド音楽だということに気づき、「私もバンドをやってみたい」と思うようになりました。大学では音楽を学び、授業で友人たちの音楽を聴いたり、お互いに共有したりする中で、私の音楽を気に入ってくれる仲間に出会いました。その後、セッションを重ねるうちに、自然な流れでバンドを結成することになったんです。

ムン・ジョンファン:バンド音楽が好きだったので、自然とエレキベースを大学で専攻しました。売れっ子ベーシストになりたかったんです(笑)。ところが、いざ大学に入ってみると、僕よりもはるかにうまい友人たちがたくさんいて、将来への不安を感じ、行き詰まってしまって。

そんな時、オンユヌナ(男性が親しい年上の女性に対して使う呼称)と知り合い、ヌナの音楽に触れて「この人と一緒にバンドを組めたら最高だろうな」と思いました。それから、ヌナにバンドをする気があるのかそれとなく探りつつ、徐々に親しくなっていった気がします。そうしているうちにヒョンオンとも自然と知り合い、少しずつ縁が繋がってバンドができました。

ハ・ヒョンオン:もともと私は中学校の頃までクラシックピアノを弾いていました。ですが、単に演奏するよりも、曲を書いて作る方がより幸せなことだと気づき、自然と入試を経て作曲科に入学しました。その時、同期として出会ったのが今のShin In Ryuのメンバーです。オンユオンニ(女性が親しい年上の女性に対して使う呼称)とは、はじめは寮の同じ階に住みながら好きな映画をよく共有し合っていた記憶があります。そこから自然と音楽も共有するようになり、一緒にバンドを組むまでになりました。

—— 皆さんはこれまでどんなアーティストに影響を受けてきましたか? 国内外問わず、教えていただけますと幸いです。

オンユ:私は特にロック、ジャズ、ファンク、シンセポップのジャンルが好きで、韓国のアーティストは3rd Line Butterfly(3号線バタフライ)、Clazziquai、Loveholic、Tearlinerなどを好んで聴いていました。海外ではレディオヘッド、ニルヴァーナ、ラナ・デル・レイ、コリー・ウォンをよく聴きました。

日本のアーティストでは、サカナクション、 Lamp、KIRINJI、Fishmans、高中正義、CASIOPEAをよく聴き、大きな影響を受けてきました。他にも多くのアーティストを聴いてきたので、特定の誰かの影響を受けたと言うのが難しいほど、幅広い音楽に触れてきたと思います。

ジョンファン:僕はShin In Ryuの音楽の中で、ドラムやベースの粘りあるグルーヴが生まれることをいつも期待し、実現できるよう努力しています。ジャミロクワイ、KIRINJIの音楽のリズムやトーンを好んで聴いています。

ヒョンオン:私はスティーヴィー・ワンダー、デイヴィッド・フォスター、KIRINJIがとても好きです。それぞれの曲の中で、キーボードやギター、ベースといった楽器が魅力的に響くようなアレンジを楽しんでいます。「Kaibutsu」という曲の最初のアイデアも、もともとシンセベースを基盤にしたものでした。キーボードでベースラインをなぞって弾くのが好きだったので、自然とそういう形になったんです。

—— 作曲のプロセスはどのように進行することが多いですか? オンユさんが主に歌詞を担当されていますよね。歌詞がとても映像的で美しく、その歌詞を軸にメロディーを纏っていくようにも思えます。ゼロの状態から曲がどのように形を成し、ディテールが作り込まれていくのか気になります。

Shin In Ryu:私たちはアルバムごとに多様なスタイルで曲を作ろうと努力しています。作詞とメロディーは主にオンユが担当し、曲のコード進行やジャンルのアイデアはメンバー全員で一緒に考えます。MIDIを多用する曲ではヒョンオンが中心になって作業し、ジョンファンはベースラインとミキシングを担当しています。

時々一気にアイデアが溢れて、議論が白熱する時もありますが、いろんなアイデアが集まる過程こそが創作する際の大きな助けになります。お互いの個性を活かしてアイデアを出し合っていると、一つの空間の中でまるでリレーのようにアイデアが繋がっていきます。このプロセスのおかげで、私たち自身も自分たちの音楽をより愛せるようになるんです。

—— デビューから6年を経て、初のフルアルバム『Shining Strike』をリリースされました。どんな作品にしようと試みたアルバムでしょうか?

Shin In Ryu:『Shining Strike』は、Shin In Ryuにとっても、ファンの皆さんにとっても、特別な意味を持つ作品です。アルバム全体を通して幅広いスタイルとカラーを表現しつつも、私たちが伝えたいメッセージと感情を一つにまとめようと試みました。

—— 制作時、印象に残った出来事はありましたか?

Shin In Ryu:制作過程で最も印象的だったのは、「私たちが伝えたいことがこんなにたくさんあったんだな」と改めて感じた瞬間です。音やビジュアル面でもたくさん悩み、それぞれの曲に大切に込めました。韓国人の「情」とでも言うべきでしょうか。その過程で、私たち自身も一段階成長した気がしています。

—— トラックリストを見た瞬間、トラック名が日本語の「Kaibutsu」が目に留まりました。紹介文を読むと、是枝監督の映画『怪物』から来ていると記載されていました。どのようにインスピレーションを受け、楽曲が形になっていったのかお伺いしたいです。

オンユ:実はこの曲を作る際、デモと歌詞を準備している時に是枝裕和監督の映画『怪物』を拝見し、その内容が特に歌詞の後半部分に大きなインスピレーションを与えました。映画は家族と社会の境界を越えて、人間の内面の複雑な感情を繊細に描き出しています。はじめはタイトルが「怪物」なので、少し怖いかと思っていたんです。もし映画を見ていなければ、おそらく怪物映画という怖いイメージが先に浮かんでいたでしょう。

「괴물(クェムル)」というハングルの単語自体は、本来不快で馴染みにくい響きがありますが、日本語で「かいぶつ」と書くと、不思議と可愛らしく、親しみやすい感じがするんですよね。だから、私たちの曲もそんなふうに、心の扉を開いて聴いてみた時、ふと心が溶けていくような感覚を味わってほしいと思っています。特に映画の「正体を知らなければ、それはただの怪物になってしまい、正体を知れば、怪物は結局怪物ではなくなる」というセリフがとても良かった。この曲を通して伝えたいのは、「自分の尖った部分も認めて受け入れてほしい。私が愛をもって育ててあげるから」というメッセージです。

みんなが自分の内なる「怪物」を知り、それを可愛らしく感じて受け入れられるように、という思いで作りました。

—— 日本の皆さんに、Shin In Ryuの曲を一曲だけ紹介できるとしたら、何を選びますか? 

オンユ:私は「Home(안식처)」をおすすめしたいです。この曲は私たちが「家」だと考えながら作った曲です。いつでも慰めが必要な時、Homeに頼るように聴いてくださったら嬉しいです。

ジョンファン:「Dilemma(두개의 제안)」を推薦します。この曲はアルバム『Shining Strike』の中で新しく試みたジャンルでもあり、編曲も本当に個性的です! 「Attack!(正面突破)」でShin In Ryuを知った方がいらっしゃれば、「Dilemma」はまた別の新しい魅力として感じていただけると思います。

ヒョンオン:『Shining Strike』の2番トラック「Return to Picnic」という曲をおすすめします。一つ前のトラック「Intro: Shining Strike」との繋がりを強く意識した楽曲で、個人的には日本の4月の天気みたいに感じるんです。

—— 2025年4月には、日韓7会場で『Shining Strike』のプレリスニングセッションを開催しましたね。開催しようと思ったきっかけを教えてください。また、セッションを通してさまざまな反応を受け取ったと思いますが、手応えはいかがでしたか?

Shin In Ryu:アルバムがリリースされると、いつも聴いてくださる方々の反応が気になります。私たちは制作過程でずっと聴き続けているので、ファンの皆さんが初めて耳にした時、どんなふうに感じるのか気になってドキドキするんです。そこで、アルバム発売前に行ったプレリスニングセッションを通して、直接ファンの皆さんの反応を見る機会を作りました。楽曲がどう受け入れられるかをこの目で確認できて、大変良い経験になりました。

特に日本で先行公開するのは初めてだったので、反応がとても気になっていて。予想よりも多くの方々が来て楽しんでくださったという話を聞き、心から嬉しく、ありがたく思っています。すべての様子を直接見ることはできませんでしたが、あの温かい雰囲気と反応を感じられただけでも大きな力になりました。この経験のおかげで、これからももっと多くの方々と音楽を共有したいという気持ちが一層強くなりました。

『Shining Strike』Pre-Listening Session in Seoul

『Shining Strike』Pre-Listening Session in Tokyo

—— 最後に、日本公演の意気込みをどうぞ!

オンユ:音楽は、真心さえ込められていれば、歌詞がどんな言語で書かれていたとしても、聴く人の心に届くと信じています。今回新たに発表した「Attack!」の日本語バージョン「正面突破」も、そんな思いを込めてレコーディングしました。日本のパランセ(”青い鳥”の意。Shin In Ryuのファンダム名)の皆さんにもたくさんお会いしたいです。

私たちが届けるストーリーは、結局のところ、皆さんのストーリーでもあるんです。私たちを一つに繋げてくれるのは音楽であり、愛を歌う心が一つに集まることを願っています。空を見上げると星が輝いているように、私たちが毎日見て、聴いて、感じていることを皆さんと共有し、感じられたら嬉しいです。Shin In Ryuをどうぞよろしくお願いします。

ジョンファン:音楽活動をする上で大きな影響を受けてきた国、日本で公演できることになり、とても楽しみです。日本のリスナーの皆さんが、私たちShin In RyuとShin In Ryuの音楽にたくさん関心をもってくださることを願っています。今回の公演をきっかけに、これからも皆さんと頻繁にお会いできることを楽しみにしています。どうぞよろしくお願いします!!

ヒョンオン:Shin In Ryu初の海外公演を日本でできることになり、とても嬉しいです。一昨年東京旅行に行った時、日本の皆さんがどんな音楽を聴いているのかが気になり、道端で流れている曲をひたすら調べていたんです! 生まれた場所や話す言葉が違ったとしても、音楽という言語は誰にでも直感的に届くと信じています。私たちが日本で音楽を通してシェアするストーリーを、ぜひこれからも楽しみにしていてください!

公演情報

TOWER RECORDS SHIBUYA × mahocast
タワーレコードと韓国音楽ファンとアーティストをつなぐプラットフォームmahocastが協力し、実力ある韓国アーティストを、日本の音楽ファンにご紹介します。最初の第一歩として、韓国のINDIEバンド「Shin In Ryu」が登場。10月12日(日)に、渋谷店でスペシャルライブを実施します。

場所:タワーレコード渋谷店B1F CUTUP STUDIO
日時:10月12日(日)
・1部集合時間 15:30 / 2部集合時間 18:30
・1部開演時間 16:00 / 2部開演時間 19:00
集合場所:1F階段前
出演:Shin In Ryu
イベント内容:ミニライブ&サイン会

対象商品
・アーティスト名:Shin In Ryu
・タイトル:Shining Strike(KOR)<イベント対象商品>
※6月2日(月)発売の商品は対象外です。

参加方法
対象商品入荷時よりタワーレコード渋谷店7Fにて対象商品ご購入の方に先着で「整理番号付き入場券」をおひとり様1会計1枚、「サイン会参加券」をご購入枚数分お渡しします。なおサイン入れはご購入いただいたCDのみです。詳細は、決まり次第タワーレコード渋谷店ホームページ(https://towershibuya.jp/)で発表します。

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AKARI

AKARI

エディター|ライター

1994年生まれの自称、韓国音楽PR大使。インディペンデントな韓国のミュージシャンや業界人を中心にインタビューやコラムを執筆。「韓国の音楽をジャンルレスに届ける」をモットーに、韓国インディ音楽に特化したWEBマガジン「BUZZY ROOTS」の運営や、音楽・カルチャーメディアへの寄稿、広報、DJイベントへの出演、アーティストのアテンドなど、できることなら何でも形を問わず行なっています。プライベートでは、韓国人の夫と結婚し、二人の子どもを出産。子育てをしながら東京とソウルを行き来しています。

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