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韓国のアンダーグラウンドを発信し続ける音楽Youtuber「Mellowbeat Seeker」の素顔|INTERVIEW #1

インターネットの普及、ストリーミングの登場により、ひと昔前と比べて誰もが好きな音楽を多くの人に届けられるようになった時代。簡単に配信が可能になったが故にネットに無数に雑多に散らばる音楽たち。そんなカオスとも取れる状況の中重要なポジションを築いているのが、ある特定のテーマに乗っ取って音楽を束ねることで新しい価値を提供する「音楽キュレーター」と言えるだろう。

今回は、韓国のアンダーグラウンド音楽というニッチなジャンルで54万人以上のYoutube登録者数を掲げ、音楽キュレーターとして活動を続ける「Mellowbeat Seeker」さんにメールでインタビューを実施した。好きな音楽を周りの人に広めたい人、プレイリストに興味のある人、韓国のインディーズシーンに興味のある人は、ぜひ読んで少しでもヒントを持って帰っていただけたら泣いて喜びます。

Mellowbeat Seekerとは

本題に入る前に、Mellowbeat Seekerさんの手がけるチャンネルについて触れておきたい。

2019年8月現在、チャンネル登録者数は54万人超。聴いた途端、「あ・・・好き」と溶ろけてしまいそうなロービートな曲たちが、シティポップを思わせる独特の色使いのアートワークと共に所狭しと並んでいる。

チャンネルの目玉は、なんと言っても24時間ライブ配信を行なっている2種類のコンテンツである。

1つ目は、R&B、Hip-Hopに特化したラジオ。アートワークは、韓国のインディバンド・ADOYのジャケ写を手がけていることでも知られるオク・スンチョル(옥승철)さん。

2つ目は、作業用BGMを目的としたインストメインのラジオです。アートワークはKomel

画面の左上には、アーティストと曲名が載っているため、気になる音楽があれば調べることも可能だ。どちらのライブ配信も思わずリラックスできるLo-fiな音楽ばかり。コメント欄には、韓国国内に止まらず世界各国からのコメントがひっきりなしに投稿されている。目につくのはアラビア語、英語、ハングル。投稿者同士のやりとりも散見され、一種のファンコミュニティをも形成している。

ぜひ、本チャンネルを聴きながら本記事をお楽しみください!

気づいたらインフルエンサーだった

—— 初めまして!まず、Mellowbeat Seekerさんのことは「Youtuber」とお呼びして大丈夫なんでしょうか?

はい、大丈夫ですよ。

—— 差し支えなければ、年齢といつ頃から音楽に関する活動(YouTube)を始めたか教えていただけますか?

年齢は29歳です。YouTubeを始めたのは2015年で約4年前からでした。

—— どうして今のyoutubeチャンネルを始めようと思ったんですか?

最初は、どこでも聞くことができる自分専用のプレイリストとしてYoutubeを活用していました。私の好みの曲を一つずつ保存していったところ、いつの間にか聞いてくれる人が3万人まで増えているんですよ…!私がアップする曲を他の人も好きなんだと思い、なんだか認められた気がして嬉しかったんです。

—— 好きでやっていたことが自分の予想を超えて大きくなっていったのですね。フォロワーが増える前と後で変わったことってやっぱりあるんですか?人の目とか、プライベートの時間の使い方とか。

周囲の視線に関しては、実際に名前を明かしているやっている訳ではなく、アーティストが中心になるので、変わったという体感はないですね。変わった点としては、趣味が仕事になったことが最も大きな変化だったと思います。最近では責任感も生じてきてしまったので、心が少し重いこともあります。

—— Mellowbeat Seekerさんのチャンネルは起用するアートワークにもかなりこだわってますよね!音楽だけじゃなくて、ファッションやアートにも関心が高いとお聞きしたのですが、今まで専門学校に通われたり、何か特別な勉強をされていたんですか?

特に専門的に学んだことはありません。ただ、興味のある分野については、作り方・やり方がわからない場合、何とかとして独学で自分のもの作ろう、という意欲があります。普段の芸術/文化分野に関心が高いのは間違い無いですね!

—— 24時間流す楽曲とアートワークは許可をとって配信してるんですよね。集めるのは相当大変だと思うのですが、全部mellowbeat Seekerさんお一人でやってるんですか?

はい、全部一人でやっています。だから多くのアーティストの方々の音楽、アートワークの提案が舞い込んで来たらすごく嬉しいです…お願いします!

選曲の条件とは

—— 選曲の条件を教えてください。アンダーグラウンドな音楽の中でも、チルミュージックと言うジャンルを選んで配信しているのは何か理由がありますか?韓国ではこういう音楽がはやってますか?

最近流行っているから、他の多くの人が好む音楽だから、という理由でこのジャンルを選んだのではありません。アンダーグラウンドのジャンル自体が「少数の人だけが見つけ出すような音楽」なわけですが、そもそもあまり有名ではない隠れた名曲が個人的に好きだったんです。

条件としては、私の好みに合った曲だけをアップするようにしています。私の好みに合わない場合は載せません。

—— 個人的に好きなアーティストはいますか?

e.viewz」という歌手と「oceanfromtheblue」という歌手の歌がお勧めです。時々無性に聴きたくなって聴いてしまいます。

彼イチオシのアーティストの曲は聴かなければ・・・!と早速聴いてみる。

oceanfromtheblue (오션) – 슈퍼마리오 (Super mario) MV

探していると、好きなアーティストに対してインタビューをも展開しているよう。愛が半端ない。

[INTERVIEW] #4 : E.viewz

音楽は万国共通。海外に対する想い

—— 日本に来たことはありますか?

まだ一度も行ったことがありません。機会があれば大阪や札幌に行ってみたいと思います!韓国では寿司を本当によく食べますよ。

—— 日本に興味を持っていただけているのは本当にうれしいです。ところで、英語で説明文を書いているところを見ると、海外のリスナーも意識した発信をしていると思うのですが、特別な理由があったりしますか?

私は韓国人ですが、音楽は万国共通語だと思ってました。あえて韓国人が、韓国の音楽を聞かなければならない必要はないから。だから韓国人だけでなく、世界中の人々が私のチャンネルを簡単にアクセスできるようにと願って、英語で書いています。

—— 最後に。チャンネル登録者数100万人を目指すとのことですが、ぜひ日本のみなさんにもリスナーになってほしいですよね…?メッセージをお願いします!

はい。私のチャンネルはまだ日本であまり知られてなくて、日本でもよく聴いてもらえるチャンネルになったらと思います。私が選曲した曲は決して悪くないですし、韓国には実力のあるアンダーグラウンドなアーティストが多いという事実が広まれば嬉しいです。いい影響を与えることができれば、胸がいっぱいでうれしいです。

—— この度はありがとうございました!!

Jimmy Brown – Look At Me Now

インタビューを終えて

みなさんでお伝えしておきたいのは、彼の誠実さとマメさである。

インタービュー依頼対して実に快く引き受けてくれたし、依頼後のやりとりに関しても実にスムーズで、返事も驚くほど早い。そして、アーティストを常にリスペクトしており、周囲に対して非常に謙虚な様子がメール越しにも関わらず伝わってきた。

余談だが、最初インタビュー依頼をハングル(と齟齬を減らすために念の為英語)で送った時、わざわざ翻訳機能を使って日本語で「(インタビューに対して)肯定的に考えています」とカタコトで返してくれた。こうしたちょっとした気遣いが本当に上手なお方だった。

彼の性格無くしては、周りの協力を募りながら、ここまで多くの良質なコンテンツを継続してアップし続けることは難しいのではないかと思う。

最後に将来の夢について教えてもらった。

すると、彼はこう答えてくれた。

まずは、コツコツとできること着実に積み上げて行きたい。規模が大きくなってきたら、音楽を流しつつ自主制作したファッションアイテムを販売したりするカフェ、アパレルショップといった複合的な空間を作りたいです。と。

大変身勝手な発言であることは重々承知だが、彼の謙虚さと貪欲さを持ってすれば近い将来実現できるのでは、と思ってしまう。

最後に

現実問題として、新しいアーティストを知るきっかけには限界がある。

そんな悩みを解決してくれる一つの手段がプレイリストであり、Youtubeチャンネルである。趣味嗜好に合わせて『このジャンルが好きなら、こんなアーティストもいるよ』と提案してくれるので、ハマる音楽を負荷なく知ることができるのだ。

韓国の音楽シーンに少しでも興味のある人は、ぜひMellowbeat SeekerさんのYoutubeチャンネルをはじめインスタグラム、SoundCloudをチェックしてみてください。新たな音楽体験が待ち構えていること間違いなしです。

Instagrammellowbeatseeker
SoundCloudmellowbeatseeker

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AKARI

AKARI

エディター|ライター

1994年生まれの自称、韓国音楽PR大使。インディペンデントな韓国のミュージシャンや業界人を中心にインタビューやコラムを執筆。「韓国の音楽をジャンルレスに届ける」をモットーに、韓国インディ音楽に特化したWEBマガジン「BUZZY ROOTS」の運営や、音楽・カルチャーメディアへの寄稿、広報、DJイベントへの出演、アーティストのアテンドなど、できることなら何でも形を問わず行なっています。プライベートでは、韓国人の夫と結婚し、二人の子どもを出産。子育てをしながら東京とソウルを行き来しています。

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