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繊細な自分のままで —— Izyperry『PROOF OF WHAT?』インタビュー|INTERVIEW #75

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シティポップを中心とした「ニュートロ」ブームから、昨今の「Y2K」、「2016」へとリバイバルの対象が徐々に移り変わっている。そんな中リリースされたシンガーソングライター・Izyperry(イジペリー)の新作EP『PROOF OF WHAT?』は、Y2KポップR&Bのキャッチーさと現代的なサウンドを融合させ、そこにセルフラブ的なメッセージを盛り込んだまさしく「懐かしく新しい」作品だ。クオリティの高いトラックと感情を繊細に描写する歌声で注目を集める彼女は、この作品にどんな想いを込めたのだろうか。活動を始めたきっかけやこれまでのキャリア、そして新作EPのテーマについて話を伺った。

Interview & Text:火気厳禁 / kakigenkin

   

—— まず、読者の方に向けて簡単な自己紹介をお願いします。

Izyperry:読者の皆さんこんにちは。私は韓国でポップとR&Bジャンルをベースに活動しているインディーアーティスト、Izyperry(イジペリー)です。こうやってご挨拶できて嬉しいです!

—— Izyperryさんが音楽をはじめたきっかけや、影響を受けたアーティストについて教えて下さい。

Izyperry:子供の頃から歌うことが本当に好きでした。他の歌手の歌を歌うことも好きでしたが、あるとき「結局、自分に残るものは何だろう?」という考えが浮かんだんです。それから自然と、自分の物語を込めた音楽を作りたいと思うようになりました。人は絶えず変化し、考えも絶え間なく変わっていきますよね。その瞬間瞬間の悩みや感情を音楽として記録できるという点に非常に大きな魅力を感じ、音楽を始めることになったんだと思います。

最も大きな影響を受けたアーティストは Sabrina Claudio(サブリナ・クラウディオ)です。歌声ひとつで空間の雰囲気を完全に支配してしまう、彼女独自のムードに本当に魅了されました。音楽を始めたばかりの頃は、彼女のようにムードが強く出るような音楽をしたいと強く思っていました。今は少し違う方向に進んでいますが、依然として私にとっては大きなミューズのような存在です(笑)。

—— Izyperryさんの楽曲において、最も特徴的な点はその歌声です。トップラインの作曲から発声、マスタリングに至るまで、作業するときはどういったことを重視していますか?

Izyperry:私は作業する際、何よりもグルーヴを重要だと考えています。まだ学んでいる途中ではありますが、レコーディングや作業をするときに、トップライン(歌のメロディ)がトラックの中にどれだけ自然に、そしてグルーヴィーに溶け込んでいるかを一番大切に悩むタイプです。技術的な完成度も重要ですが、最終的には身体が先に反応するような感覚がなければならないと思っています。

—— 前作『Until I’m Free』から、ほぼ2年ぶりとなるEPのリリースとなります。前作との違いや、サウンドの面で新しく挑戦したことは何でしょうか。

Izyperry:『Until I’m Free』を発売したのが2024年だったので、もう2年ぶりのEPになりますね! 本当に久しぶりに出すアルバムということもあってか、前作とはかなり雰囲気の異なる作品になった気がします。『Until I’m Free』は全曲を私が単独で作詞・作曲したアルバムで、初めて音楽を始めた当時の方向性や、これまでの人生で感じてきた悩み、そして自分なりに見つけ出した答えを詰め込んだ作品でした。

   

対照的に、今回のアルバムはこれまでのR&Bのムードよりも、ずっとレトロで大胆なポップジャンルに挑戦した作品です。特に今回のEPは、私が大好きなプロデューサーである Gmin さんと全曲を共に制作したのですが、一言で表現するなら……「少し怒っているアルバム」と言えるかもしれません(笑)。前作と比較すると、まるで別人のように感じられるほど雰囲気が変わり、少し「闇落ち」した私の姿を見ていただけると思います。

——『PROOF OF WHAT?』というタイトルの通り、今作のテーマは「自分の感情や感覚を保つこと」です。EPの中でも色々な形でこのテーマが表現されていますが、こうしたテーマを選んだ理由は?

Izyperry:私は自分自身について非常に多くの思考と悩みを重ねてきた人間なので、自分がどんな人間なのかを誰よりもよく分かっていると思っています。しかし、人間関係において最も辛かったのは、相手が私の知っている「私の姿」を見てくれないときでした。また、特に「感情の解像度」が高い人たちがいますよね。私は元々、自分の感情をとても繊細に感じるタイプなのですが、その感情を相手から否定されたり、間違っていると言われたりすることがありました。ですが、人によって感じ方は千差万別だと思うのです。そのようなとき、私はもっと感情的になり、自分を説明しようと躍起になってしまいました。ところがある瞬間、そうやって皆に理解してもらおうとする行動そのものが、むしろ自分を守れないやり方であることに気づいたのです。

実際、すべての人が私自身を完璧に理解する必要はありませんし、あえて私が誰かを説得する理由もありません。だから「すべての人に理解されなければならない」という強迫観念を、少しずつ手放すことにしました。相手が私を誤解したとしても、あえて説明しないようにしたことで、むしろ心はずっと楽になりました。そして何より、私が説明しなくてもありのままの私を理解してくれる人たちがそばにいてくれます。その人たちともっと対話し、愛を分かち合うことで、少しずつ穏やかで幸せに生きていけるようになった気がします。今回のタイトル曲にはそんな想いを込めたかったですし、こうした感情を含め、収録曲にはさまざまな想いを複合して詰め込みました。

—— 歌詞を見ていると、中国語やスキャット(アドリブのフレーズで歌うこと)が入ることも気になりました。歌詞を書く時に意識していることや、ルーティーンなどはありますか?

Izyperry:私は常に歌詞よりもトップラインを先に作業します。そのため、メロディーを組むときに口から出てくるボーカルのガイドの中で、本当に気に入るものが生まれることがあります。あえて具体的な歌詞の単語を当てるよりも、その生身の感じとリズムをそのまま伝えたいときにスキャットを活用しています。また、歌詞に多様な言語が入ると聴覚的により多彩に聞こえると考え、中国語をしばしば歌詞に使うようになりました。

—— YouTube、Instagramで公開されている、夜の街を闊歩するVisualizerも印象的です。ビデオを制作するときのエピソードや、ロケ地選びやスタイリングにおいて注力したポイントを教えて下さい。

Izyperry:私は現在、音楽活動と並行して法務関連の会社で働いているのですが、ある日、会社の近くを通りかかったときに、偶然香港の街並みのような雰囲気の場所を見つけたんです。その瞬間、自然と「自分の音楽にすごく合いそうだ」という思いが浮かび、すぐに撮影場所として決定しました。

さまざまな複合的な感情と、確固たる意志を込めたアルバムなので、Visualizerでも顔のクローズアップを多く取り入れ、自信に満ちた、揺るぎない表情を表現したいと考えました。普段はよく犬っぽい顔立ちだと言われるのですが、アルバムのムードに合わせて、もう少し強くシャープな印象を表現したくて、猫顔に見えるようにメイクもいつもより濃くしてみました。すると、思いのほか周囲から「よく似合っている」と言ってもらえたので、しばらくの間はツンとした猫のままで過ごしてみようと思っています(笑)。

撮影は The sean 監督が担当してくださり、プロデューサーとして活動されている yumetree さんも一緒に手伝ってくださったのですが、当時はアルバムの準備に没頭する中で、私がかなり疲れていた時期だったんです。ですが、お二人が本当に凄まじいエネルギーで現場を引っ張ってくださったおかげで、撮影中はずっと笑いながら楽しく臨めた記憶があります。不思議なことに、撮影も1時間半という非常に短い時間でスピーディーに終わり、終わってすぐみんなでチキンを食べに行きました。振り返ってみると、今年に入って一番たくさん笑った日だったと思います。

—— 収録曲「that’s on me」がApple Musicのプレイリストに選出されるなど、国際的にもリスナーを増やしていますね。リスナーの反応に対してどう思いますか? そして今後の活動における目標を教えて下さい。

Izyperry:本当にありがたいことに、先行シングルの「that’s on me」がApple Musicの公式プレイリストである『Brown Sugar R&B』と『Grown N Sexy』の中に選出され、そのおかげで「リスナーの方々がこういうムードの曲を私の声とよく合うと思ってくださっているんだな」と感じることができました。2025年にシングルをリリースしながら、自分に最も合うスタイルを探していく悩みの中、こういった出来事があり「道に迷わずうまくやれているんだな」と慰められ、その力を受けて今回のEPを無事に準備することができました。

今回のアルバムがエネルギッシュなポップジャンルであるだけに、今後はさまざまな公演のステージで、楽しくてかっこいいパフォーマンスを通じて大衆の皆さんと出会える機会を探したいです。

そして今回のアルバムを制作している間、感情が激しく渦巻いてエネルギーを使い果たしてしまったので(笑)、次回は自分自身をデトックスし、癒やすことができるような、もう少しリラックスして楽しく作業できる音楽を作ってみたいです。

—— 最後に、日本のリスナーに向けてメッセージをお願いします!

Izyperry:私のインタビューを読んでくださったすべての方が、リリースされたばかりの私の新しいEPアルバムをぜひ聴いてくださると嬉しいです。近いうちに日本で直接お会いして、私の歌をライブでお届けできる日が来ることを願っています(笑)。人生とは、音楽であれ何であれ、それぞれの場所で心地よさと幸せを探していく旅路だと思います。私の音楽が皆さんのその旅路において、ほんの小さな楽しみになれたなら、これほど嬉しいことはありません。長い文章を読んでいただきありがとうございました。皆さん、心も体も健康で幸せでいてください!

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火気厳禁

火気厳禁

韓国音楽ライター、DJ

2018年の年末からK-POPにハマり、韓国音楽(K-POP, K-R&B, K-HIPHOP…)について語るブログを運営。2023年に雑誌『ユリイカ』に評論「K-POPガールズグループにおけるラッパーの系譜——連鎖し、伝播するシスターフッド」を寄稿し、以降、韓国アーティストへのインタビューやアーティスト紹介コラム、ライブレポート、また韓国アーティストの新曲発表に合わせたプレスリリースの作成と配信などを行っています。 2025年よりDJとしても活動を開始し、都内各所のクラブやDJバーにて行われるK-POP, 韓国音楽系のイベントに出演中です。

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