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シューゲイズの新星、荒野へ。「爆発が、どうしても必要だった」Ghost Bookstoreの1stフルアルバム|INTERVIEW #83

モダンロック、インディロックを軸にシューゲイズやマスロック、ガレージなど多彩な質感を行き来する音楽性と、文学的な歌詞。その独自のスタイルで注目を集めてきた韓国のバンド・Ghost Bookstore(유령서점/幽霊書店)が遂に1stフルアルバムをリリースし、これまでとはまた異なる新たな一面を披露した。

Ghost Bookstoreは、2023年に結成され、2024年4月にシングル「Children with Starry Blood(별의 피가 흐르는 아이들)」でデビュー。同年10月にはEP『Ghost Bookstore』を発表し、以降ユニクロやVANSといったファッションブランドとのコラボレーションや、雑誌『BIG ISSUE』『Harper’s BAZAAR』での紹介などを通じて、その存在を広く知らしめてきた。ソウルを拠点にしながら釜山や大邱といった主要地方都市でもライブを重ね、2025年には大型フェスへの出演や2度の単独公演、そして東京で開かれた『Any Good Music Here? SHOWCASE!』を通じたクラブツアーも経験。2026年には台湾の『Emerge Festival』に出演、日韓の女性ヴォーカルバンドが集うイベント『nowhere』に出演し2度目の来日公演を果たすなど、活動の場を着実に広げている。

そして2026年6月22日、1stフルアルバム『4 Steps ‘Fore the Spiral』が到着。アメリカ西部劇のコンセプトを掲げ、荒野や馬、カウボーイ、保安官といったウエスタンのモチーフをGhost Bookstoreならではの感性で描き出した全13曲である。夢幻的なバンドのカラーはそのままに、それぞれの曲が一つの物語に沿って展開していく、一本の映画のような没入感を持つ作品だ。

デビューから2年。バンドとして何が変わり、なぜいま荒野へ向かったのか。メンバー4人にメールインタビューで話を聞いた。

Interview & Text:AKARI(BUZZY ROOTS)
写真提供:tapes

キム・スを天才少女だと思っています

—— まずは、Ghost Bookstoreを初めて知る日本の読者に向けて、メンバーそれぞれの自己紹介をお願いします。バンドの中で担っている役割と一緒に教えていただけると嬉しいです!

キム・ス:こんにちは、Ghost Bookstoreのキム・スです。ボーカルとギターを担当しています。

キム・イミル:こんにちは、ベースのキム・イミルです。

カン・ダニエル:こんにちは。ドラムを担当しているカン・ダニエルです!

DD:こんにちは、リードギターのDDです。Ghost Bookstoreではゴスガール担当です(黒い服をよく着ています)。

—— みなさんが音楽と出会ったきっかけは何だったのでしょうか? そしてGhost Bookstoreとして集まる前、それぞれどんな道を歩んでこられたのかも伺いたいです。

キム・ス:父や母の車で流れていた曲が、音楽を聴くようになった最初のきっかけだったと思います。バンド音楽に興味を持った決定的なきっかけは、小学生の頃にジャスティン・ビーバーが好きだったんですが、イニシャルがJBじゃないですか。同じイニシャルのジェイク・バグの音楽をたまたま聴いて、そこからロックを聴くようになったんです。その後はギターを習ったり、バンド部で活動したり、曲を作ったりして、気づけば音楽をやっていました。

キム・イミル:子どもの頃、塾の送迎車で流れていた音楽がきっかけで、音楽に興味を持つようになりました。成長する中で自然といろんなジャンルに触れて、自分でも音楽を作りたいという気持ちがどんどん強くなって、高校生の時からピアノを習い始めました。それからずっと、今まで音楽を作り続けています。ベースはGhost Bookstoreを始めてから、初めて弾きました。Ghost Bookstoreの直前は、ゲーム会社に勤めてサウンドの仕事をしていました。

カン・ダニエル:母が僕の小さい頃から聖歌隊や合唱団にいたのですが、それが僕の音楽の出発点だったと思います。その後、耳に馴染んでいた曲が気になって一つずつ調べて聴くようになり、13歳の時にドラムに興味を持って習い始めてからは、もっといろんなジャンルを聴くようになって、今に至ります。

DD:私は趣味でエレキギターを弾いていました。ベースのイミルと一緒に、別のバンドを組んでいた友人の紹介でGhost Bookstoreのメンバーになりました。

—— Ghost Bookstoreの歌詞は「文学的」と評されています。実際に歌詞を書く時、どんなことを意識されていますか? 言葉や表現を選ぶ基準、あるいは普段よく読む本があれば、ぜひ教えてください。

キム・ス:歌詞を書く時は、その曲に合う言語や言葉を選ぶようにしています。1stフルアルバムに入っている「ChatterBox(수다쟁이/直訳:おしゃべりな人)」は、もともと日本語で歌詞を書いた曲なんです。うまく説明できないのですが、曲ごとに私の中で感じるムードがあって、それに合う言葉が自然と浮かんでくるタイプで。無理に絞り出そうとするといいものにならない気がするので、本や映画、ドラマ、漫画などに日頃から触れて、自然に言葉が出てくる状態をつくるようにしています。東欧からロシアあたりの文学が好きで、最近は『サタンタンゴ』を読んで、とても心に残りました。

—— これまでのGhost Bookstoreの楽曲の中で、みなさんそれぞれが一番好きな歌詞のフレーズを教えていただけますか? その歌詞がなぜ心に残っているのかも、あわせてお聞かせください。

キム・ス:「Elevator(엘리베이터/直訳:エレベーター)」の「通り過ぎた川辺に吹く風は いつも/私を憎んでいるみたい(지나쳤던 강가에 부는 바람은 언제나/나를 미워하는 것 같아)」。理由はわからないのですが、歌うたびに胸がきゅっと痛くなるんです。

キム・イミル:「Ranch House」の「足のない馬車に乗り込む幽霊よ/蹄の音のしない荒野を思いきり駆けろ(발이 없는 마차 위에 올라타는 유령아/발굽 소리 나지 않는 황야를 맘껏 달려라)」 。イメージが強烈で、いちばん記憶に残っています。

カン・ダニエル:「Eddy」の「Now I can say/I was faded but now I’m ready」。激しく吹き荒れる中で決意を固める歌詞なので、気に入っています!

DD:「Ghost Bookstore(유령서점/幽霊書店)」の「あなたが望んでいた物語の結末を/すべて知ってしまっても/私をもう一度訪ねてきて(그대가 바랬던 이야기의 결말을/다 알게 되고 나도/나를 다시 한번 찾아줘요)」という歌詞が好きです。歌詞のとおり、私たちのことをもう一度訪ねてきてくださいね!

—— みなさんの音楽的なルーツを伺いたいです。普段好んで聴いている音楽を教えていただけますか? 海外のアーティストはもちろん、韓国国内のミュージシャンについても伺いたいです。

キム・ス:英米圏のインディロックから入ったのですが、今は日本の音楽をジャンル問わず本当にたくさん聴いています。しかも聴くジャンルが毎回すごく変わるんです。最近はハナレグミと嵐を聴いています。「Step and Go」が本当に好きです。

キム・イミル:僕も英米圏のインディロックをいちばんよく聴いていました。Lucy RoseやIron & Wineのようなアーティストが好きで、一時期はMúmやamiinaといったアイスランドの音楽にどっぷり浸かっていた時期もあります。いちばん好きなジャンルはスロウコアです。日本でいちばん好きなバンドはThe Birthdayです。「いつだってOh Yeah! って叫んでれば/きっとうまく行くさ。Oh! Yeah!」

カン・ダニエル:学生の頃から、聴いて心地よければ何でも聴いてきたと思います。英米圏のポップスに始まって、カントリーやフォーク、ジャズに至るまで幅広く聴いてきました。最近は韓国の00〜10年代のインディロックをまた聴き返しています。日本のアーティストではコトリンゴさんがいちばん好きです。

DD:私はThe Smiths、The Stone Roses、Suede、Blur、The Charlatansなど、80〜90年代のイギリスの音楽がいちばん好きです! 好きなジャンルはやはりブリットポップとマッドチェスター、そしてシューゲイズ。日本のバンドではFishmansやBoat、Corneliusをよく聴いていて、いちばん好きな日本のバンドは、一緒にライブをしたこともあるLuby Sparksです。

—— Ghost Bookstoreは、イミルさんがキム・スさんの作った曲を聴いて、それを世に出したいと思ったことから始まったとEP『Ghost Bookstore』の紹介文で読みました。そうして始まったバンドが、今では音源はキム・スさん主体で、ライブは4人で一緒に作っていく形になっているそうですね。最初にキム・スさんの曲を聴いて一緒にやろうと思った時の気持ちだったりその関係性は、今も変わらず続いているのでしょうか? またキム・スさんは、自分の曲が他の3人を通してライブとして完成していく過程を見て、どんなお気持ちですか?

キム・イミル:曲は今もキム・スが主に作っているので、最初の関係性はそのまま続いていると思います。バンドがより強くなってから出したアルバムだからか、1stフルアルバムの曲では、以前より演奏を楽しめるようになりました。ライブを楽しむってこういうことかとようやくわかってきた気がします。

カン・ダニエル:僕も最初の頃のまま続いていると思います。ライブでも、それぞれが個々にプレイするのではなく有機的につながるように意識しているからか、公演の時にその感覚をよく感じます。

DD:今も変わらず、キム・スの作る音楽は本当に素晴らしいですし、4人での演奏やライブはいつも楽しいです。キム・スが読んだら恥ずかしがると思いますが、私はキム・スのことを天才少女だと思っています。

キム・ス:(私の曲が3人を通じてライブとして完成していくのは)うれしい気持ちです。時間が経つほど、ライブでメンバーそれぞれの色がはっきりしてきて面白いです。

爆発がどうしても必要だった

—— 2024年のシングル『Children with Starry Blood』でデビューされてから、楽曲リリースやライブを重ねて、ついに1stフルアルバムがリリースされましたね。デビュー時から今までを振り返って、バンドとして一番大きく変わったと感じる部分はどこでしょうか?

キム・ス:今は一緒に歩んでくれるレーベル(tapes)もありますし、以前より私たちのために動いてくださる方が増えたことが、いちばん大きな変化です。いつも感謝していますし、その分バンド活動により集中できるようになったと感じています。

キム・イミル:以前はメンバー4人だけがGhost Bookstoreでしたが、今は私たちを支えてくださるすべての方がGhost Bookstoreだと感じています。レーベルのスタッフさんをはじめ、写真家、企画者、エンジニア、ライブハウスのオーナー、そして同じシーンのアーティストまで、みんなGhost Bookstoreの一部のように思えるんです。いつも心強いです。こうしていただいた応援や助けを、いつか自分もお返ししたいと思っています。

カン・ダニエル:メンバー同士の結びつきもより強くなりましたし、支えてくださる素敵な方々のおかげで、いいライブをするための準備により力が入るようになったと思います。

DD:どんどん結びつきが強くなって、私たちだけの色を作れるようになってきたことが、いちばん大きな変化だと思います。韓国国内だけでなく、海外の多くの方がGhost Bookstoreの音楽を聴いてくださっているのも本当に興味深く、ありがたいです。

—— 2026年6月にリリースされた1stフルアルバムは13曲、「Ranch House」で始まり「Farewell」で終わるアルバムです。その舞台がアメリカ西部劇というのは、私が個人的に抱いていたGhost Bookstoreの印象とは異なっていて、意外性を感じました。このコンセプトは、どんなきっかけから生まれたのでしょうか?

キム・ス:もともと好きだったイメージでもありますし、そういうコンセプトをやってみたかったんです。それに、荒野や砂漠といった空間をサウンドに置き換えることについてもアイデアがたくさんあって、音楽的にうまく展開できそうだと思ったので選びました。

—— リード曲「Sad Song(비가)」は、これまでのGhost Bookstoreでは聴いたことのない、荒々しく畳みかけるような曲です。これまでは感情を爆発させるよりも淡々と抑えて詰め込む方に近いと感じていたのですが、なぜこの曲でそれを爆発させることにしたのでしょうか?

キム・ス:このアルバムのストーリーには、爆発がどうしても必要だったと思います。

—— 1stアルバムを作る中で、あるいは作り終えて、これからのGhost Bookstoreにとって新しい方向性が開けたと感じる部分はありますか? 今回のアルバムが、次の制作にどうつながっていきそうか気になります。

キム・ス:次の作品には、次の作品なりの魅力があるんじゃないかと思います。私たちのいちばんの特徴のひとつは、いろんなジャンルを扱っていながら、その曲すべてを「Ghost Bookstore」というキーワードでひとくくりにできることだと思っていて。この部分は、1stフルアルバムでそうしたように、これからも活かしていくことになると思います。今と同じように、自分たちが作りたいと思った音楽を作っていくはずです。

   

    

あの日から日本語を習い始めました

—— 普段から、日本のコンテンツやカルチャーに触れる機会はありますか? 音楽はもちろん、映画やアニメ、本など、どんなものでも構いません。最近の興味関心を教えてください。

キム・ス:私が普段いちばん多く観ているのは、実は日本のコンテンツなんです。最近は戸田恵梨香さんが大好きで、出演作を全部追いかけています。この前は『ライアーゲーム』を観ました。あとはバラエティ番組『オモウマい店』を観ています。すごく面白いです。

キム・イミル:僕も日本のコンテンツ全般が好きです。漫画、アニメ、ドラマ、映画をいつも楽しんで観ています。『コントが始まる』が面白かったですし、最近は上野樹里さんの出ている映画が面白いですね。あとは、ポケットモンスターをはじめ、日本で作られたゲームが好きです。フロム・ソフトウェアのゲームは全部、かなりの時間プレイしましたし、最近は『バイオハザード』と『モンスターハンター』のシリーズをやっています。それから、食事のたびに『オモウマい店』や『孤独のグルメ』を観ています。

カン・ダニエル:日本の文化に憧れていて大好きです。ドラマでは『深夜食堂』と『リーガル・ハイ』が好きで、『南極料理人』は何度も繰り返し観るほど、堺雅人さんが本当に魅力的だと思っています。あとはジャズが好きだからか、村上春樹さんの『ポートレイト・イン・ジャズ』を読んだ記憶があります。

DD:私は日本のお茶とデザートの文化がとても好きです! 日本に旅行するたびにルピシアの紅茶をスーツケースいっぱいに買って帰りますし、家でも普段から抹茶を点てて飲むのが好きです。いちばん好きな日本のデザートはあんみつ! 日本の漫画もたくさん読んでいて、岡崎京子さんの作品が好きです。最近は『ヒストリエ』を読んでいます。

—— 2025年5月、『Any Good Music Here? SHOWCASE!』での初来日公演から1年以上が経ちましたね。あの時に出会った方々や、あの経験で今も続いていることはありますか? 音楽への向き合い方の変化や、意識的に続けていることなど、どんなことでも教えてください。

キム・ス:初めての海外公演だったのですが、学ぶことがすごく多かったです。あの時日本で出会った友人たちとは、今もときどき連絡を取り合っています。

キム・イミル:日本のバンドの実力に驚きましたし、シーンの盛り上がりも肌で感じました。それだけ音楽を愛する気持ちが強いんだと思いました。あとはやはり、いろんな人と知り合えたことが一番よかったです。イベントの主催の方をはじめ、BUZZY ROOTSともあの頃にご縁ができましたし、一緒に出演したバンドとは今もずっと連絡を取り合っています。今年の初めに「nowhere」というイベント出演のために日本に行った時も、Buddha Janeのライブを観に行きました。Retronym(下北沢のライブハウス)にもまた遊びに行きました。どこにいても音楽で繋がっているという感覚が本当に心地よいです。

カン・ダニエル:日本での初ライブを通して、多くを学び、たくさんのことを感じて帰ってきた記憶があります。初めて海外でいろんなバイブスに触れられた時間でした。それと、あの時を境に日本語を習い始めました。もう1年とちょっとになりますね。

DD:私がいちばん好きな日本のバンド、Luby Sparksと一緒にライブができて、本当に幸せな時間でした! 一緒に出演した翌日も、私たちのライブを観に来てくれたLuby SparksのNatsukiさんにこの場を借りてお礼を伝えたいです。夢のような時間でした。機会があれば、韓国でもぜひ一緒にライブをしたいです!

   

   

—— 最後に、みなさんの今後の計画や目標を教えてください!

キム・ス:音楽を作ることほど楽しいことはないと思っています。もっといい音楽をたくさん作ること、それが私の目標です。

キム・イミル:心も体も健康でいること、楽しく音楽を作ること、そして幸せに生きることです。(あと、バイオハザードをやっていたらホラーゲームが作りたくなりました。いつか挑戦してみます!)

カン・ダニエル:音楽を含むすべてのことに全力で取り組み、楽しく、一生懸命に生きていきたいです。

DD:「DDならDDらしく生きよう!」これが私の座右の銘です。これまでどおり音楽と文学とお茶を愛して、好きなことを思いきりやりながら生きていきたいです。

◼️ Ghost Bookstore:Instagram


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AKARI

AKARI

BUZZY ROOTS 主宰

1994年生まれの自称、韓国音楽PR大使。インディペンデントな韓国のミュージシャンや業界人を中心にインタビューやコラムを執筆。「韓国の音楽をジャンルレスに届ける」をモットーに、韓国インディ音楽に特化したWEBマガジン「BUZZY ROOTS」の運営や、音楽・カルチャーメディアへの寄稿、広報、DJイベントへの出演、アーティストのアテンドなど、できることなら何でも形を問わず行なっています。プライベートでは、韓国人の夫と結婚し、二人の子どもを出産。子育てをしながら東京とソウルを行き来しています。

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