Korean Indie Music and Culture

TAG LIST
INTERVIEW

声真似少年が辿り着いた “50の声”。CHOIYUDAMが語る、 “ジャンル自由化”という創作の根源|INTERVIEW #79

■ 본 기사를 한국어로 읽고 싶으신 분은 [여기]에서 확인하실 수 있습니다.

近年着実に評価を高めているオルタナティブ・ポップアーティスト・CHOIYUDAM(チェユダム)。彼の最新作『SUNTAN』は、享楽的なサウンドと共にひと夏の開放的なムードとその裏にある虚勢や弱さを描いた傑作アルバムだ。アートコレクティブ〈Genre Freedom〉や、ISSEI TERADAとの国境を越えた共作など、活動の場を拡大し続けている彼へのメール・インタビューが実現。自身の弱さに向き合いアートを追求する、彼の唯一無二な創作の根源に迫った。

Interview & Text:火気厳禁 / kakigenkin



—— CHOIYUDAMさん、こんにちは! まず、音楽を始めるきっかけとなった体験や、現在の「ジャンルを自由自在に行き来するスタイル」を形作った決定的なインスピレーションについてお聞かせください。

CHOIYUDAM:こんにちは!はじめまして。僕は韓国で音楽をしている、CHOIYUDAMです。

僕には重度のADHDがあります。当然、幼い頃の育児の難易度は相当なものだったでしょう。母は僕の血の気を抑えるために、合気道、囲碁、そろばん、水泳などあらゆる習い事に通わせ、最後に「あ、この子にぶっ叩くようなことをさせれば少しは力を抜けさせられるんじゃないか?」と思って12歳の時に通わせてくれたドラム教室が、僕のすべての音楽人生の始まりでした。あれこれ学びながら、最終的には自分だけのものを作り出すことにものすごい興味を感じました。

「ジャンルを自由自在に行き来するスタイル」という修飾語をつけてくださり感謝します。実は僕が音楽をやる、そして向き合う方式において、あれもこれも全部やらなきゃと特別に意識はしていないような気がします。ただ僕の興味は浅く広いのに、欲まで多いんです。ある時はロックスターに、ある時はヒップホップ戦士に、ある時はYMOのような電子音楽家になりたくなります。それがしょっちゅう勝手に変わるだけなんです。やりたいことを全部混ぜ合わせて、自分ですらそれが何なのかよく分からないものを作る時、とんでもない楽しさを感じます。

—— CHOIYUDAMさんの作品を聴いていると、まず多様なボーカルスタイルが印象に残ります。どういった経緯で今のスタイルに行き着いたのでしょう?

CHOIYUDAM:「Fifty Shades of Grey(※)」のように、「CHOIYUDAMの50の声」。僕は本当に50種類の声を出すことができます。僕は幼い頃から、そして今でも声真似を楽しむのが好きです。歌真似もよくやります(特にアンダーソン・パーク、プリンス)。 政治家(主に大韓民国の大統領)、俳優(『パラサイト』のソン・ガンホの声真似が得意です)、歌手、知人など、上手くはできなくても楽しんでやっています。 でも意外にもそれが、自分とは違う声の出し方やキャラクターを体得するのに大きな助けになったんですよね。

そして一番大きな理由は、 フィーチャリングでのコラボをするより、ただ自分で違うキャラクターを演じるような形でやる方がいろいろと楽で、一人で解決していたのが今に至ったからだと言えます。 今も昔も僕は金がないんですよ。

    

—— 最新アルバム『SUNTAN』は、冴えない男性が一念発起して夜の街に繰り出す一夏のストーリーを描く作品でした。改めてアルバムのコンセプトと、制作において力を入れた点を教えてください。

CHOIYUDAM:僕、CHOIYUDAMは、実はこのアルバムで強調している「fuckboy」とは正反対の人間です。誰かと体だけの関係も持ったことがありませんし、持ちたいという意志もありません。 パニック障害のせいでクラブやパーティで遊ぶこともなく、夜の2時になればすぐに眠たくなる人間です。ただ落ち着いた異性に出会いたい、1人で過ごすのが好きな”草食系”に過ぎませんが、理性と本性は違うものなんです。 ですが、常に寂しさに敏感だと自分自身で思っています。異性から人気のある人間になりたいという漠然とした虚栄心が、夏という熱い歓楽の季節と出会い、アロハシャツ、妙なサンバイザーとサングラスを身につけた怪しいキャラクターとして生まれたわけです。

制作で力を入れた部分については、僕はこのアルバムを2026年のオルタナティブ・サウンドの総集編にしたいと思っていました。デパートのようなアルバム、多様なスペクトラムのサウンドが込められなければなりませんでしたが、その行き着く先は夏という季節、そしてさらに発展させてCHOIYUDAM自身になること。アルバムが散漫にならないためには、 絶対に圧倒的にサウンドが良くなければならず、この目まぐるしい変化を支える1つの主たる感情や情緒が確立されていなければなりませんでした。僕はそれが結局「寂しさ」だと思います。先の私の考えと同じですよね。

どれだけパーティで熱い夜を過ごしても、自分に残ったのは二日酔いと、ダサく異性にすがりつく醜い姿、そしてボロボロになった心と体だけ。

『SUNTAN』の華やかな外見、圧倒的なプロダクション、サウンドをまず受け止めた後、それをもう少し掘り下げていくと物語が見えてきます。その物語は単純です。「CherryboyのFuckboy挑戦記」という、ある意味突飛な物語です。誰もが内面に持っている虚栄心、その原因となる非常に貧弱な自尊心をコメディっぽく解き明かしました。これは誰もが共感する物語だからこそ、自分の話をただ自分の話としてだけ聞こえないように、むしろ自分に過度にとらわれないようにしたのが、制作過程において持っていた考えでした。

—— アルバム『SUNTAN』は曲ごとにジャンルやテンションが激しく変化しますね。CHOIYUDAMさんを初めて知るリスナーに、現在のCHOIYUDAMさんを紹介する『最初の1曲』を選ぶならどれですか?その理由も併せて解説をお願いします。

CHOIYUDAM:このアルバムに収録されている騒がしいパーティ・バンガーや、ある意味鳥肌が立つほど切ないラブソングたちを通り過ぎて、『Good day!』という10番トラックを選びたいのですが、こんな歌詞があります。

僕は
 そんなに多くを望んでるわけじゃない

……いや
 本当はそうじゃないのかもしれない

穏やかな朝

穏やかな眠り

少しだけ
 心を休められる場所

僕らは
 そんな未来を信じてたよね?

すべて虚栄心や嘘で覆われた偽物の「Fuckboy」を演じていたCHOIYUDAMがその虚勢に疲れ、結局自分が望んでいるのは実は熱い一夜などではなく、少し退屈かもしれないけれど穏やかな生活、家庭のある生活、 持続可能な生活なのだと気づき、初めて本音を見せる曲です。 別れた僕の元恋人に伝えたかった、そしてその時の後悔でいっぱいの自分に届けてあげたかった本心ですね。

「僕たちは本当は永遠だと思ってた。でもどうしてこうなっちゃったんだろう?」

—— 前作『EVE』で描いた冬の孤独から、今作『SUNTAN』では虚勢をモチーフにしています。いずれも自身の内面にある弱さを直視する姿勢が貫かれていると感じますが、CHOIYUDAMさんは「弱さ」を描くことにどんな意味や価値を見出していますか?

CHOIYUDAM:僕は自分自身の脆弱さを認めることが、人間が強くなるための始まりだと思っています。僕は音楽でストーリーを伝えたい人間なんです。 音楽が媒介としてあるだけに過ぎません。まるで日記のように、自分の音楽に現在の自分を込めることに集中します。この過程で自分を振り返ることになり、成長していくのだと思います。

僕が自分の音楽に自分の話を包み隠さず、ある意味愚痴を吐き出している理由は単純です。 強くなりたいからです。
ただこの強さは身体的な概念だけではなく、 自分の大切な人、愛、同志、家族、そしてさらに進んで自分自身を守り抜くことのできる強さです。

—— CHOIYUDAMさんが参加しているアートコレクティブ〈Genre Freedom(ジャンル自由化/장르자유화)〉は、音楽だけでなく視覚的な表現も重視するユニークな活動体です。韓国のリスナーにもまだこのチームの全貌が掴めていない方も多いと思うのですが、この集団を結成した経緯や他のメンバーについてお聞かせください。

CHOIYUDAM:〈Genre Freedom〉は、お互いのライブや音楽に触れ、撮影などで集まる中で自然と結成されました。僕、そして〈Genre Freedom〉のすべてのメンバー(ペク・サンハ、huka、美術監督キョン・ジョンファ、撮影監督イ・ヨンハ、企画者兼写真家チョ・ギュドン)は、音楽、映画、写真など明確に自分だけの独創的なスタイルを持っているアーティストたちです。

ヒップホップ、ロックなど明確なジャンルという名目のもとに作られた「シーン」が僕たちにも必要でしたが、どこにもそれは存在しませんでした。端的に言えば、僕が曲をリリースした時、これをヒップホップチャンネルに広告を任せるべきか、それともロックチャンネルにするべきなのか、自分ですら判断がつかなかったんです。だから僕たちは自分たちの遊び場、シーンを自分たちで作ろう、という結論に至り、 そうして作られた集団が〈Genre Freedom〉でした。僕たちのモットーは、「行き場を失ったさすらいのオルタナティブ・アーティストたちの遊び場」を作ることです。

今年3月にハプチョン(합정/合井)で『Genre Freedom Vol.1 – 展示会』という公演を盛況のうちに開催し、その後も公演の企画や音源のリリースなど様々な活動を並行しながら精力的に活動を進めており、 また現在は12月頃の公演を目標に、『Genre Freedom Vol.2』公演の企画に入っている状態です。これを見ているさすらいの音楽家(音楽バカ)たち、ぜひ注目していてください!そして〈Genre Freedom〉に合流してください。

僕たちみんなで一緒に革命を起こしましょう。

—— チーム名と同じ名前のアルバム『Genre Freedom』について、こちらも独特のポップなセンスが感じられます。ペク・サンハさん、hukaさんとの制作時のエピソードやアルバム全体のコンセプトについて教えてください。

CHOIYUDAM:『Genre Freedom』の一番メインとなるキーワードは「純粋」、そして「遊び場」と説明できるかと思います。このアルバムのカバーアートでもそれを見ることができますが、僕たちは白いランニングシャツを着ており(純粋)、公園の遊び場にいます。僕たちが遊び場のように楽しく作り上げた楽曲のエナジーが、聴く人に伝わればいいなと思いました。

Genre FreedomのフロントマンであるメンバーのCHOIYUDAM、ペク・サンハ、hukaの3人全員が、 ボーカル、ラップ、ミキシング、マスタリング、編曲、演奏が可能であり、全員が自分で音楽のすべてを作り上げることができるアーティストです。複数の作業をするのは当たり前ですし、それだけでなく、僕たち3人はチームでありながら、お互いの芸術的感性が一切重なりません。それほど彼らは唯一無二のアーティストです。

この3人が集まったことで、予想もしなかったシナジーが生まれたんですよね。楽曲の制作スピード、アイデアのブラッシュアップ、そのすべてにおいてです。 作業は3回ほどhukaの作業室で、私の作業室で1回ほど集まったのがすべてです。マスタリングも1日で終わらせました。9曲入りのフルアルバムを2ヶ月で作り上げました。アルバムカバー、ビジュアライザー、ミュージックビデオなどすべてをです。 本当に信じられないほどのスピードです。1人だったら絶対にできなかったでしょうね。制作しながら不思議な作業でした。

—— そんな『Genre Freedom』には「Harajuku Pants」という楽曲も収録されていますが、7月には大阪で初の来日パフォーマンスを披露されました。現地の空気感やオーディエンスの反応はどうでしたか?

CHOIYUDAM:ステージに立つ時、僕が緊張することはありません。 大阪の時を除いては。

やはり僕にとってはアウェイ(異郷)での経験ですから、これから自分に起こることがどうなるのか予測がつかなかったんです。 目をぎゅっと瞑ってステージに上がりました。 

歓迎してくださいました。ステージに上がるやいなや、皆さんが聴かせてくれた力強い歓声を聞いた瞬間、 僕はすぐにゾーンに入りました。ああ、心配が一気に吹き飛びましたね。遊ばなきゃと。 いつもそうしてきたように、すべてのエネルギーを燃やし尽くしました。

本当にありがとうございます、皆さん。

僕の考えでは、大阪は世界で誰よりも熱い人たちがいる場所だと思います。 僕はその熱さが大好きです。愛してます。

—— 今後リリースされるISSEI TERADAさんとのシングル「RAMUNE」は、国境を越えたコラボレーションとなりました。音楽的な言語が異なるアーティスト同士での制作過程において、どのような化学反応や面白さを感じましたか?

CHOIYUDAM:自分の国とは違っても、人の生き方は同じなんだな、という発見をすることがとても好きなんです。だから僕は旅行に行く時、あえて世界的なフランチャイズ(マクドナルドのようなお店や、吉野家)に行ったり、宿を取る時も完璧な観光地ではなく、住宅街に近い場所を選んだりします。

今回の大阪、そしてISSEI兄さん(형)との作業経験もそうでした。もちろん言語も文化も違ってすべてが初めてでしたが、かっこいい音楽、そしてビデオを作りたいという目的は同じだったので、ChatGPTを使いながら、カッコいいアートを作るために努力しました。

音源の作業を終えてミュージックビデオの撮影や公演のために大阪へ飛び、 緊張していた僕が実際にお会いしたISSEIさんは、とても親切な方で、 言語が違うだけの、陽気でカッコいいアーティストであり兄貴でした。 本当に嬉しかったです。とても素敵でかけがえのない縁を経験しました。

「RAMUNE」という楽曲、たくさん愛してください!!

—— 最後に、日本や韓国のリスナーへメッセージをお願いします!

CHOIYUDAM:最近、 あふれるほどの愛をくださりありがとうございます。 愛しています。
僕の歌があなたにとっての愚痴になり、 僕の愚痴が誰かにとっての賛歌になりますように。

ありがとうございました!!

CHOIYUDAMInstagram


関連記事

若きAfrobeats R&Bの歌姫・Renée、初フルアルバム『LUST』を語る|INTERVIEW #77
気合がなきゃ死体。KOREANGROOVEが仕掛ける、K-HIPHOPの新しい音色 “K-808″|INTERVIEW #76

🔖 タグ:CHOIYUDAMInterview

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
火気厳禁

火気厳禁

韓国音楽ライター、DJ

2018年の年末からK-POPにハマり、韓国音楽(K-POP, K-R&B, K-HIPHOP…)について語るブログを運営。2023年に雑誌『ユリイカ』に評論「K-POPガールズグループにおけるラッパーの系譜——連鎖し、伝播するシスターフッド」を寄稿し、以降、韓国アーティストへのインタビューやアーティスト紹介コラム、ライブレポート、また韓国アーティストの新曲発表に合わせたプレスリリースの作成と配信などを行っています。 2025年よりDJとしても活動を開始し、都内各所のクラブやDJバーにて行われるK-POP, 韓国音楽系のイベントに出演中です。

  1. 矛盾し、歪んだ欲望について —— xiihu EP『WHOREMONES』|INTERVIEW #81

  2. WOMEN GET PERVERTED —— xiihu EP [WHOREMONES]|INTERVIEW #81

  3. 声真似少年が辿り着いた “50の声”。CHOIYUDAMが語る、 “ジャンル自由化”という創作の根源|INTERVIEW #79

RANKING
DAILY
WEEKLY
MONTHLY
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7

RELATED

PAGE TOP
毎月届く、音楽好きのための
韓国インディ通信。
ニュースレターを購読する