新進気鋭の韓国ミュージックを国内に紹介するレーベル〈Bside〉。韓国音楽シーンを盛り上げているアーティストの既発曲からセレクトし、バイナルカットするプロジェクト「Bside K-Indies Series」の第4弾が2月24日にリリースされた。今回リリースしたアーティストは、女性シンガーソングライターのStella Jang(ステラ・チャン)、Sunwoojunga(ソヌ・ジョンア)、Minsu(ミンス)。
BUZZY ROOTSでは、3アーティストのインタビュー記事を順次公開。
作詞作曲、楽器演奏からラップまでをこなす音楽的才能、そしておよそ11年にわたる留学生活で磨きあげた知性で一般大衆とリスナー、音楽評論家の心を同時に掴んだ91年生まれのシンガーソングライター・Stella Jang(ステラ・チャン)。
中学生から単身フランスへ留学。異国での目まぐるしい生活を送る中で、彼女を癒したのは幼少期から親しんでいた音楽だった。高校生の時はBIGBANGに影響を受けてラッパーを目指し、アマチュアヒップホップコミュニティに入っていたこともあったそうだ。大学入学前ごろからギターで本格的に作曲を始め、2014年に発表した『Dumped Yesterday』がネットで熱い反応を得たことをきっかけに歌手の道を歩み始める。大学では工学を学びながらも、有志で立ち上げたミュージカルサークルなどで音楽の才能を発揮し充実した学生生活を過ごした。そして学業を終えて帰国した2016年、メジャーデビュー作となるEP『Colors』を発表。近年では個人活動だけでなくドラマやウェブトゥーンのOST参加、またBTS「Friends」をはじめとする楽曲提供やフィーチャリングなど幅広く活躍している。
『Colors』発売から3年が経った2019年夏、収録曲「Colors」がTikTokやSNOWを通じて海外でブームを巻き起こし一躍名前が知られることとなった。また、自身のYouTubeチャンネルに日々投稿している名曲カバーや特技の外国語を披露した映像、Vlogなど飾らないありのままの姿を写した動画たちがネットで反響を呼び、今では国内を超えて海外のファンも数多く抱えている。
以前のインタビューで”日常がミューズ(出所:bnt NEWS [인터뷰] 멜로디를 찾아 헤매는 방랑자, 스텔라장)”と語った彼女は、日々の生活で得たインスピレーションを、口ずさみたくなるキャッチーなメロディーと素直な歌詞で表出する。フランス音楽との融和性も感じられる柔らかく軽く抜けるような歌い方や、高レベルのラップスキルがそこに加わることで親しみやすさの中にどこか新鮮さを感じる音世界を作り上げる。
ジャズ・アコースティックからポップスまで、心弾むような楽曲だけでなく、時に妖艶で、時に物寂しくもあったりとStella Jangの音楽というパレットには無数のカラーが並んでいる。デビューから現在まで、GeeksやJa Mezzなどラッパーが数多く所属しているレーベル《GRDL》で活動しており、Olltiとコラボした「Cheerleader」やMad Clown(マッドクラウン)と共に発表し、オンライン音源チャートで1位を記録した「No Question」など、ヒップホップのジャンルでもその才能を発揮している。
また、一昨年よりパク・ムンチ、CHEEZE、LOVEYと共に1990~2000年代のアイドルを彷彿とさせるコンセプトのガールズグループ・CSVCのメンバーとしてグループ活動も並行して行っており、シンガーソングライター活動とはまた違う魅力をみせている。
音楽活動に加え、テレビ・ラジオ番組でも活躍中。持ち前の知性と表現者らしいユーモアな感覚で一目置かれる存在となっている。長い外国生活や音楽以外の分野に取り組んできた経験豊富さは他のアーティストと異なる魅力を放ち、韓国音楽界に新たな風を吹かせている。
今回はそんな彼女にメールインタビューを敢行。フランス留学時の思い出をはじめ、個人の活動やCSVCメンバーとしての活動、また楽曲制作について、最後に今回7inchに収録された「Colors」「YOLO」各楽曲に関して、曲のメッセージやMVについて訊いた。
Stella Jangの過去と現在 ー フランス留学、歌手デビュー、そしてマルチエンターテイナーへ
ーまずは読者の皆さんに挨拶をお願いいたします。
こんにちは!Stella Jangです。お会いできて嬉しいです。
ーStella Jangという名前は留学時に先生がつけてくださったあだ名だそうですが、芸名として使うことになった理由は何ですか?
ほぼ本名のように使っていた名前なので自然にそのように決まりましたね。
ー留学時から韓国のレーベルに所属し音楽活動をされていましたが、当時はどのように活動していたのでしょうか?
夏休みの間に韓国に帰ってきて何曲か録音してそれを一曲ずつリリースするだけでした。学校があったので他の活動が出来なかったです。
ー以前のインタビューにて、留学時に友人たちを集めてミュージカルサークルを作った*というエピソードをお話されていましたね。どのような経緯で始めたのでしょう?
「歌も好きだし演劇も好きなのでミュージカルをやってみたらどうだろう?」と思い、仲間にメールを送ってみたところ、興味のある友達がかなりたくさんいたので始めることになりました。
*出所:<문제적남자> 언어천재부터 개성있는 음악까지! 싱어송라이터 스텔라장 | 작성자 TIMBUK2
ーどの曲においても歌詞が聞き取りやすいなと感じています。何か特別な歌い方などありますか?また、様々な言語に接する中で言語の語感と音楽との関係についてどのように思われていますか?
歌い方は自分でも分からないです(笑)でもディクションが良いとよく言われます。
曲ごとに似合う言語もあれば、どの言語でも似合う曲があるなと思いますね。
ー音楽制作はどのように進めていくのでしょうか?
日々生活する中で思いついたことを書き留めています。単語である時もあるし、文章である時もあり、メロディーである時もあります。そこに肉付けしていって制作していくタイプです。
ー制作時にはどのような機材や楽器を使っていますか?
ギターかピアノのどちらかで主にデモを作ります。録音はスマホで急いで録る時もあるし、パソコン(+オーディオインターフェース、+マイク)で行う時もあります。
ー今回の収録曲をはじめ、ライブでもループペダルを使われていますが、使い始めたきっかけをお聞かせください。
すごく欲しかったのですが、買ってもあまり使わないかもという思いもあり、買わないまま欲しい気持ちばかりが募っていたんです。そしたら同じ会社のアーティストが、ループ機能があるエフェクターを買ったというので、借りてループ機能を使ってみたら全く初めてなのに高スペックのループステーションでも上手く使いこなせそうだったんです。それで始めたのですが、既にかなり使い込めていると思います。
ー最近ではBTSの「Friends」制作に参加されましたが、制作の経緯をお教えください。また、共同で制作するときに重要と思うポイントは何でしょうか?
ありがたいことにBighitからご連絡をいただき参加することになりました。
共同制作に参加する時は一緒に制作した人たちがみんな満足できるように仕上げられたら良いなと思っています。
ーガールズグループ・CSVCのメンバーでもいらっしゃいますが、グループ活動で印象的だったエピソードはありますか?
初のカバー撮影は思い出がたくさんありますね。やはりCSVCコンセプトのヘアメイクをした状態で、お互い顔を合わせた初日だからだと思います。
ーYouTubeチャンネルコンテンツは企画から編集、アップロードまでどのぐらいの時間をかけるのでしょうか?
コンテンツごとに異なりますが、ある日突然のめり込んで撮って編集してすぐにアップロードする場合もあるし、何日にわたって撮っておいた映像を編集してアップロードしたりもします。千差万別です。
ー動画コンテンツを制作される際、自分だけのスタイルみたいなのはありますか?
私だけのスタイルでやろうと思ったわけではないですが、強いて言うなら編集の実力があまり良くないので若干不器用な感じが私のスタイルって感じです(笑)そして歌のコンテンツの場合には後で編集をしないのを私だけのルールとしています。なのであまり上げられない気もします。
ーInstagramにて《SHOW ME THE MONEY9》のエントリー期間にラップ動画をあげられていましたね。次回のシリーズでも投稿する予定はありますでしょうか…!
あ、エントリーしたのではなく、SNSでエントリー映像がたくさんアップされていたので、エントリーする勇気はないのですが、便乗してみようと思って面白半分で作った映像です。次のシリーズはまだ分かりません(笑)
「あまり考えすぎず、楽しく」ー「Colors」「YOLO」エピソードと7inch日本発売への思い
ー「Colors」がSNSを中心に海外で人気を集めました。今の感想をお聞かせください。
本当にありがたいです。部屋でなんとなく作った曲だったのですが、やはりあまり考えすぎるとダメみたいですね。 (笑)
ー歌詞に登場する「Red, Yellow, Blue, Purple...」といった色にはそれぞれどのような意味を込めたのでしょうか?
ただ拍子に合わせて言いやすい色を選びました。それぞれの色がどんな意味を持っているというより私にはこんなにも様々な色があるということがメッセージになっている曲です。
ー最新曲「Blue turns Pink」や「Reality Blue」などこれまでの楽曲には色を含むタイトルの曲がありますが、”色”というものに対して、自身の表現性とどのような関係があると考えていますか?
関係性については正直本当に分からないです。ただその曲たちを書いた頃に私がその色をタイトルにつけたかったんだと思います。
ー「YOLO」の歌詞では旅に出かける話が描かれていますが、Stella Jangさんにとって旅とは何でしょう。
日常からの逃避、見知らぬところで感じるワクワク感、いつまでも噛み締められる思い出だと思います。
ー「YOLO」のミュージックビデオはその場でサウンドを重ねていくライブ感、そしてユーモアがあり、親しみのある感じの映像となっていますが、映像はどのように作り上げていったのでしょうか?
タイトルにふさわしく一度きりの人生を楽しむ姿をお見せしようという思いで楽しく撮影しました。
ー日本で「Colors」 「YOLO」がレコードでリリースされることについて率直な感想をお聞かせください。そして今回のレコードを手にした日本の方に向けて、メッセージをお願いします。
近年レコードに対する関心が高まっている日本で、私の曲をレコードでお聞かせできて本当に嬉しいです。私のレコードを購入してくださった日本の方々にとても感謝しています。コロナが落ち着いたらいつか必ず実際にお会いしてご挨拶できる日が来てほしいなと願っています。
協力・監修:Bside Label