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【Bosudong Cooler】7インチレコード発売記念インタビュー|INTERVIEW #31

2022-10-03

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【Bosudong Cooler】7インチレコード発売記念インタビュー|INTERVIEW #31

2022-10-03

新進気鋭の韓国ミュージックを国内に紹介するレーベル〈Bside〉。韓国音楽シーンを盛り上げているアーティストの既発曲からセレクトし、バイナルカットするプロジェクト「Bside K-Indies Series」の第8弾が8月24日(水)にリリースされた。今回は「釜山特集」として、Say Sue Me(セイスーミー/세이수미)、Bosudong Cooler(ボスドンクーラー/보수동쿨러)、Hathaw9y(ハサウェイ/해서웨이)の3アーティストをピックアップ。

BUZZY ROOTSでは、リリースを記念し、3アーティストのインタビュー記事を公開していく。


韓国の海街・釜山を拠点に活動する4人組インディフォークロックバンド、Bosudong Cooler。

2018年4月にシングル「Kill Me」でデビュー。同年6月にシングル「Cotton」をリリースし、そこから約1年の間、少ない持ち曲で公演を重ねていたという。ライブの場で直接見なければどんなバンドか分からない、神秘的で気になる存在だったBosudong Coolerだが、初EP『yeah, I don’t want it』(2019年)、1stフルアルバム『Sand』(2021年)のリリースを経て、ようやくバンドの輪郭が見えてきたような気がする。「人生においてぶつかる怒り、喪失、無気力からみえる希望と喜びを歌う」と自らのスタンスを説明する彼らは、インディバンド、さらには地方で活動するバンドだからこそぶつかる様々な制約を乗り越えて、今韓国のインディシーンで注目されている。

そんなBosudong Coolerにメールインタビューを刊行。オンライン上に彼らの情報はまだまだ少ないため、彼らの基本情報やこれまでの活動内容をメインに、釜山の音楽シーンの現状やアーティスト同士の交流、インディバンドならではの葛藤、そして今回の7インチ収録曲「Sand」「Rubber」の制作意図について訊いた。


Bosudong Coolerのこれまで

ー日本のみなさんに向けて、自己紹介をお願いします。

キム・ミンジ(以下、ミンジ):アンニョンハセヨ!ボーカル兼ギターのキム・ミンジです。

グ・スラン(以下、スラン):ギターのグ・スランです。

イ・サンウォン(以下、サンウォン):ベースのイ・サンウォンです。

チェ・ウンギュ(以下、ウンギュ):ドラムのチェ・ウンギュです。よろしくお願いします^^

ー「Bosudong Cooler」はどんなバンドなのか、簡単にご説明をお願いします。

スラン:Bosudong Coolerは、韓国の海街・釜山に住んでいる4人組のインディ/フォークバンドです。人生で直面する怒りと喪失、無気力から見える希望と喜びを演奏し、歌っています。2017年にバンドを結成し、2018年にリリースした初シングル「Kill Me(죽여줘)」を皮切りに毎年地道に作品を発表しています。2021年にリリースした1stフルアルバム『Sand(모래)』は《韓国大衆音楽賞 2021年 最優秀モダンロックアルバム部門》にノミネートされました。2023年の夏には、2ndフルアルバムをリリースする計画を立てています。

ーバンド結成の経緯について教えてください。

スラン:私とイ・ヤンゲン(元ベーシスト)、そしてチョン・ジュリ(元ボーカル)はもともと友人で、お互いに音楽を共有するのが好きでした。一緒に集まって音楽を聴き、お酒を飲んでいる中で、自然とバンドをしようという話が出ました。

バンドの求人サイトでドラマーのウンギュと出会った後、ヤンゲン、ジュリが個人の事情で脱退をすることになり、知人の紹介でサンウォン(現ベーシスト)に会うことになりました。また、ボーカルオーディションを見ていた中で、Bosudong Coolerの曲をカバーしていたミンジ(現ボーカル)を見つけました。その歌声に感動し、一度一緒にバンドをしてみようと提案しました。こうして、今のBosudong Coolerになりました。

ー皆さんの音楽に影響を与えたロールモデルとなるようなミュージシャンを教えてください。

ミンジ:カナダの女性シンガーソングライターFeist(ファイスト)がとても好きです。長い間音楽活動をし続けながら常に成長する姿が本当にカッコよくて、ファンとしてはただただずっと音楽を続けてくれてありがたいという思いです。楽曲をカバーする時も、原曲が思い浮かばないほどに本人のスタイルに上手く昇華しているのが魅力的です。もともと音源も多彩で素敵だったのですが、生でライブを見て惚れてから、より深くハマっていきました。ただ可愛く歌っておしとやかにギターを弾くのではなく、行き過ぎず飾らない率直な歌が身に沁みますし、時には見る者を圧倒するような過激なギタープレイも見せるので「この人は違う!」と感じました。

私の基準では、見栄えを重視するのではなく、自然体で自分の音楽に熱中するのがかっこよく見えるんです。こうして一人のアーティストを長い間好きでいるうちに、自然と1曲だけでもギターを弾けるようになりたいと思ってギターを弾くようになり、やたらとエフェクターも一個ずつ集めてみるようになりました。また、ギターを習っていると歌を歌ってみてと言われ、歌うようにもなりました。Feistの曲は全部良くて、どのアルバムも収録曲の全てを何度も聴いたのですが、歌詞に身に沁みる部分がたくさんあるため、その時その時で聴きたいと思った1曲をしつこくリピートし、たくさん聴いたこともあります。昔、ある人からごめんねという言葉をどうしても聞きたかったのですが、結局聞けなかった時に「so sorry」という曲を代わりにたくさん聴きましたね。一昨年にすごく辛いことがあったのですが、周りからの慰めが全く役に立たず、「comfort me」という曲も聴きました。

Feist「so sorry」

Feist「comfort me」

スラン:好きなものは、時間の経過と共に変わりゆくものです。幼い頃は、週末に両親が掃除しながらレコードプレーヤーでよく聴いていた The Beatles、エレキギターを初めて弾くきっかけになった Oasis と RCHP、そして密かに好きだった Bob Dylan、Marvin Gaye、そしてChic。

2010年以降は、アメリカのインディフォークロックバンド Big Thief がとても好きになりました。4人のメンバーが作り出す自然なサウンドと彼らのエネルギーを余すことなく感じられる点に感動したんです。リスナーに耳を傾けてもらうにはもっと派手で刺激的に表現しなければならないのだろうかと悩んでいたのですが、Big Thief の音楽を聴いた瞬間、彼らがロールモデルになりました(ちょうど Bosudong Cooler もメンバーが4人で、 頭文字が “B” です)。それから、より自然な曲作りにサウンド、そして荒々しい音楽的な表現に集中するようになりました。1stフルアルバム『Sand』を準備しながら彼らから大きく影響を受け、これからも Bosudong Cooler の音楽において欠かせないアーティストです。

Big Thief「Red Moon」

サンウォン:僕は、カナダのインディポップバンド Peach Pit が好きです。このバンドはナードな雰囲気が魅力的で、各アルバムごとに入れ込みたいサウンドをカッコよく取り入れているんです。それに、ダサく聞こえそうな愛のストーリーをスマートに解いているのも面白くて。同じくカナダのインディポップバンド Men I Trust も好きで、このバンドの楽曲の中で気に入ったベースの音色やベースラインをよく参考にしています。

Peach Pit「Everything About You (Live Performance)」
Men I Trust「Hard To Let Go」

ウンギュ:中学校の時からJ-ROCKをたくさん聴いていました。X-JAPANから聴き始め、L'Arc-en-CielやLUNA SEAを聴き漁るようになり、よりディープに聴くようになってMALICE MIZERまで行き着きました。高校2年の時、日本に修学旅行に行ったのですが、バスの窓から見える風景を見ながらMALICE MIZERを聴いた時のことを未だに思い出します。大学時代にバンドサークルで活動していた時も、SIAM SHADEや東京事変をたくさん聴いて、椎名林檎の音楽世界にもたくさん触れました。

ー2018年にシングルを2枚リリースしてから、2019に初EP『yeah, I don’t want it』をリリースするまでの期間、持ち曲は少なかったもののライブでのパフォーマンス力を磨くために公演の場数を踏んでいたと、過去のインタビュー記事で読みました。その頃、駆け出しのインディバンドとして、どんな苦労や葛藤がありましたか。

ウンギュ:その頃は自分たちのプロモーション期間だと考えていたので、どの公演、イベントの提案も断ることなく、全て出演していました。観客がいないライブばかりの時期もあり、当然、どんなにライブを重ねても収益は出ませんでした。少し名前が知られるようになって、報酬の有無を考慮しつつライブをしていた過渡期があったのですが、その当時、業界内でお金に目がないバンドだという噂が流れ、非常に残念だった記憶があります。

ーその後、初EP『yeah, I don’t want it』のリリース(2019)や NAVERが運営するYouTubeチャンネル《ON STAGE》、地上波の番組への出演を経て、一気にBosudong Coolerの音楽が世に広まったそうですね。具体的にどのようなプロセスで自分たちの楽曲が多くの人に届くようになったと考えていますか。

スラン:前の質問でウンギュが答えたように、2019年以前はリリースした楽曲も少ないばかりか、どのライブに出るか選べるほどの実力とレベルではないと考えていました。だからこそ、ライブをたくさんして実力をつけて、音楽関係者や観客にたくさん会わなければならないと思っていたんです。そうこうするうちに、リリース曲は少ないけれど「釜山にBosudong Coolerという良さげなバンドがいる!」という口コミが広がり、釜山とソウルをちょくちょく行き来するようになりました。そうしてライブ会場で出会った観客が増えていったタイミングでEPをリリースし、折よくON STAGEや他のテレビ番組からオファーが舞い込んできました。

ウンギュ:ON STAGE出演の影響が1番大きかったと思います。私もやはり、インディバンドとして活動をしていなかった当時、ON STAGEを通じて様々なミュージシャンを知ることができたし、そんな夢の舞台に私が立つことになるなんてもちろん信じられませんでした。出演のオファーをもらった時はとても嬉しくて、ON STAGEが何なのか知らない人たちを捕まえて、ON STAGEに出ることになったと自慢じゃないように見せかけて自慢をしていたのを思い出します。ON STAGEを通して多くの方々に私たちの存在を知ってもらえるようになり、それをきっかけにソウル/釜山公演に人知れず多くの観客の方々が来てくださったようです。

Bosudong Cooler「Kill Me」
Bosudong Cooler「0308」
Bosudong Cooler「Cotton」

ーバンド活動を本格的に始めてからすでに釜山、ソウルを飛び越えて海外での公演もご経験されており、過去のインタビューでも海外に対する意識の強さを感じますが、その考えに至った経緯を教えてください。

ウンギュ:悲しいことに、韓国のインディ音楽市場はインディバンドが生計を立てていけるだけのパイの大きさではありません。専業ミュージシャンという夢を持った私たちにとっては、新たな市場を模索することが大きな課題であり、その課題に関して時々仲の良いバンドと情報交換しています。その過程で、Say Sue Meの欧米進出、HYUKOHの中国進出、ADOYのタイ進出が大きなベンチマークになっていて、最も現実的な方法として、一度ライブで行ったことのある台湾で活動する計画を立てています。

スラン:「インディ」というジャンルの市場規模が大きいとは思いません。もちろんこれは韓国だけでなく、全世界においてそうです。サブカルチャーでありメインストリームではないので、当然のことだと思っています。韓国のインディファンだけが少ないのではなく、人口比を考えればそんなにおかしくない規模です。だから、自然と韓国での認知度を高めると同時に、他の国のインディ市場にも自分たちの音楽を浸透させたいという欲が芽生えたんだと思います。もちろん、メンバーと海外公演を兼ねて旅行に行き、初めてのアーティストや観客に会うのがとても楽しいというのもあります。

置かれた場所で良い音楽を作ろう

ー先日リリースされたHathaw9yとのコラボEP『LOVE SAND』をはじめ、同じ釜山を拠点に活動するSay Sue Me、Hathaw9y、ソウムパルグァンとの交流の様子を見てとれるのですが、釜山は元々バンド、ミュージシャン同士の横の繋がりが強い土地柄があるのでしょうか。

ミンジ:釜山だからと言うよりは、釜山で音楽をする人がソウルより圧倒的に少ないので、良いバンドがいれば自然と認知して、チェックするようになるのだと思います。そのためか、ソウルに行かずに釜山に残っているバンドやミュージシャン同士が感じる同質感や連帯感があります。大勢のリスナーから人気を集めることを目標とするのではなく、住む場所を変えずに自分が置かれた場所で良い音楽を作ろう。そうすれば、どこにいても私たちを見つけて聴いてくれる人がいると信じています。釜山で活動するミュージシャン同士、お互い上手くいけばいいなと思い、応援やフィードバックを積極的にし合いながら、自分たちなりのシーンを形成しているのではないかと思います。

Bosudong Cooler, Hathaw9y「World Tour」

ソラン:釜山は若者が離れていく古い街なので、新しいバンドが誕生したら皆んな強く関心をもつ傾向があります。Bosudong Coolerとソウムパルグァン(Soumbalgwang)の結成当初、Say Sue Meが私たちに関心をもち、Hathaw9yが誕生した時には私たちが関心をもったように。もちろん、性格や道徳観が似ていることが1番大きいです。仲の良いSay Sue Me、Hathaw9y、ソウムパルグァンを思い浮かべてみると、皆んなが釜山の人間に対して抱く荒々しい野生的なイメージではなく、繊細な部分が多いように思いますね。

ソウムパルグァン「Hapiness」

サンウォン:釜山を拠点に活動していて親しくなったという言い方もできるかもしれませんが、僕の考えは、お互いの考え方が似ていて、人間的な魅力をたくさん持っている人たちだからこそ、親しく過ごせるのだと思っています。もちろん、釜山でなければ一緒にアルバムを出すほどの絆を築くのは難しかったかもしれないですが。釜山以外の別の地域のバンドとも一生懸命交流しようと努力しています。

ウンギュ:いずれにしても、シーンが狭いので何度も顔を合わせるうちに仲良くなりました。特に、Say Sue Me、Hathaw9yは各メンバー同士かなり親しいので、頻繁に会って美味しいものも食べ、どんな時にもお互い助け合ったりします。また、ソウムパルグァンとも定期的にライブをするほど親しく、お互いのライブがある時は毎回招待し合い、絆が強くなりました。いきなり向けられた注目や関心に左右されることなく、今のように各バンドが自分たちの音楽をありのままにかっこよくできたらと思います。

ー今回、7インチを一緒にリリースする Say Sue Me、Hathaw9yとの共通点は何だと思いますか。

ミンジ:バンドごとに音楽のスタイルははっきり違いますが、釜山が海街だからなのか、それぞれの音楽で鳴っている波のようにうねる感じが共通点としてある気がします。それと、この3バンドにはいずれも女性ボーカルが一人ずついます!

スラン:インディポップとフォークロック、そしてインディロック。音楽的には共通する部分がありませんが、同じような考えを持っていると思っています。一番大きな共通点を挙げるとすると、周りを気にせず本人たちがしたい音楽をしている部分だと思います。

そして、釜山を離れていないということ。これは、私たちが釜山を離れなければならない理由がないからだと思います。ソウルに行かないとやりたい音楽ができないという訳ではないんですよ。Say Sue Meが釜山を離れずカッコいい音楽と活動しているのを見て、パワーをたくさんもらいました。Hathaw9yも私たちもSay Sue Meからエネルギーをもらい、お互いを尊敬し愛するようになりました。

サンウォン:音楽スタイルについては各バンド追求しているものが違いますが、多くの人が釜山のインディシーンに関心を持っていて、そこでは「何かが特別に聴こえる」点が似ている気がします。多分それは、お互いの領域でこだわりを持って作り出した、目に見えないものだと思います。

ウンギュ:流行やトレンドを追いかけるのではなく、各バンドが得意なこと、好きなことを追求しているところだと思います。その点がホンデとは違う魅力で、最近の釜山のバンドたちが注目を浴びている所以ではないでしょうか。

Say Sue Me「No Real Place」

ー音楽活動をするとなった時に、釜山を離れて首都・ソウルに行こう、という思いはなかったのでしょうか。釜山で音楽をすることのメリット、良さについてお聞かせください。

ミンジ:こちらの質問に関しては、私もBosudong Coolerに合流する前に疑問を感じていました。釜山に残っているバンドが脚光を浴びることが多くなり、釜山の音楽シーンが不思議に感じたし、インディシーンの聖地と呼ばれるソウル・弘大(ホンデ)の音楽とは確かに違う感じがしました。釜山に来てみると分かるのは、ソウルは住んでいなくてもいつでも行ける場所だということです。ソウルは釜山よりチャンスも多く、ライブ会場も多いですが、ソウルで毎週ライブをする生活を送らない限り、無理に居住地を移す必要はないかと。釜山でもライブできる箱はありますし、音楽は実はどこでもできます。むしろ、ソウルから離れていることで人気に執着したり焦ったりせず、音楽に集中できますよ。

スラン : 公演の際、「釜山から来たBosudong Coolerです」とコメントするのが気持ちよくて。 これは、ローカルバンドだけが言える言葉です。かなりのメリットですよね。文化や人といった全てのものがソウルに向かっている中、釜山でも楽しく豊かに暮らしていることを示すことが、ローカルバンドができる悪くない仕事の一つではないでしょうか。

サンウォン:実際のところ、少しずつソウルでの活動が多くなってそこで注目されるようになり、最初はソウルに行こうか考えました。ただ、韓国は狭い国なので、一日あれば行けると考え、わざわざ大変な道を選ぶことはしませんでした。それに、釜山には「海が与えてくれる感情」や「表面は冷たいけれど心は温かい情」のようなものがあるため、僕は釜山が好きです。

ウンギュ:現実的な理由があったとしても、最初から拠点を移すつもりはありませんでした。これは後から知った事実ですが、ソウルに限らずどこで音楽をしていてもリスナーがいる時代だということがわかりましたし、Say Sue Meが釜山でカッコよく活動するのを見ていたので、ソウルに行かなければならないという考えは生じませんでした。

存在自体が理由「Sand」
無意味な一日を描いた「Rubber」

ーA面の「Sand」はどんな思いが込められた曲でしょうか。また、本作品が1stフルアルバム『Sand』のタイトル曲になった経緯について教えてください。

我慢できない憂鬱さの中、あてもなく足を運んだ場所で生きていく理由を探す曲です。全てのことに真っ当な理由があり、「存在していること」ではなく「存在」自体が理由になり得る、というストーリーを語りたくて。

「砂」というものは一つの大きな塊ですが、実は小さな粒の集まりです。小さな日常と些細な感情の集合体な気がして、1stフルアルバムのタイトル、そしてタイトル曲に非常にぴったりだと考えました。音楽的にも、1stフルアルバムの全パートを貫くような曲です。

ーB面の「Rubber」はどういう思いが込められた曲でしょうか。

何もせずに過ごした無意味な一日を描いた曲です。一人で無気力に一日を過ごすと不安になりますが、ビール、お風呂、そして昼寝に逃げるのです。Bosudong Coolerの特徴は、平和で美しくカッコいい曲調に、真逆の不安で憂鬱な歌詞が合わさっていることだと思います。そんな特徴が上手く表れた楽曲です。

ー「Sand」「Rubber」が収録されている1stフルアルバム『Sand』は、ボーカルのミンジさんが合流して初の作品になりましたね。Bosudong Coolerとしてリリースしたこれまでの作品と比べた際の「違い」や「共通点」について、教えてください。

ミンジ:1stフルアルバム『Sand』以前の作品は、中毒性のあるメロディのおかげで初めて聴いてもかなり印象的で記憶に残りやすく、それだけ力をたくさん注いでいたのを感じます。あちこちに刺激的な要素が多くて、短期間で簡単に誰にでもアプローチできるのが大きなメリットだと思います。それに比べて、『Sand』は力をすっと抜いた。以前の曲を意識しないようにして、全体的なバランスに焦点を当てました。『Sand』の収録曲は、前作に比べると少し落ち着いていて脱力しているように聴こえるかもしれませんね。以前の曲は意図的にスタイリッシュでおしゃれなものに仕上げたとしたら、今回はより自然なサウンドで構成されていて、アルバムそのものでぐいっと押し出すパワーがあると思います。下手をすれば薄味に感じられますが、すっきりとした平壌冷麺のように、見かけに寄らず本当は濃い味がするということを知っていただきたいです。

スラン:以前の作品との違いを先に話すと、2019年に発売したEP『yeah, I don’t want it』のように刺激的で表現の豊かなものよりも、私たちが持つ自然なサウンドに力を注いだ点です。 MR(Music Recordedの略で、事前に録音した伴奏のこと)の使用や他の楽器の使用を最小限に抑え、4人で作り出せる音を利用し、よりバンドらしいサウンドにしたかったんです。この自然な感じがミンジの歌声、私たち4人の感情、そしてアルバム全体とよく合っていると思います。自然主義の食べ物は刺激的ではありませんが、長く食べることができて、身体にも良いでしょう?『Sand』はそんなアルバムだと思います。前作との共通点は、どちらもBosudong Coolerの音楽であるという点です。

サンウォン:『Sand』以前の作品は、とにかく幅広い層に人気のある作品でした。すべての要素が刺激的で、どの部分も退屈しないように作りました。ところが、『Sand』の作業をしながら「これは、バンドの根本に近いサウンドではないのでは?」と考えるようになり、私のパートでは最大限他のパートに耳を傾け、メロディやメッセージに邪魔されないように曲作りをしました。

ウンギュ:力を抜いて、私たちが伝えたいストーリーが何なのかを考えることに集中しました。それから、ボーカルを選んでいる過程で、私たちが事前に考えていた『Sand』の雰囲気と一番合うボーカルを選ぼうと頑張っていたのですが、ミンジがぴったりだったんです。だからこそ、『Sand』はミンジらしさが際立ったアルバムではないかと思います。

ーアルバム『Sand』を制作する上で苦労したことを教えてください。

ミンジ:アルバム作業自体が初めてだったのですが、ただただ一生懸命取り組もうと思いました。大変だったのは、写真撮影とミュージックビデオ撮影でしたね。普段から写真をあまり撮らないタイプで、カメラが前にあるとあまりにもぎこちなくてどうすればいいのか分からず、大変な思いをしました。

スラン:私たちには、「ボーカルの交代」という致命的な問題がありました。ミンジが合流してから初めての作品だからこそ、「良いアルバム」ではなく、「非常に良いアルバム」を出さなければならないというプレッシャーが非常に強かった気がします。もちろん一番負担を感じていたのはミンジだったでしょう。 さらに、それまで一緒に働いていたエージェンシーとの契約が切れた後だったので、良い曲を作り、カッコいい編曲をして、プロモーションやMVの企画に至るまで、全てをバンド内で解決しなければならなかったのもかなりストレスでした。周りにBosudong Coolerを愛してくださる人々がいて、信じて頼れるメンバーがいたので、潰れることなく良いアルバムを作ることができました。嬉しかったです。

サンウォン:初のフルアルバムだったのですが、思っていたよりも準備することが多かったです。それと、もともとあったエージェンシーがなくなってみると、音楽以外の部分でも意識しないといけない点が多かったです。集中力が分散していまい、何一つ完璧にいかないまま準備を進めざるをえなかったのが残念でした。一番残念だったのはアルバムのプロモーションだったと思います。

ウンギュ:1stフルアルバムという大きなアルバムを準備するのは資金面でかなり大変でしたが、幸い周りに助けてくださった方が多く、無事にリリースできました。

今後について

ー音楽活動において、今後の抱負を教えてください。

ミンジ:今のところ具体的な目標は特にないので、これから作らなければならないと思います。前までは単純にフェスに出たいと思っていましたが、それが目標になってはいけないと思います。今はただ、できることをブラッシュアップしたいです。一喜一憂せずに良い音楽を作り続けること、そして、燃え尽きないことが難しい課題であり、守っていかなければならない心構えだと思います。

スラン:病気をせず、このメンバーで末長く楽しくバンド生活を送ることが目標です。これ以上欲しいものはありません。

サンウォン:目の前にある目標は、2ndフルアルバムを出すことです。個人的な夢は、社会的な問題にも声を出せる影響力のあるバンドになることです。

ウンギュ:個人的には作曲に参加したいです。クイーンのように各メンバーごとに伝えたいストーリーが上手く反映されれば、今よりもっと魅力的な音楽が作れるのではないかという欲があります。

ー最後に、今回7インチを手にとった日本のファンのみなさんに向けて、メッセージをお願いします!

ミンジ:日本でレコードを発売することになり、とても嬉しいです。どうぞ、多くの関心、そしてフィードバックをお寄せください。近いうちに日本でお会いできることを願っています。絶対日本にライブに行きたいです。もし機会があれば釜山にも遊びに来て、ライブに足を運んでくださったら嬉しいです!

スラン:可愛い7インチレコードを手に取っていただきありがとうございます! Bside K-indies Series B333 Vol.8 シリーズが気に入ったら、釜山の素敵なバンド Say Sue MeとHathaw9y、そしてBosudong Coolerの他の音楽もぜひ聴いてみてくださいね。いつか日本で会いましょう!

サンウォン:日本に初めて旅行に行った時、他人を傷つけることを嫌う文化や、素足で歩いても良いほどきれいな街並みが記憶に残っています。だから日本は好きな国の中の一つなのですが、今回のレコードリリースをきっかけに日本でもライブができたら嬉しいです。

ウンギュ:インディ/バンド音楽の聖地である日本の皆さんに私たちの音楽を聴いてもらう機会を持つことができ、感無量です。単にレコードのリリースにとどまることなく、様々な関心につながり、実際に日本で私たちの音楽を披露できるよう、繋げていきたいです。


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協力・監修:Bside Label

 

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  • この記事を書いた人

Akari

1994年生まれの自称、韓国音楽PR大使。インディペンデントな韓国のミュージシャンや業界人を中心にインタビューやコラムを執筆。「韓国の音楽をジャンルレスに届ける」をモットーに、韓国インディーズ音楽特化型メディア「BUZZYROOTS」の運営やDJイベントへの出演、アーティストのアテンドなど、多岐に渡り活動中。一番の推しバンドは、SURL。

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