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果樹園(Kajuen) 日韓デュオが豊かに色付けるサウンドの中へ | #21 INTERVIEW

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果樹園(Kajuen) 日韓デュオが豊かに色付けるサウンドの中へ | #21 INTERVIEW

近年、オンラインを通じて、国を越えたアーティストのコラボレーションが活発になっている。日本や韓国のアーティストにおいてもメジャー/インディーズ問わず交流の機会が増える中、昨年の春、ソウル出身のAnssoによる音楽プロジェクトであるMellow Blushと東京在住のミヤオウによる“オンライン・ミュージック・デュオ”、果樹園(Kajuen)が結成された。

音楽制作だけでなくアニメーションやアートワークの制作も手がける多才な2人が音楽・ビジュアル制作を行った初のEP『想念彩色』は、韓国語・日本語・英語の歌詞とアコースティックな音を軸に様々な音楽ジャンルが混じり合った音世界、そして鮮やかなアートワークまで独特な世界観に惹き込まれる。今年3月のデジタルリリース直後から日韓で反響を得て、6月にはLP版、そして9月にはカセットテープ版がリリースされた。

驚くことに、彼らはSNSで知り合ってから現在まで一度も直接会ったことが無いという。さらには個人の仕事との両立もあった中で、リモートという環境でどのように2人の個性やセンスを溶け合わせていったのだろうか。

今回は、そんな彼らにメールインタビューを敢行。結成からEP『想念彩色』の制作エピソードとフィジカルリリースへの想い、そして最後に今後の展望についても訊いた。


果樹園の種 ー 個人の活動と出会いについて

ーーまずは、読者の方々へそれぞれご挨拶をお願いいたします。

ミヤオウ:こんにちは!果樹園のミヤオウです。🍏

Mellow Blush:こんにちは! 果樹園のMellow Blushです。🍎

              

ーー果樹園のお話に行く前に、個々の音楽活動についてお聞きしたいです。どのようなバックグラウンドから始めたのでしょうか? それぞれお聞かせください。

ミヤオウ:中学生のころに父の実家の倉庫の奥深くに眠っていたベースを持って帰ったのが音楽を始めたきっかけです。高校生のころにはバンドで曲を作ったりライブをしたりしていました。大学では建築を勉強していました。現在は音楽やドローイング、MVなどの作品の制作をしています。空間と音楽の関わりに興味があるので、それを様々な形で表現したいと思っています。

Mellow Blush:元々絵とアニメーションの仕事をしていて、大学時代に自分のアニメーションに使うサウンドを自分で作ろうと思い、2016年頃にDAWを独学し作曲を始めました。2018年春、日本のネットレーベル《Local Visions》のオーナーであるsuteacaさんから「アルバムを出しませんか?」という提案を受け、同年にアルバムをリリースしました。個人ではなく、レーベルから音源を発表したのは初めてだったので、嬉しいながらも不思議だった記憶があります。その後は引き続きソロアルバムを出したり、いくつかの短編映画音楽の作曲に参加するなど多様な試みをしながら、個人的にエンジニアリングやサウンドについて不足だと思った部分について勉強してきました。 正直今でも自分の音楽についてまだよく分からないところがあるので、プロデューサーとしての音楽アイデンティティを形成している最中です。

                       

ーーお二人はどのように出会い、果樹園を結成したのでしょうか?

最初はSNSで知り合って、お互いに少し興味を持ちフォローし合う程度で過ごしていましたが、2020年の初め、Mellow Blushが<seasonal signals>という四季のコンピレーションプロジェクトを企画したときにミヤオウを招き、そこから個人的に連絡をし始めて、アートや音楽の話、日本と韓国の文化などについて色々な話をしながら交流していきました。 ちょうどその時コロナが始まり、社会的にオンラインへ移行していく時期に果樹園は活性化したと思います。 その後、ミヤオウの「Yuragi」という曲でコラボレーションし、お互いに音楽の好みやボーカルの相性が良いと感じました。そして、一緒に音楽デュオをやることになり2020年4月12日に果樹園を結成しました。

            

ーー結成後、wai wai music resortの「光の束」リミックスを手がけましたが、その経緯も気になります。

wai wai music resortのエブリデさんからリミックスの依頼があり、元々ファンだった私たちは喜んで受けました。 どの曲にするかは自由だったので、歌詞も美しくメロディもエレガントな「光の束」を選びました。 果樹園を結成して初めての依頼だったので、記憶に残ると思い頑張りました。 原曲のコード進行が複雑でちょっと大変でしたが······(笑)

「ピンポンのように行ったり来たり」ー EP『想念彩色』制作エピソード

ーー『想念彩色』を制作する構想はいつ頃からあったのでしょうか?

2020年4月に果樹園を結成したとき、「2020年中にEPを作る」という目標がありました。 当時タイトルは無かったのですが、二人とも漠然とこのようなイメージのアルバムを作りたいということは考えていました。お互い持っていたデモ曲を交換したり、ジャム・セッションを通して新しい曲を作ったりしながら、だんだんと『想念彩色』のイメージが具体化していきました。

      

ーーどちらかが簡単なメロディーを作って送り、もう一人がそれにサウンドやアレンジを重ね、繰り返していくという「オンライン・ジャムセッション」という方法を取りつつ制作されたとのことですが、制作期間はどのぐらいでしたか?

曲ごとに違いますが、『想念彩色』の制作には6~7ヶ月程かかりました。お互いに本業があるので、それ以外の自由時間に果樹園の曲を作るという形でした。 「はるか」を除いて、 ほぼ一曲当たり一ヶ月くらいでこなしていきました。最初はジャム・セッションらしく短期間に集中して完成させるスタイルで、一番最初に作った曲「19時、ある夏の日」はほぼ一日で完成しました。最近では録音に対してもっと慎重になっています。やはりホームレコーディングなので、その短所をカバーして長所を最大限にブラッシュアップするため、エディティングとミキシングには時間がかかりますね。

            

ーーアルバムでは全体的にアコースティックなサウンドが中心になっていますが、このアイディアについて聞かせてください。

アコースティックのアイディアは最初から意図したというよりは、自然にそうなっていきました。 ジャム・セッションの時、ギターやエレキベースをミヤオウが、ピアノをMellow Blushが弾く中で次第にデュエット・ボーカルのフュージョン・フォークという方向性を持ち始めました。 それをもとに、編曲作業のときにシンセサイザーやフィールド・レコーディングを加えて、ややハイブリッドの色彩を帯びるような曲ができました。スタイルが新鮮に感じたというフィードバックをリスナーの方からいくつかもらって嬉しいですね。

          

ーー歌詞はどのように制作していったのでしょうか?

主にイメージ中心で歌詞を作っていきました。例えば、どちらかから作詞を始めてバース1を作れば、もう一人がバトンを受け継いでバース2を自由に作るという方法で進めました。 歌詞の制作においては特に通話をたくさんして、密なコミュニケーションをとって作っていきました。

ーーお互い母国語ではない言葉で歌う場面がありましたが、いかがでしたか? それぞれお聞かせください。

ミヤオウ:韓国語や英語で歌うことは本当に楽しいです。日本語とは違う発音や意味を知っていきながら、同時に歌うということが私にとっては刺激的なことです。韓国語や英語だからこそできるリズムやニュアンスは意識しています。例えば、韓国語と日本語では発音の似ている単語が多くあって、「想念彩色」の中で出てくる日本語の「感情」はその直前でMellow Blushが歌う「감정(ガムジョン)」と同じ意味で、サウンド的にもリンクさせているんです。歌入れでは日本語に無い語感にとても苦戦しました。上手に発音できないときにはMellow Blushさんから直接発音のトレーニングをしてもらいました。おかげで少しは上達したかもしれません(笑)

Mellow Blush:正直、私は母国語で歌うよりも日本語で歌うことが好きです。韓国語と比べて日本語は一音節一音節の音が綺麗に合ってたり、母国語ではないからこそ感じられる魅力があると思います。 韓国語だと、聴くなりすぐ頭の中で意味を理解してしまうので、訳もなく恥ずかしくて仕方ない歌詞も、日本語で聴くともっと音楽のように聴こえると言うか(笑)。私は以前イギリスに数年住んでいたので英語は話せるのですが、日本語についてはスピーキングとリスニングに比べて漢字が弱いので、ミヤオウが書いた日本語の歌詞を翻訳機で理解したあと、発音のサウンドをハングルで書いて歌を録音しました。もっと音楽的に発音すべき部分はミヤオウからディレクションしてもらいました。例えば「日の時間」で”赤らむ手”の部分を “akaramu te”ではなくて、“akaraam te”みたいに発音することとか。 

           

ーアートワークも共同で制作されたとのことですが、音楽制作とプロセスは同じなのか気になりました。

「19時、ある夏の日」や「リンゴの夢」では、ミヤオウがスケッチし、Mellow Blushがそのスケッチのデータを受け取ってプリント、それをトレースした上にペインティングする方法で制作しました。『想念彩色』ではミヤオウがペインティングを制作し、MellowBlushがデジタルに置き換え編集する過程で二人の顔に写真のコラージュを入れてアートワークが完成しました。全体的にピンポンのように行ったり来たりしながら、「これはこうしてみるのはどう? ああやってみるのはどう?」というふうに意見をまとめていきます。そういう点では音楽制作と似ていますね。

         

ーー収録曲の中で思い入れのある曲をそれぞれお聞かせください。

ミヤオウ:「パレイドリア(Pareidolia)」が好きです。これはMellow Blushのデモから作り始めた曲で、穏やかなアコースティックサウンドの中に歌声が会話のように聞こえてくる曲です。夜の静かなときに聴くと心がふうっと浮いていきます。歌詞も心の模様を歌っているんです。「日の時間」も好きですね。比較的明るく聞こえる曲ですが、これは今の社会状況、すなわち外に出ることが出来ない少し悲しい気持ちから生まれた曲です。果樹園の曲はどの曲も少し切なさを含んでいると思います。

Mellow Blush:タイトル曲の「想念彩色」に最も愛着を持っています。 制作に一番時間がかかったり、曲の後半に初めてラップをしたり、ミックスする時に修正をたくさんしたり、お互い頑張った記憶があります。 ちょうどその時が今ぐらいの秋頃でしたが、個人的には当時の趣も抱いているので好きな曲です。もう一つはミヤオウのデモから作った「そえん」が好きです。神秘的で切ない感じが本当に好きです。

LP、カセットリリースへの想い

ーー3月のデジタルリリースを経て、6月にLP、そして9月にカセットテープとフィジカルでリリースされたことについての感想をそれそれお聞かせください。

ミヤオウ:フィジカルリリースはとても嬉しいです。忙しく時間が流れる現代、そしてストリーミングの時代に「手に触れるもの」として音楽を楽しむことは、時間や場所、ひとなど様々なことをゆっくりと考えたり想うことのように思います。それはとても心地の良い時間で、そういった意味でも私はフィジカルで音楽を聴くことが好きです。

Mellow Blush:果樹園がデジタルリリースをしてから、何だか魔法のように「LPを作りましょう」、その次には「カセットを作りましょう」というリクエストが来たことは2人とも全く想像できなかったことなので、夢のようでとても嬉しかったです。

ーーLP、カセットテープを手にされた方々へメッセージをお願いいたします。

私たちの音楽がアナログの形で制作され、リスナーが手に取ってそれを聴いてもらえるということはある意味、果樹園を大切にしてもらえている気がします。私たちにとっては 音楽からアートワーク、LPやカセットテープのデザインまで自分たちが直接制作したので、それを実物として受け取った時の感慨がひときわ特別だったのです。 本当にありがとうございます。

「本当の果樹園でライブをしてみても面白そう」

ーー近い将来、お互いの国を自由に行き来出来るようになって直接会えるようになったら何をしたいですか? それぞれお聞かせください。

ミヤオウ:色んな所に行って話をしたり、音楽をしたりしたいです。一日中曲を作ることもしたいですね。韓国へ行ったらソウル・東大門のDDPに行き、そのあと一緒にサムギョプサルをお腹いっぱい食べたいです…漢江サイクリングもしたい。Mellow Blushさんが日本に来たときには、おいしいごはんを食べたり、とっておきの場所へ案内したいと思っています。

Mellow Blush:一度も会ったことがないのにチャットや電話で色々話していると、ミヤオウが日本にいる弟みたいで、直接会っても今のテンションで冗談交じりにおしゃべりすると思います。 私はまずミヤオウとジャムセッションを遊びみたいに楽しくやってみたいです。 音楽以外では彼と一緒に韓国または日本にある美術館、観光名所やグルメ店に行ってみたいです。いつか本当の果樹園に行ってライブをしてみたいと冗談を言ったことがあるのですが、そうなっても面白そうです。

ーー最後に、今後の活動についてお聞かせください。

今後も音楽やアニメーションを作ってみたりする予定です。コロナが収束したら、ライブやエキシビションも出来たらいいなと密かに思っています。YouTubeでは果樹園ラジオやvlogなどをアップしているので、良かったら観てみてくださいね。

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Izumi

韓国ミュージックライター。他業界とパラレルワークで活動中。ドラマ、音楽をはじめ韓国エンタメ愛好歴は10年以上になるが、ライターとしてはまだ4年目。 韓国留学を機にインディシーンの虜に。 自由な表現でアイデンティティを発信している新進気鋭のアーティストを広めるべく、業界人やアーティスト等にインタビューし記事を掲載するほか、プロモーション記事企画や映像企画を実現。 近年ではアジアのミュージシャンに活動の範囲を広げ、多岐にわたり活動している。

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