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シンガーソングライター・KwonTree 行ったことのない道へ | INTERVIEW #6

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シンガーソングライター・KwonTree 行ったことのない道へ | INTERVIEW #6

昨年秋、都内ライブハウス3か所にて開催されたKwonTree初となる来日ツアー。

ツアー内では様々な企画が準備され、フィッシュマンズのファンコミュニティが運営する弘大のライブハウス「空中キャンプ」と青山のライブハウス「月見ル君想フ」との共催企画「月見ルキャンプ」にてキセルやPolarisのオオヤユウスケと共演、吉祥寺のライブハウス・キチムでの公演では、SSWのイノトモとコラボステージを披露。
日本のアーティストとの交流を深める機会となった。

KwonTree プロフィール

KwonTree - Water (2016年)

KwonTreeは、「韓国のグラミー賞」として知られる「韓国大衆音楽賞」にて 「最優秀フォークソング部門」を度々受賞するなど、韓国フォークシーンを牽引する役割を果たしている。

また、小学校教師の顔を持つミュージシャンということが魅力にあげられる。日々子どもたちと触れ合う中で得る刺激や感動を表現した彼の楽曲たちは、ストレートな歌詞やシンプルなメロディー、コード進行が印象的で、聴いていると、子どもの頃や忘れていた過去を想起させてくれるようだ。

2019年1月には、およそ2年ぶりとなる第三集アルバム『New Day』をリリースし、その曲構成や楽器編成において前作の『Love Is Flowing From High Place』を越えた新たな試みが感じられる作品となっており、本年の「韓国大衆音楽賞」のアコースティック部門にノミネートされた。

今回は、そんな異彩を放つミュージシャン・KwonTreeにメールインタビューを敢行。

KwonTreeにとって創作の根となる、教師生活や家族、友人との出会いや影響について、また初の海外公演となる日本ツアーを終えた感想について訊いた。

     


音楽活動と教師生活の間で 影響を受けた出来事たち

ーまずは、「KwonTree」として活動するきっかけを教えてください。

全ての始まりは、漫画家のいとこのお兄さんのおかげなんです。家で曲を作ってMP3ファイルで取っておいて、ということにハマっていた頃、いとこのお兄さんの誕生日に作った曲をプレゼントとしてまとめて数曲送ってあげました。当時彼は友人たちと一緒にスタジオを使っていて、そこで私の音楽を流していたそうです。そのおかげで彼の友人たちが私のことを知ってくれました。

その後、その友達の中の一人が結婚することになり、漫画と並行してバンド活動もしていたいとこや友人たちが、交流のあるバンドを色々と招待して、ソウルの弘大のクラブで結婚式兼お祝いライブを開こうと企画し、そこに僕も招待されることになりました。結婚式が近づいてきたある日、「公演のためにポスターを作るから、ポスターに載せるアーティスト名を教えて」といとこから電話がかかってきました。その時はYouTubeのアルゴリズムに誘われてキム・グァンソクという歌手の「木(Tree)」という歌を聴いていて歌詞が本当にいいなと思っていたところでした。僕の本名をそのまま書くのはなぁ、と思ったので、ひとまず、「KwonTree」にしておこうと決めました。当日は、作った歌を数曲歌ってライブを終えたのですが、ライブハウスでサウンドエンジニアをしていた方が「どこで活動しているんですか、音源ありますか」と聞きに来てくださり、ミュージシャンとしての活動歴がまだ浅いことや、ソウルでライブが出来る機会と方法について少し教えてくれました。その後すぐ翌週末からソウルでライブをすることになり、そして今までそのまま「KwonTree」として活動をずっと続けることになりました。

Kim Kwang Seok - Tree (1992)

ーKwonTreeさんの音楽スタイルの基盤を作ったアーティストや音楽は何でしょうか。また、そのアーティストや音楽のどんな部分に影響されましたか?

僕が今までに聴いてきた全ての音楽に影響を受けた気がしています。大学時代、バンドをしていた時に、本当にたくさんの音楽を聞いて日々勉強していました。私は広く聞くほうではなく、相対的に深く聞き込むほうだと思っています。曲やアルバムをすり減るぐらい聞いて、そのミュージシャンのスタイルや音楽的雰囲気みたいなものを丸ごと理解するのが好きでした。

ーところで、大学時代はメタル音楽のカバーバンドをやっていたそうですが、アコースティックギターで音楽を制作をするようになったきっかけについて教えてください。

アコースティックギターを始めて、少しずつ曲を作ってみたら、それがとても楽しかったんです。しかし当時はまだバンド活動も並行して行っていて、その時はメタル音楽をやっていたのですが、アコースティックで作る歌は童謡のようなものばかりだった気がします。白い画用紙に生まれて初めて絵を描くようなまっさらな気持ちで作り、曲とは言えないほど短くてシンプルな曲まで含めると、数百曲は作っていると思います。

しかし、僕の創作に最も大きな影響を与えたのは、それは間違いなく大学時代にとても親しくしていた年上の友人です。彼は軽音部に後輩として入ってきたのですが、既にギターで自分で作曲や歌をやっていて、その実力が本当に素晴らしかったんです。バンドでエレキギターを演奏する時もなかなかのものでしたが、特に感銘深かったのは、一緒に話したり遊んだりする時に、時々弾き語りで歌う彼の歌を聞く時間でした。当時気難しい性格だった私は、何だか現実味があって、良い音楽だと個人的には思ってなかったものの、ブルースやフォーク音楽の堅い根の上に自分の感情と哲学のようなものを鮮やかで率直に歌詞に込めていて素敵だなと感じていました。 彼の新曲を聞く度に衝撃を受けては、密かに劣等感を感じていたんです。

以後作曲をする時は、あの時の私が感じたことなどを思い浮かべながら、曲の方向や雰囲気を決めていくことが多かったです。曲のスタイルや具体的な演奏技法などは、彼ではないので結局違ったものになるのですが、曲を作る時の姿勢やその感覚のようなものは特に参考にしていました。それが私がやりたいスタイルに繋がっているし、元々ある程度似ていたかもしれないと思っています。

いつの間にかあれから多くの時間が流れました。今は、自分の中にあの感覚がまだどれほど残っているかを意識しつつ、「今の私の音楽は今の私だからこそ作れる」ということも意識して、作曲への姿勢を見つめ直していく時期だと考えています。

ー普段は小学校の先生をされていらっしゃいますが、教師生活の中で印象的だった出来事について教えてください。

子どもたちといると全ての瞬間が印象的です。子どもたちと一年過ごすことは教師生活にとってとても長いようで、あっという間です。毎年新たな出会いを準備して、生徒と関係を築き、そして互いに信じなければならないものを信じながら生きて、肌寒くなる季節にはゆっくりと別れの日に向けて準備しなければなりません。先生は本当に寂しい仕事です。 私が尊敬している先輩教師の話が長い間心に残っています。 私が6年生の担任になった時に、先輩が「6年生の担任をすれば先生の本当の味が分かるよ。」と言ってくれたんです。 昨年、1年生の担任になった時には、「1年生の担任をすればようやく本当の先生になるよ。」と言っていました。

KwonTree JAPAN TOUR 2019 について

ー今回のツアーは最新アルバム『New Day』を引っ提げてのツアーでしたね。このアルバムの聴きどころを教えてください。

そうですね、このアルバムを通して、ただ穏やかに何かを思い浮かべてくれたら嬉しいですね。

歌詞の持つ力について、よく考えるほうなんです。これまでは、メロディーと歌詞が一体となって聞こえることを想像して作曲していましたが、韓国語が分からない海外の方へ届けるということは、作っている時には考えられなかったことなので、どのように聞こえるか私も気になります。音楽について言うと、シンプルな和声とフォーク音楽が持つ鮮明で太い骨組みの上でエレキギターとビオラをどのように最善の配置にするか、ということについてたくさん努力したことを挙げたいです。洗練されていてすっきりとしたフォーク音楽を作りたかったので、とてもこだわりました。

また、アルバムを通して何らかの描写を各々で感じてもらえたら、と思っています。 音楽は私の手を離れたら、聴き手が主人となって、聴きたいように聴いて、理解したいように理解することが一番良いと思っていて、それによって様々な反応に出会えることは面白いし興味深いなといつも思っているからです。

ー ツアーサブタイトル「가지 않던 길에서 친구를 만나듯(行ったことのない道で初めて出会った友のように)」について、なぜ今回このタイトルをつけたのでしょうか?タイトルに込めた思いを教えてください。

私の3つ目のアルバム「Finding Love」という曲の歌詞に由来しています。

難しい選択を迫られる様々な瞬間瞬間で、どんな決定をしても愛は求め続けよう、ということを言いたかった曲です。 「愛」の中には喜び、悲しみ、満足感、寂しさ、孤独さ、寂しさ、高揚感、空虚さ、軽やかさ、重さなど全てが盛り込まれています。 初めての海外公演が今回のツアーで、 私も色々と選択を迫られることが多かったです。「公演をしに行くべきだろうか、まだ無理かな」といったシンプルな悩みからより複雑な状況まで、初めての海外公演の準備は私にとって不慣れなことでした。 「一度も行ったことのない道」だから、漠然としていて、恐さもあったのですが、私はこのツアーに間違いなく学ぶことが多いだろうと思ったし、ミュージシャンとしてもっと成長できるきっかけになるだろうとも思いました。 この副題にしたことを振り返ってみると、自分を慰めてくれて、心を引き締めてくれた言葉でもあったと思っています。 日本で素敵な友達にたくさん出会えてとても嬉しかったです!

ーツアー2日目、青山・月見ル君想フとの共催公演は大盛況でしたね!韓国での「空中キャンプ」主催ライブには何度か出演されていらっしゃると思いますが、彼らとの出会いについて教えてください。

空中キャンプからライブ出演の連絡を受けたことで、彼らを初めて知りました。 フィッシュマンズを愛する人々が一緒に作った場所ということを知って、とても好きな場所になりました。 こういった空間にどれだけ巡り会えるでしょうか。 以後、音楽を色々と探して聞くようになりましたし、遊びに行く度に少しずつスタッフたちと話をしたり、彼らについて色々と知ることができました。「何かを深く愛する」ということは、私の人生の中にスペースを設ける、大きなことだとも言えるのですが、隣で彼らを見ていると、空中キャンプはすでにその程度を超えて、それが人生そのものになっているように感じました。 すごく素敵な所だと思います。

そして、空中キャンプにライブをしに来た日本のミュージシャンたちと共演する中で自然と日本のツアーが企画され、準備するようになりました。

ー今回の日本ツアー中にどこか遊びに行かれましたか?今回の日本ツアー中に食べたもの、行ったところについて教えてください!また、滞在中に覚えた日本語はありますか?

一週間余りの滞在期間で、4つの公演スケジュールを消化しなければならなかったので、公演しては1日休んで、公演しては1日休んで…といった感じでしたね。 休憩を取りつつ、ホテル近くの路地裏の食堂で食事をしたり、 有名な都内のおそば屋さんにも行きました。あとは散歩しながら気になったお店に入って食べたり、ネットのレビューを参考にしながら気持ちのままに観光しましたよ。これが私の旅行のスタイルなんです。何よりも日本の食べ物は私の口に合うし、韓国でも和食が大好きでよく食べていたので、日本にいる間もそんなに悩まずに食堂に入って満足に食事出来ましたね。

日本語で歌うのは難しいので、「歌詞集」を作って配ろうと思い、セットリストに合わせて日本語に訳した歌詞集を観客の方々に配りました。 そして公演当日は、合間のMCのために日本語の発音の仕方を一生懸命ハングルで書きながら練習しました。 今、日本語で書くことはできないけど、韓国語の発音で覚えた文章はいくつかあります。 その中で私が一番気に入っているのは、「なるほど、世界はつながっているんだ!」という文です。 不慣れな土地で馴染みのない言語で歌いましたが、人々の持つ普遍的な感情は世界と繋がっているんだなということをたくさん感じ、学びました。

訳:さよなら、日本!

  ナルホド、セカイハツナガッテルンダ!


リリース情報

2月22日㈯、dysfreesiaこと平野望による音楽レーベル<Babera Records>よりリリースされたZINE&コンピレーション作品『verbena (for john and sarah)』にKwonTreeの「Love In Campus」が収録された。

「とある土地を内側から見ること/外側から見ること」をテーマに掲げた本作には、東京で活動するアーティストを中心に、海外からカナダのカメラトロニカアーティスト・Joni Void、そしてKwonTreeが参加している。

なお同時収録されたZINEでは、BUZZY ROOTSライターのAKARI / IZUMIが韓国と日本にまつわる手記を寄稿しているので併せてチェックしてほしい。


verbena (for john and sarah)

Release Date:2020.02.22 (Sat.)
Label:Babera Records
Price:¥2200 + Tax

Specification : ZINE + DownLoad

Tracklist:
1. Chiriziris / GOODMORNINGLAND.

2. middle cow creek falls / REM

3. KwonTree / LOVE IN CAMPUS

4. PRETTY THREE / GINZA SEX

5. middle cow creek falls / nostalgia of when you open the door (Joni Void Remix)

6. 吉田和史 / 明日へ (bar toilet mix)

7. dysfreesia + mihau / por se quotes

[ZINE 収録内容]
台湾/韓国/日本を巡る手記を収録。

[ZINE 執筆者]
BUZZY ROOTS
middle cow creek falls
Sasha(Chiriziris)
平野 望(Babera Records / dysfreesia + mihau)

■詳細:ディスクユニオンBabera Records

リリース情報提供: 平野 望(Babera Records / dysfreesia + mihau)

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Izumi

韓国インディーズミュージックライター。他業界とパラレルワークで活動中。 ドラマ、音楽をはじめ韓国カルチャーに触れて10年になるが、ライターとしての活動はまだ3年目。 Kpopヲタクから、韓国留学を機にインディシーンの虜に。 Spotify、SoundCloud、Instagram等で日々ディグりつつ、来日公演には欠かさず足を運んでいる。 メインストリームにはない、自由な表現でアイデンティティを発信している新進気鋭のアーティストを広めるべく、業界人やアーティスト等にインタビューし記事を掲載するほか、プロモーション記事企画や映像企画を実現。多岐にわたり活動している。

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